表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第六章 ミクロな世界の真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

345/550

過去編 第三章 あの頃日本は ④


腕の中で妻が血を吐き、目を剥いて痙攣している。


顔は見ていられないほどに歪みきり、手足を無力にばたつかせている。


宮村の体は吐瀉物と血液でひどく汚れていた。


電話のベルが鳴り続けている。


焦げ臭い匂いがした。


見ると、滅茶苦茶になったケーキに刺さった蝋燭の火がまだ消えていなかった。


今日は宮村の54歳の誕生日だった。


宮村は呆然とする他なかった。


「ぁぅ…ぅぐる…ぁ」


妻の悲鳴はくぐもって聞こえにくい。


気道に吐瀉物が詰まっているのだろうか。


引き攣り、涙に歪む視界の中、宮村は妻に呼吸をさせるべく妻の背中を叩き、呼吸を確保させようと躍起になった。


「オゴ…グフッ…ォエエッ…」


「っ!クソ!クソ!クソ!!」


何が起こっている?


訳がわからない!


さっきまでの日常はどこへ行った!?


今私は何をしているんだ!?



「総理、そんな事をしなくともこの後しばらく死なないはずだ。」


「ッ!誰だ!?」



もがき苦しむ妻を必死に介抱する宮村の耳に、どこかで聞いたような声が聞こえた。


声の方を振り向くと、そこにはソファに座る人影がいた。


「てっきり、あなたもとっくにのまれているのだと思ったのだがな。」


いや、あれは人影ではない。


あれはその身そのものが炭化し、黒く染まった人型のナニカ。


固まる宮村に、ソファから立ち上がった人型はゆっくりと近づいてくる。


「な…なんだ…やめろ…!やめろ!」


尻餅をつき、後ずさる宮村に人形が顔を近づけてきた。


眼窩のない黒焦げの顔が宮村を値踏みでもするように見つめる。


突如として、顔面の下部分が横に開かれた。


開かれた先もまた炭化しており影も相まって暗黒に染まっていた。


それがそれにとっての口で、笑っているのだと気づくのに宮村は少しの時間を要した。


「ああ。あなたも勇者なのだな。それも魂の最終容量は西原君並みか。

まぁ、それ以外はてんで駄目すぎてCode.1には選ばれなかった様だが。」


納得した様に手を叩く人型。


こぼれ落ちた肉片がフローリングに落ちる。


あまりの恐怖に震える身を抑え、宮村は声を振り絞った。


「貴様は…これは何なのだ…!」


宮村の質問に意外そうに人型は反応すると、裂けたような口を開いて言った。


「まだ解明されていなかったのか…ふむ…そうだな、この事態は端的に説明するのなら、世界終焉のシミュレーションだ。」


「シミュ…レーション?」


「最も、使われているのは地球そのもので、起こっていることも現実のままなのだがな。もちろん、システムリセットもなければシミュレーションで散った魂が回帰することもない。」


軽そうな声色で人型は話す。

その内容を宮村は一割も理解できていなかった。


「な…何を言っている?」


「単純にこの事象を言語化するなら、超広域的な現実改変による世界の危機だ。…まぁもう文明は滅びる訳だが。」


人型の言う事は難解であったが、宮村はその中の単語に聞き覚えがあった。


「現実改変…世界の危機、…貴様…石田か?」


宮村の言葉に石田はまたも笑いをみせ、嬉しそうな声色で話した。


「よくわかったな。最後にあなたに会ったのはもう随分と前だった気がするが、少なくとも無能な人間というわけではなかったようだ。この四年間あなたにこの国を治めてもらえて助かったよ。」


そう言うと、石田は立ち上がり、机に突っ伏して苦しむ妻を抱き抱えソファに寝かせた。


そしてどこからともなく酒を取り出すと、椅子に座ってこれまたどこからともなく取り出したグラスに注いだ。


「とりあえず座ってくれ…飲むか?」


「いや…遠慮させてもらう…妻は…明子は大丈夫なのか?」


グラスを突き出してきた石田の手を宮村は押し戻し、石田の反対側の椅子に座った。


妻の状態の質問に対し、石田は顎に手をやって答えた。


「ふむ…システムはこの地球と魂にそれぞれ組み込まれる。その負荷は計り知れないだろう。只、システムを組み込むために人間の体は相応に強化されているから…少なくとも一年、あなたが彼女を自殺させないように頑張れば大丈夫だ。…どうやらあなたは勇者の権能で他者より魂の質がいいみたいだからな。一年程度なら耐えられるはずだ。」


