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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第六章 ミクロな世界の真実

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Code.1 (15)

13話 3ヶ月ぶりの登場


…と、言う事で、この学校で俺らが頑張って成長できるように、めっちゃ頑張るのが大事って事だな!以上よろしく!」


俺らが試験をした講堂で新入生挨拶をするレミウルゴス。


300人近くの入学生の前で堂々と挨拶をするその胆力はさすがと言わざるを得ない。


その美貌に太陽のような満面の笑みを貼り付け、明るさを振りまくレミウルゴスに既に虜にされたようなため息が周囲の女生徒から漏れる。


マイクを切り、壇上を降りていく。


入学生が座る椅子の間を抜け、俺の隣の席に戻ってきた。


「おかえり。」


「いやぁ…緊張したぜ。」


俺が声をかけると、レミウルゴスは頬にかいた汗を拭い、薄ら笑いを浮かべながらそう答えた。





レミウルゴスによる新入生挨拶の後は、アドヴァンダル魔法学校校長からのありがたい言葉が数分続いた。


講堂に集合してから数時間、若干のクッションがあるとはいえ、尻がそろそろ悲鳴をあげ出した頃。


校長と交代して壇上に上がったのは、俺らの入学試験の試験官をしていた教師のうちの一人、体育教師と思しき格好をした教師だった。


「それでは、これよりクラス担任の発表を行う。順番は1ーAから1ーJまでだ。」


体育教師がそう言うと、壇上に10人の教師が次いで上ってきた。


年齢や背格好、服装さえも多種多様。


カジュアルなTシャツを着た30歳くらいの若手男教員、魔法使いのローブのような物を着た80歳程のTHE魔女といった姿の女教員、背筋をのばし凛とした姿の初老の男教員などなど。


その中でも、一際目を引く存在がいた。


背は高くない。

むしろ、低すぎるくらいだった。


肌は陶器のように白く、同じくして雪のように透き通った白髪が隠す目元は柔和な笑みを湛えていた。


今の俺達ほどではないにしろ、中学一年生ほどの姿の少女は今教師の立場として壇上に立っていた。


教師というにはあまりに幼いその姿に、保護者席からざわめきが漏れる。


ファンタジーな世界なら魔法で成長を止めてる魔法使いくらいいるかと思ったが、後ろの動揺具合を察するにそれでも異様な姿であることは間違いないようだ。


「なぁ、あの右端の先生、やたら若くないか?」


隣で妙に静かにしているレミウルゴスに耳打ちする。


「…?そうか?」


不思議そうにするレミウルゴス。


どうもこいつはあの少女に対してはさしたる興味を持っていないようだった。


小学生から見たらあのくらいの背の高さの人間はみんな大人に見えているんだろうか。


そんなことを考えていたら、先生達の整列が完了したのか、体育教師が声を張り上げた。


「では、まず1ーAの担任。サラ先生。」


同時に、サラと呼ばれた先ほどの少女が前に出る。


先ほどから一切変化しない笑みをその顔面に貼り付けながら、彼女は一礼をした。


その可憐さに、ふわりとした花びらが辺りに舞うのを幻視した。





その後、残り9人の担任が発表されたのち、入学式は俺たちの入学を祝福する旨と、ぜひその能力を存分に発揮できるように努力するようにという言葉で締められた。


入学式終了後、入学生は皆一様に講堂を出、初等部のある校舎に向かった。


校舎の入り口にはそれぞれ振り分けられたクラスの表が貼り付けてあり、皆それを確認し次第中に入り、その後それぞれのクラスでオリエンテーションが行われる手筈だった。


「俺ら同じクラスだといいな!」


「もし違ったら…ああ。」


俺の両隣に立ち、クラス表を見る順番待ちをしているレミウルゴスとエイが言う。

レミウルゴスの方はいつも通り元気溌剌って感じだが、エイに関しては顔色がいつもより数段悪い。


こいつに関してはあまり心配していないが、エイと違うクラスになった場合、彼女がそこで元気にやっていけるのかが少し不安なところだ。


「大丈夫だって。もし違っても、毎日会いにいくしな。」


「あ、はいいぃ。」


俺がそう慰めると、エイはいきなり顔を真っ赤にして消え入りそうな声で言った。


顔色をコロコロ変えるエイは面白いと思った。


「お、見えてきたぞ。」


レミウルゴスが俺の腕を引っ張って指をさす。


確かに前の人混みが大体校舎内に入ったことで表までの視界がひらけていた。


えーと、レーニン・ユーリーンは…。


あった。


左上、1ーAの上から二番目。


て、いうか、1番上…。


「あ、俺1ーAだったぞ。」


レミウルゴスが言う。


「ああ、そうっぽいな…。」


俺の上にはレミウルゴスの名前があった。


「んで、俺らは1ーAだったけど、エイはどうだったんだ?」


レミウルゴスが横で必死に文字を探しているエイを見る。


あ、確かに。


「あ…あ、」


震えるエイ。


「ありましたああああああ!」


心配になって顔を近づけると、エイが俺の首元に飛び込んできた。


ぐふっ!?


「わたっ、私、1ーAです!おんなじクラスでしたー!」


「お、おお、よかったなエイ。」


「はい!はい!」


エイは俺の首根っこを抱きしめ続けている。


く、空気が…。


「おいおい、ユーリン死ぬって。」


チョークされたまま意識が朦朧とし出した頃、レミウルゴスがエイを引き剥がしてくれた。


「あ、ありがとう…ほんじゃ、クラス行こうか…。」


「はい!いきましょう!」


ふらふらになりながら俺がそういうと、聞いたことがないほど元気な声でエイが返事をし、そのまま校舎に入って行った。


「俺、あいつちょっと怖いぞ…。」


「ああ…。」


レミウルゴスがした耳打ちに俺は激しく同意した。





教室に入った。


この世界の文明レベルは実はまだいまいち測りきれていなかったが、見た感じ俺が通っていた小学校とさしたる違いは見られなかった。


木製の椅子と机が縦6列横5列で並んでおり、そのうちのほとんどがもう埋まっている。


教室正面にある大きめの黒板。


教壇があり、さっき講堂で見たサラ先生が立っていた。


俺らと同じ新入生からの視線を浴びながら、空いた残りの席、教壇前左端から3つの席に左からレミウルゴス、俺、エイの順で座った。


「はい。それでは全員揃いましたので、まずは自己紹介を始めたいと思います。

私の名前は、サラ。皆さんサラ先生と呼んでいただけますと嬉しいです。」


俺らが座ると、サラ先生は黒板に大きく『サラ』の二文字を書き、そういった。


どうやら、見た目はあんな感じだが、ちゃんとした教員としてこの学校に在籍しているようだった。


「それでは、そうですね。まずオリエンテーションということで、皆さんも自己紹介をお願いします。それじゃあ、前の席から順番にやっていきましょう。」


そういい、サラ先生はレミウルゴスを指差した。


「あ、俺?」


すっとんきょうな声をあげるレミウルゴス。


「はい。」


ニコニコしながらサラ先生が答えた。


「わかったぜ。」


そういい、レミウルゴスが席から立ち上がる。


「俺の名前はレミウルゴス!さっき言ったかも知んねーけど、とりあえず頑張っていこうと思うぜ!」


声を張り上げて言った。


そのあまりの声量に多少面食らった様子のサラ先生だったが、すぐに気を取り直した様子で、拍手をしながら言った。


「元気な挨拶ありがとうございました!皆さん、拍手ー!」


教室からぱちぱちと拍手が起こった。


「では次は…あなたね。」


サラ先生が俺を指差す。


あ、次俺か…。



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