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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第六章 ミクロな世界の真実

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過去編 第二章 私の場合


「…ここの尊敬は作者から光源氏にかかってると間違えやすいけど…」


夏真っ只中。

いや、一応まだ七月ではあるんだけども。


1日のピークは過ぎたとはいえ、未だ太陽は現役から退いていない。


なにぶん暑い。

あぁ暑い。


この私にこの様な苦痛を味わわせるとは何事か。


エアコンの向きを何とか私の方向にやりたいけど、契約上あんまり無茶もできない。


なんて奴だ。

あいつ、かなりの縛りをかしおって。


「…とまぁここに関しては全体の大意さえわかってればスラスラ解けると思うから、単語の意味を理解しつつ読んでいこう。…それじゃ、今日は以上。」


かったるい古典の授業を終えた古典の教員が教室から出ていく。


同時にチャイムが鳴った。


教室が騒がしくなる。


7月18日、午後3時35分のことだった。



…。



学校から出る。


部活は確かまだやってるけど、今日は休みだった筈だ。


学校から家までの距離は割と長い。


普通に歩いていく分には問題ないけど、今日みたいに風が強いと途端に地獄と化す。


向かい風が私の進路の邪魔をする。


だーくそ。


行きも向かい風だったやろがい。



…。



強風に煽られ、息も絶え絶え何とか自宅にたどり着く。


根室の表札がかかった門を通り抜け、玄関を開ける。


荷物を投げ出し、風で閉まりきらない玄関の扉を蹴って閉めた。


「おかえりー。」


階段上から声が聞こえてくる。


妙にくぐもっている。

これ絶対なんか食べてるだろ。


極刑だろもう。


放り投げた荷物を抱え、階段を駆け上がる。


突き当たり右の部屋のドアを蹴り開けた。


「ブギャ」


その先にいた女。


ベッドに寝転がり、ポテチを頬張りながらアニメを見ている根室妃奈にナップサックを投げつけた。


「痛いんだが?」


「当然の報い。」


「…。」


見下ろされつつも、そっと視線を私から外しポテチの袋を弄り出した妃奈の頭に、私はチョップを振り下ろした。


「ぐぇ」



…。



画面の中で2体のキャラクターが飛んだり跳ねたりしながら格闘を繰り広げている。


「いやっちょっ遠距離は卑怯じゃないすか」


「そう言うゲームだろ。」


「この陰キャ!」


「私のコピー元は貴様だと言うことを忘れてはならない。」


「グハッ。」


DAで吹き飛んだ妃奈のキャラにチャージショットで追撃を入れる。


赤黒い閃光エフェクトが出て妃奈のキャラは場外に消し飛んでいった。


3ストック先取だった為にそのまま画面にはGAMESETの文字が表示された。


「絶対神様パワー使ってるって…。」


「いや、私契約上システム稼働までは力封印されてっから。」


「えぇ?あれ、そなの?」


「いや、あんたが望んだんじゃん。“私の代わりに私をやってください”って。」


「それがどう神様パワーの封印につながるわけ?」


「妃奈=人間、神様≠人間、A=B、C≠BならA≠Cよって私はしばらく神の権能を使えない。OK?」


「おおう。マジか。」


「マジだ。」


「いざとなったら女神様に1000兆円(非課税)を出してもらおうと思ったのに…。」


「ランプの魔人はもう効力を失ってんだわ。」


「…ていうか、神様パワーを封印してシステム関連は大丈夫なの?」


「ああ、まぁ処理装置を用意してシステムに組み込むのが最後の手順だったから、そこらは問題ないね。システム稼働後の諸々は天使君がやってくれてるっぽいし。」


「ああ、女神様見た瞬間に漏らした人。」


「その記憶の仕方はあまりに残酷では?」


「すまんな。名も知らぬ御中年。」


