Code.10 (4)
自室に戻った男…ここでは司祭とでも呼ぼうか。
司祭は教会内部に存在する自らの執務室を見渡した。
広さは10畳程度。
旧世界の呼び名で言えばワンルーム程度の広さと言えば良いのだろうか。
窓はなく、照明も卓上ライトの他には天井に一つある暖色の光だけであった。
対して広くもない執務室は司祭が教会設計当時にその場を隠匿させた為であるが、大量の本で敷き詰められた棚に囲まれたその部屋は少々息苦しく感じた。
執務室には棚の他には奥側に小さめの机と椅子が置かれているだけであり、その上も大量の書類で埋め尽くされていた。
オリハルコンの鎧を脱ぎ、元あった場所に設置した彼は、普段の所定位置、執務椅子に腰掛け、一人ため息をついた。
オリハルコンの鎧は極めて軽く、その上に司祭の動きに耐えられるほどに極めて頑丈であるが、それでも火龍を相手するには若干能力不足であった。
司祭は自身の疲れを癒すべくゆっくりと呼吸を繰り返し、目の前に並べられた書面に目を落とした。
『勇者個体数について、昨年比12%増』
『アドヴァンダル魔法学校 1-A選抜』
『冒険者協会 グレ…
…。
「司祭様。」
司祭が書類を処理していると、執務室の扉が開き、一人の女が現れた。
身長は高くない。
肌は陶器のように白く、同じくして雪のように透き通った白髪が隠したその顔はまさに美少女と定義するに相応しく整っていた。
一見すれば少女のような姿をしているが、その身が内包する神聖な力が彼女の姿を見た目以上に大きく見せていた。
女は一枚の書類を手に柔和な表情を顔面に貼り付け立っていた。
「サラか。」
サラと呼ばれた女は会釈をし、一枚の書類を提出した。
「アドヴァンダルの生徒名簿か。…今年の試験はもう終わったのだな。」
「…ええ。して、相談があります。」
「…言ってみろ。」
「1-Aの担任を私に任せていただきたいのです。」
「…理由は?」
「少々因縁のある生徒がいまして。」
「……まぁ良いだろう。」
「感謝します。」
サラの見つめる先には、生徒名簿に載った名前があった。
『アドヴァンダル魔法学校1-A特進科生徒名簿
1 : ハルド・レミウルゴス
2 : レーニン・ユーリーン
3 : フォルスト・レ…
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…。
「失礼しました。」
サラは、執務室のドアを閉じると一人髪の毛を弄り言った。
「この髪も…染めないとですよね…。」




