Code.10 (3)
大渓谷。
その地の底の底。
辺りには刃物のように尖った岩場が乱立しており、霊園のような薄寒さが満ちていた。
渓谷の中に吹き付ける微風が幽霊の慟哭のような音を奏でる。
その地の中心に、男が立っていた。
頭を除いてプレートアーマーに身を包んだ身長180センチ程の男。
オリハルコンによって構成されたその鎧は、明かりのほとんどない渓谷の底であっても美しく輝き、左腕につけられた帝都の旗を照らしていた。
金色の長髪をたなびかせ、耳につけられたピアスが微風に揺られ微かな音を立てる。
整った眉に黄金比に則って配置された、平常時であれば美男と評されるであろうその顔は、切長の目を冷徹に開き、寒気を感じさせるような殺意と緊張感に包まれていた。
不意に男が剣を取る。
魔物が発生する時に生じる、その僅かな瘴気を、男はその異常強化された五感で察知していた。
数瞬後、男の足元に極大の魔法陣が描かれる。
緋色の幾何学模様は、何百何千にも及ぶ魔法文字を正円の軌道に沿って描いていき、膨大な魔力の補助によって神の力を顕現させた。
{「獄炎魔法Lv.10」の発動を確認しました。}
鑑定が結果を報告する。
が、それ以前に男は行動をしていた。
地が赤熱する。
地獄の炎があたりを照らす。
岩場が蒸気をあげ、融解する以前に蒸発する。
絶望の熱気が渓谷を包む。
が、それはただの予兆である事を男は知っていた。
瞬間、極大の炎柱が渓谷を貫いた。
膨大な熱量は、それに触れた全てを問答無用で融解させ、蒸発させ、そして崩壊させた。
余波で半径数キロメートルが吹き飛ぶ。
渓谷は、最早広大な荒地と化していた。
蒸発した大地が雲を形成する。
暗黒の雷雲が、悍ましい音を立てながら融解した大地を降らす。
一切地を潤すことのない雨水が煙を上げながら滝の如く降り続ける。
それに打たれながら、先ほどの全てを耐え切った男が上を見上げる。
黒雲が切り裂かれ、神の如く緋色の光をその身に宿した一匹の巨龍がゆっくりと下降してくる。
体長20メートル強。
黒ずみ、膨大な熱を発する龍鱗はマグマそのものであり、黒色の体からはその身に宿し切れない炎が噴出し、常に発光していた。
背中に展開された4枚の蝙蝠のような羽は、絶えず赤色の炎を纏い、羽ばたくごとに煉獄の欠片を辺りに巻いている。
よくぞ初撃を耐え切ったと、
よくぞ我の目の前に立ちはだかれたと、
その新たな挑戦者を祝福するように、煉獄をその身に宿した炎龍が咆哮を上げた。
…
{「炎龍Lv.10」の発動を確認しました。}
炎龍がブレスを放つ。
熱を一点に凝集し、固体化したエネルギーが音速を超える速度で放たれる。
{「立体超起動Lv.10」を発動しました。}
{「韋駄天Lv.10」を発動しました。}
{「冰結魔法Lv.10」を発動しました。}
咄嗟に避ける男。
避けた先でブレスが爆発する。
轟音が解けた大地を揺るがす。
冗談のように地が抉れ、数百メートルのクレーターが形成される。
汗一つない無表情でそれを一瞥し、男が空を駆ける。
{「跳躍Lv.10」を発動しました。}
{「身体超強化Lv.10」を発動しました。}
{「物理極攻撃Lv.10」を発動しました。}
{「獄洸魔法Lv.10」を発動しました。}
振り上げた剣は聖洸の輝きをもって点を切り裂き、黒雲を貫いた。
空間を断絶させるかのような速度と攻撃範囲が火龍を襲う。
が。
{「龍鱗Lv.10」の発動を確認しました。}
火龍の纏う炎がより火力を上げ、聖洸を防ぐ。
男は静かに舌打ちをし、再度切り付けようと剣を構え直すが、火龍が再度咆哮し、男を吹き飛ばす。
