過去編 第三章 西原秀治の場合 ⑦
「そ…それじゃあ、この世界はあと4年持たないって事か…?」
小崎さんの説明にチャラ男が愕然とした様子で返す。
顔面は真っ青で、声も震えている。
見れば、周りの生徒たちの顔も似たり寄ったりな感じになっている。
かく言う俺も、小崎さんの衝撃のカミングアウトに動揺が隠せなかった。
ざわめき出した教室の中で、小崎さんが口を開く。
「ああいえ。別に地球が終わるってわけじゃなくて、単純に人類文明が存続不可になるレベルの大災害が起こるって感じです。」
「変わんないでしょそれ…。」
「…まぁ確かにそうですね。」
「そんな…。」
人類文明存続不可って…。
「それ、俺たちにどうこうできる問題なんですか?」
思わず小崎さんに質問する。
文明崩壊レベルの災害なんて、それはもはや天変地異と言っても過言じゃ無いレベルの厄災だろう。
いくら俺らに超人的な能力が発言したからと言って、それらに対抗するなんて出来るわけがない。
「ええ。…研究により、どのような事変が起こるのかは解明されています。」
俺の質問に、小崎さんは軽く目をやって答えた。
「4年後に起こる災害、それは全世界に突発的に発生するダンジョンと、魔王率いる魔物による侵攻、それと人間自体の能力の増加による戦争だと言われています。」
「…は?」
誰の声か判別できなかったが、その反応はおそらく教室全員の総意だっただろう。
それくらい、小崎さんの答えは非現実的だった。
…ダンジョン?魔王?人間の能力増大?
「それ…ふざけてるの?」
活発少女が再び立ち上がって小崎さんに言い放った。
「いえ。本気です。」
活発少女の声に小崎さんは一切怯まず答えた。
「そんな安っぽいライトノベルみたいな…。」
活発少女は体を震えさせている。
「あなた方の身に起こったことの時点で、大概ファンタジーでしょう。」
「…っ。」
活発少女は口をつぐんだ。
小崎さんはついで教室の全員を見渡して言った。
「みなさんもこの理由で納得してください。それに少なくとも、今の貴方がたを完璧に保護できるのは私たちの団体だけなんですから。」
「ここも大概怪しいんだけど…。」
「ここ以外なんて碌なもんじゃありませんよ。
ここ以上に超人発生の理由を判明させている研究機関はありませんし、他は急に現れた超人をあらゆる研究機関が奪い合って、ありとあらゆる人体実験をしているらしいです。また、国もそれを隠蔽してる状態です。おそらく、外に出て捕まれば最後2度と日の目を見ることはないでしょうね。」
「ひっ…。」
小崎さんはおとなしそうな顔でとんでもないことを言い放った。
…最近SNSで調べても俺たちの事が出てこなかったのはこれが理由か…。
「ああそれと。」
完全に沈黙した俺達に小崎さんはさらに続けた。
「世界崩壊の事実を知っている研究機関もここだけです。これをここ以外の人間に伝えたりしないでくださいね。……皆さん軟禁生活なんて嫌でしょう。」
小崎さんは、初めから一切変わらない声色で言い放った。
…思ってたよりこの人は恐ろしいのかもしれない。
山:思ったより1話が長くなっちゃったので、半分にして明日投稿します…。
ア:西原編結構長くなってきましたね。
山:当初の想定よりキャラが立ってしまった…。
ア:プロットには西原編2話分しかないですもんね。
山:まあ、致し方なしといった具合で。




