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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第六章 ミクロな世界の真実

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過去編 第三章 石田和成の場合 ②


淡い赤色が静かにその光量を下げていく。


赤く染まった雑多な研究室は再度モノクロに染まっていき、石田の姿はシルエットと化した。


石田は持っていた銀の鍵を懐にしまい、満足げに深呼吸をして一休みをしようと椅子に座りk



















「どうも。」



















そこにそれは居た。


決して人間では無い。


もはや生物では無い。


顔のパーツは極めて人間に近しいものの、それらはあまりにも精巧だった。


それは人の姿をした、人ならざるモノ。


いや、人こそがそれの姿を真似た存在なのだ。


彫刻や絵画をより鮮明に、リアルに、この世の全てのものよりもさらに現実的に。


それは概念であり、思念であり、物体だった。


それを構成する原子、分子、エネルギー、その全てが愛おしく、儚く、悍ましい。


それは全ての完成型。


イデアそのものがいま目の前に存在する。


脳が物理的に震えるような感覚を覚える。


あまりに恐ろしい。

あまりに狂気的だ。


そして、あまりに美しい。


全身を包む感覚が非現実性を帯びる。


視界が歪み、生暖かいものが目と鼻から流れる。


体温が急激に下がり、その後上昇した。


感情が乱高下し、石田は恐怖のあまり失禁し、次の瞬間に絶頂した。


そして、次の瞬間石田の意識はブラックアウトした。



…。



暗闇の中、石田はどこかで誰かが発狂している声を聞いた。


耳元で流れ続けるそれの煩さに忌々しく思いながら、石田は目を開けた。


石田は椅子に座っていた。


魔術を成功させ、それの後に座り込んだ時と同じ椅子。


「あ゛あああ゛あああ゛あああ…あぁ…あ…ぁ…あ?」


そして、意識の覚醒と同時に発狂の音源が自身であったことに気付かされた。


すこぶる喉が痛む。


軽く咳き込み、水でも組もうと前方に視線を向けた時。



「…どうも。」



少女が立っていた。


「ひぃっ!」


石田は、柄にもなく小さな悲鳴をあげた。


その少女の顔は、気絶する直前に見た、あの存在とほとんど同じものだったからだ。


…若干幼くなっているようではあるが。


「…少し外側を変えました。また気絶されては困るので。」


少女は若干不機嫌そうに目を下にやって言葉を続けた。


少女の視線の先、石田の股はあらゆる体液と排泄物で激しく汚れていた。


「しょ、少々お待ちください。」


石田の頭は混乱し始めた。


自身の痴態と、魔術の発見と現状の意味不明さが相まって、石田の処理能力は限界を迎えていた。


とりあえずこの下半身だけでもなんとかしようと立ち上がったところ、


「いえ、それには及びません。」


少女が軽く指を鳴らす。


次の瞬間、石田は少女と向かい合う形で着席していた。


汚れていた下半身は、清潔な形を取り戻している。


座っている椅子は先ほどのものでは無い。


というかそもそも、周囲の環境が劇的に変化していた。


闇で覆われていた研究室は跡形もなく消え去り、石田の周囲を取り囲んでいたのは高級ホテルのレストランのような場所。


目の前に広がるは長方形のテーブル。


一眼見て超一流と評されるであろう豪勢な食事が並び、香ばしい香りが鼻腔を突き抜ける。


テーブルの反対側で少女がフォークとナイフを使ってローストビーフを食べていた。


処理の限界をとうに越した石田がフリーズしていると、少女は石田に一瞥をくれて言った。


「とりあえず、これを食べて落ち着いてください。話はそれからです。」


少女に言われるがまま、石田は恐る恐るスプーンを手に取り、目の前に置かれたおそらく中華の料理であろうお粥に似た料理を口に運んだ。


程よい温度のどろりとした物質が唇を通る。


それが舌に接触した瞬間、石田の脳は完全にオーバーロードした。


「あ。」


視界が回転し暗くなっていく中、少女のあきれた顔が隅に映った。


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