{「獄炎魔法Lv.10」の発動を確認しました。}
{「火龍Lv.10」に発動を確認しました。}
再び距離を取られた男に対し、再度容赦なく炎が降り注がれる。
勝利を確信した火龍が咆哮する。
次の瞬間。
「慢心した蜥蜴は醜いな。」
火龍の背後に飛ぶ男がそう言い放つと、剣が振り下ろされた。
驚愕に見開く火龍。
空間が断絶された。
{「龍麟Lv.10」の発動を確認しました。}
{「堅牢Lv.10」の発動を確認しました。}
{「要塞Lv.10」の発動を確認しました。}
脅威の瞬発力をもってそれらを全て防ぐ火龍。
男は忌々しげに顔を歪める。
その背には天使の羽が展開されていた。
{「覇王Lv.10」の発動を確認しました。}
{「天使Lv.10」を発動しました。}
{「次元魔法Lv.10」を発動しました。}
{「空間看破Lv.10」を発動しました。}
{「獄炎魔法Lv.10」の発動を確認しました。}
{「獄炎魔法Lv.10」の発動を確認しました。}
火龍が地獄の炎を振り撒き、それを天使が弾き返す。
辺りは全て焼け野原と{物理獄攻撃Lv.10の発動を確認しました。}
{「物理獄耐性Lv.10」の発動を確認しました。}
{「破壊超攻撃Lv.10」の発動を確認しました。}
{「堅牢Lv.10」を発動しました。}
{「韋駄天Lv.10」を発動しました。}
{「大地魔法Lv.10」を発動しました。}
{「獄嵐魔法Lv.10」を発動しました。}
{「雷竜Lv.10」の発動を確認しました。}
{「血流操作Lv.10」を発動しました。}
雷電が吹き荒れ、暴風が降り注ぎ、炎が凍り、氷が燃焼し、全てが魔力{「魔力操作Lv.10」の発動を確認しました。}
{「断絶耐性Lv.10」を発動しました}
{「魔龍Lv.10」を発動しました。}
{「深淵魔法Lv.10」の発動を確認しました。}
{「要塞Lv.10」を発動しました。}
{「眷属Lv.10」の発動を確認しました。}
{「勇者Lv.10」を発動しました。}
{「龍麟Lv.10」の発動を確認しました。}
{「堅牢Lv.10」の発動を確認しました。}
{「獄炎魔法Lv.10」の発動を確認しました。}
{「獄雷魔法Lv.10」を発動しました。}
{「深淵魔法Lv.10」の発動を確認しました。}
{「憤怒Lv.10」の発動を確認しました。}
{「凶化Lv.10」の発動を確認しました。}
{「信仰Lv.10」を発動しました。}
{「呪怨Lv.10」の…
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…。
全てが終わった大地に、一対の魔法陣は現れる。
ブゥウウウウウウン…。
蜂の羽音のような音を立てる赤と青の魔法陣を一瞥し、男が一つの装置を取り出す。
杭のような見た目をしているが、一見してそれがただの杭でなく、あらゆるハイテク技術を使った最新鋭の機器であることがわかる。
それを男は躊躇いなく地面に突き立てた。
数秒間沈黙していたその装置は、突然機械音を出し、内部メモリをカタカタ言わせ、震えて出した。
「…座標記録完了しました。」
そして数分後、そう言い放ち作動を停止すると、男はおもむろにそれを地面から引き抜き、懐にしまった。
そして真っ直ぐ帰還用の魔法陣に歩いて行き、それを踏み抜いた。
…。
男が眩しさに閉じていた目を再度開けると、そこは見慣れた教会の前だった。
男の帰還を目にした周りの冒険者がざわつく。
そして、いつのまにか横に立っていた女が一言男に喋りかけた。
「おかえりなさいませ。司祭様。」




