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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第六章 ミクロな世界の真実

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過去編 第三章 西原秀治の場合 12



石田の研究室の前まで到達した。


警備システムは確かに厳重なものだったが、俺にとっては大した問題にもならなかった。


そもそもここに忍び込むのは初めてじゃないしな。


ここに辿り着くために、幾度もの試行錯誤をしてきた。


能力を使い、センサにドアの開閉を誤認させ、警報が鳴らないように研究室のドアを開ける。


キィという擬音と共にドアは奥に開いた。


そのまま体を滑り込ませ、ドアをそっと閉じる。


幸い、警備システムには気づかれなかったようだ。


センサにかけた能力を解き、そのエネルギーをまた目に戻す。


暗くなっていた視界が復活した。


石田の研究室は、やたら整然としてる。


俺の勝手な研究者のイメージ的にはもっと色々機械とか研究資料とかが置いてあるイメージだったんだが、ここにあるのは大きめのモニターと、机と椅子だけだ。


…体育館みたいになんかいじれば色々出てくるのかもしれないが。


まぁ、一番に見るべきものがわかりやすく明示されてるのはいいことだ。


感知系を最大まで引き上げて研究室の奥に進む。


…見たところ、何かの異常は確認できない。


石田ともあろうやつが若干不用心じゃないか?


あの男はもうちょっと慎重な気がしたんだが。


…まぁここに来ると想定されてるのが増井さんと小崎先生だけってことを考えればこれでも納得はできるか。


ともあれ、俺はモニターの前まで到達することができた。


机の上にあるのは、やや大きめのモニターと、キーボード。


そして下にはパソコンの本体があった。


体の中のエネルギーを操作し、パソコンに接続する。


電源ボタンには触らずに、電源を点けた。


青白い光を出してモニターが点灯する。


…ここからが正念場だ。


モニターが切り替わり、パスワード画面が開かれる。


パソコンに接続したエネルギーを緻密に操作し、パスワードを入力された状態にパソコンを誤認させる。


針の穴に糸を通すような作業。


脳に全エネルギーを集中させ、回転速度を極限まで上げる。


垂れた汗が地面に落ちることなく空中で固まった。


数秒後。


パソコンの画面が切り替わり、ホーム画面になった。


汗が足元に落ちた。


「ふぅううううううう…。」


思わずため息をつく。


ここまで来ればあとはほとんど問題ない。


とりあえず、俺が調べたいことは一つ。


なぜ俺たちが世界崩壊の対抗策として選ばれたのか。


完全に俺の支配下に置かれたパソコンが思いのままにカーソルを動かされる。


おそらく俺の問いに答えられそうな一つのファイルを発見した。


躊躇いなくクリックし、中身を展開する。


レポートが画面いっぱいに映し出された。


ファイルの名前は、『超広範囲現実改変とその影響について。(改)』?


改?


更新日時は…ちょうど4年前だな。



……


………


…………


……………!!!!!





その時、ベッドの中で前村瑠衣は巨大なエネルギーを察知した。


寮棟から少し離れた場所。


あそこは確か研究棟があった場所だろうか。


彼女の卓越した探知能力は、魂の観測をも可能にする。


その魂の色は、なんとなく見覚えがあった。


微睡の中、彼女の脳の片隅でその正体が繋がった。


「ん…秀治…?」


か細く呟く。


しかし脳はそれを記録することなく、再度彼女を眠りの檻に連れ込んだ。





研究棟を全力で駆ける。


警備システムを気にしてる場合じゃない。


警報はならないが、きっともう石田には気づかれただろう。


だが、もうそんなことはどうでもいい。


「クソッ!」


思わず口からこぼれる。


最悪だ。


何が。


何が世界の崩壊だ。


何が俺たちの役割だ。


世界の崩壊はあんな生やさしいもんじゃない。


あの報告書を見る限りじゃ女神の知識を植え付けられたら…。


研究棟の窓から飛び降りる。


強化された足は、大した受け身を取らずとも怪我させることなく俺を地面に降り立たせた。


上を見上げる。


夜空は変わらず綺麗だった。


…もうここにはいられない。


石田の奴、時間すら偽ってた。


世界崩壊は明後日なんかじゃない。


後時間はどれだけ残ってる?


一日残ってるのか?


わからない。


俺は駆け出しt



「どうも。」



…あまりに唐突だった。


何も意識していない、無意識の隙間から奴は現れた。


…まるで瞬間移動だ。


四年経ち、あれからはるかに強化された俺の知覚能力でもその前兆を察知することはできなかった。


「石田…。」


今から四年前のあの日と全く変わらない雰囲気で、スーツの男、石田がそこに立っていた。


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