「草。」


「女神様確かにクソ美人だけどそれでも漏らすのは衝撃すぎだわ。」


「いやまぁ一般的な反応ではあると思うけどな。」


「マ?」


「私の本来の姿見たやつは例外なくSAN値全ロスして発狂するからな。」


「強すぎる。」


「原初故申し訳ない。」


「私の姿をコピーした筈なのに何故かクソ美少女になってるのを見る限り信じるしかねぇか。」


「原初の美が内側から滲み出ちゃってるんだわ。」


「うぜー。」


ゲラゲラ笑いながらステージ選択で終点を選ぶ。


妃奈が文句を言う前に進めてやった。


「あちょ、アイテム終点はだるいって!」


「アイテムスイッチ魔球爆弾終点を味わうがいいさ。」


「終わってるわ。」


「ははははははは」


「もう女神様が魔王だよ。」


「草。」


「あ、そういえばファイターパスって買ってたっけ。」


「昨日コンビニで買った。」


「ナイス。」



…。



ひたすらアイテムを投げまくる妃奈を適当にいなしながら昨日のことを思い出す。


システムの読み込みを終了し、口元についたゲロを拭いながら彼女が私に望んだ願いは三つ。


一つ。

今日までの父親に関する記憶を全て消すこと。


二つ。

周囲の人間の自分に対する記憶を改変すること。


三つ。

自分の代わりに根室妃奈をやること。


とまぁそう言うわけで、私女神。

こんなヘンテコな性格になってしまったわけで。


うーん。

妃奈、あの子意外と根明なタイプだったらしい。


数多のDVとその他あらゆる家庭内事情によってかなり精神に異常をきたしてたっぽいけど、まさか父親の記憶を消去するだけでこうも治るとは。


まぁ消去したとはいえ、父親がいないと世間的に色々問題があるから、そこら辺は都合のいい様にしているけども。


んでまぁさっきも話してた通り三つ目の願いを叶えるために根室妃奈の精神と状態を完全にコピーするために私の精神と肉体の外側を改変したせいで神の権能をしばらく使えなくなった。


根室妃奈をやるっていう願いはシステム稼働までの4年間だけだけど、その間私は完全なる一般人にまでその身を落とす事となった。


宇宙誕生から今日まで私がここまで追い詰められたことなかったぞ。


んー。

いやまぁなんとかなるっしょ。


やば


あー。


妃奈の性格をインストールしてから私の根本的な性格まで改変されてる気がする。


はぁ。


魂のあり方は肉体に多少左右されるといえども、ここまでになるとは。


根室妃奈。恐ろしい子。



…。



しばらく遊んでいると、玄関の扉が開く音がした。


「おかえりー。」


妃奈が興味なさげに口に出す。


「帰ってきたか。」


「アイス食べたくね。」


「太るぞ。」


「あ、明日その分運動するから!」


「はぁ。」


ゲームを一時中断する。


階段を降りると、玄関の扉を閉めて完全に停止している人影が見えた。


スーツ姿。

中肉中背。

中年のサラリーマン。


名前は根室智和。


まぁ妃奈の父親のコピーだ。


あの時消しちゃったけど、妃奈の契約を守るならアレの存在はあるべきだった。


玄関に突っ立ち、カバンを持っている人の紛い物に命令する。


「アイスよろしく。」


私の声を聞くと、それは即座に回れ右し、玄関から出ていった。


おそらく近くのコンビニにでもアイスを買いに行くのだろう。


当たり前だけどこの現代日本で生きていく上では戸籍というのは必須だ。


いくら私が神とはいえ、今はただの一般人である以上諸々都合がいい様に先に変えていく必要があった。


私たちが生活するには金は必須だし、親がいないと色々面倒なことになる。


そこら諸々を解決するならああいう父親代わりの肉人形が必要だし、私が代わりに根室妃奈をやる関係上妃奈の戸籍は現在私の妹という立ち位置になってる。


「めんどくせー。」


妃奈め。

石田和也の直球な願いの方が100倍楽だった。



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