「そうか…わかった。」


石田の話を聞き、宮村は胸を撫で下ろした。


そして、決心を固めもう一つの質問をした。


「この事態はなぜ起こった?…お前は味方なのか?」


心臓が鳴る。


もしこの質問が石田の怒りに触れれば、自身がどうなるのか宮村の脳裏にはその最悪の結末が過っていた。


冷や汗を垂らし身を震わせながら問う宮村に対し、石田は特に意に介した様子もなく答えた。


「…この世界はこれまで5回リセットされている。」


「何?」


唐突に話された荒唐無稽な言葉に疑問を呈する宮村だったが、石田はそれを無視して話を続けた。


「今が数えて6番目の世界だ。地球を崩壊させたシステムは6人目の女神の学習のためにつくられた物で、原初の女神が治めていた世界、それを真似、その崩壊の原因を探るべく作られたシミュレーションの実験会場が運悪く地球に選ばれた。まぁ、端的にいえばそれだけだ。」


「6番目…?実験会場…?」


「まぁ上位存在の戯れと言ったところだよ。…そして、私が味方か、と言う質問だが…」


石田は一呼吸おいて答えた。


「約束しよう。人類は必ず私が守る。そのための準備は四年前からしてきたのでね。」


「そ、そうか…。」


どうやら石田は味方だと言うことがわかり、宮村は今一度胸を撫で下ろした。


ほっとしている宮村を横目に、石田は椅子から立ち上がった。


「どこへ?」


「いや、これから文明再建の準備をしなくてはならないのでな。…ここにきたのは私以外の研究チームがこの崩壊に対してのどれくらい解明できていたかを調べるためだったのだが、あなたの反応を見るに対して期待もできなそうだし…。」


「なるほど…。」


「まぁ、安心して耐えててくれ。システムの読み込みが終了したら、迎えがくるだろう。」


「わかった…日本を…世界をよろしく頼む。」


「任せておけ。これまでの統治ご苦労だった。」


宮村の願いに石田は力強く答えると、次の瞬間、激しい光が部屋を満たした。


「!」


次の瞬間、石田の姿は消えていた。


「一年か…。」


宮村は、ゴクリと唾を飲み込み、いつの間にか意識を失っていた妻の元に戻るのだった。


山:と、言うわけでね。


ア:どう言うわけですか。


山:過去編第三章完結でございます。


ア:なんか結構謎残ったままなんですけど。


山:全てはお話しされませんでしたねー。


ア:…。


山:まぁ、残りの謎は第二章を乞うご期待ということで。


ア:第二章あるんですか。


山:まぁ、第三章があるならあるよね。二章。


ア:時系列を逆から追ってるせいで章の順番が滅茶苦茶なことに…。…と言うか、ひょっとして。


山:ええ、第二章、このまま突入します。


ア:えぇ。


山:まぁ、過去編は第二、第三章で一纏めみたいな感じですし…


ア:あんなにヒィヒィ言いながら書いてたのをもう一章やるんですね…


山:確かに主人公を動かさない小説生活は辛かった…


ア:それじゃあさっさと第二章書き切って本編書いちゃえばいいじゃないですか。


山:うーん、いや、えーと、それがですね。


ア:何かあるんですか。


山:もう時期も10月中旬ということで、ええ、えっと、私受験生なんですよね。


ア:はぁ。


山:まぁ、過去編は第三章頑張ろうと思って合間合間に頑張ってたんですけど、いよいよ言い訳が効かなくなってきたわけで。


ア:…。


山:第二章完結はまぁまぁ時間がかかりそうです。


ア:主人公が年単位で出ないってそういうことだったんですね…。


山:…まぁそういうわけで、結構これから更新死ぬと思うんですけど、ここまできたらエタらせることは絶対ないので、気長に待っててください。


ア:よろしくお願いします。…あ、でも山鳥さん。


山:ん?


ア:最近何やら毎日某ソシャゲやってますよね。


山:あ、いや…えっと、そろそろ水の神が…


ア:…。


山:許しtフボヘッ


ア:週一くらいは守らせます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