過去編 第三章 石田和也の場合 ④
数時間後。
石田の姿は豹変していた。
髪は酷く乱れ、目は血走り、口からは涎がとめどなく溢れている。
その様子を神は静かに見ていた。
「終わりましたか。」
「はい…適合しました。」
そう答えた石田は、頭を振り、口元の涎を拭った。
そして、虚だった目に確かな生気を宿して神に問うた。
「このシミュレーションで、人類は…」
「貴方の思っている通りですよ。」
「…そうですか。」
石田の問いに、被せるようにして神は軽く答えた。
「神様。」
「はい。」
石田は深呼吸して言った。
「三つの願い、決まりました。」
「わかりました。全て叶えましょう。」
無表情に神は答える。
石田は人差し指を立てて言った。
「一つ、力をください。魔術を使える強靭な魂と、シミュレーションを管理し続けられる膨大なエネルギーを。」
「はい。」
「二つ、富をください。尽きることない無限の資産を、私に。」
「はい。」
「そして最後に。」
石田は薬粒を中指と続けて合計三本指を立てた。
「私が知りたいと思っていることを全てお教え下さい。」
神は一瞬目を丸くし、すぐに頷いた。
「わかりました。」
…。
「それでは、これにて契約は成立となります。もう既に知っておられると思いますが、システムの始動は4年後ですので、よろしくお願いいたします。」
「承知しました。」
石田が頷くと、神は石田に背を向け、去って行こうとする。
「あ、お、お待ち下さい!」
「はい。」
急いで呼び止める石田。
神は石田に振り向いた。
「一つ聞きたいことがあるんです。」
「なんですか?」
「貴方様の名前をお聞きしても?」
「…いいでしょう。」
石田の問いに、女神は薄ら笑いを浮かべて答えた。
「“創造者”、”始原の神“、”魂の女神“、”完成体“、”五人目“、”模倣者“なんて、いろいろな呼び方がありますが、今は端的に『五号』と名乗っています。」
「っ!ならっ!」
石田の息が詰まった。
再度問いを投げかけようとしたところで、
次の瞬間、神の姿はかき消えていた。
若干の薄気味悪さのみを残して。
山:えー。2023 9/10 以前にこの話を見ていた方は、4話前に新話を割り込み投稿致しましたので、見てやってください。
ア:過去編の時系列を滅茶苦茶にするの趣味なんですか。
山:どう考えてもあの話は前におくべきだった…。
ア:全体の流れも考えずに過去編なんかやるから…。
山:ストックが欲しい…




