221 帰還…?
短
「かはっ…げほげほっ…う、おえ…ごほごほごほっ…」
地面に倒れ込み、全身に走る激痛に身悶えする。
絶望の苦痛。
迫り上がってくる胃液を止める術を私は知らなかった。
「けふっ…ごほごほごほっ…う、うえ、おえええええええええええええええええ」
酸っぱい味が口の中に広がった。
つぶつぶした何かが気管支に入り込み、再度、むせる。
自らの吐瀉物の中で感じるこれは、決して体に残る毒だけによるものではない事を知っていた。
「…ぁ…ぁが…ああ」
ボロボロに焼け焦げた右腕が空を切る。
がむしゃらに救いを求めてもその手をとってくれる相手はここにはいない。
唸り声に嗚咽が混ざり出す。
流れ落ちた涙が、ケロイド状に崩れた皮膚をつたう。
それの苦痛は果てる事なく続いた。
…
…目が覚めた。
床で寝た後の様な後頭部の軽い痛みに顔を顰める。
体を起こす。
頬にこびりついた乾いた吐瀉物の欠片がポロポロ剥がれ落ちる。
意識がまだはっきりしない。
けど、脳は安定して働いてるのを感じる。
未だ寝ぼけ眼な二重瞼を痙攣させつつ、あたりを見回す。
鍾乳石。
まず目に入ってきたのはそれだった。
天井まで続く2、30メートルはあろうかというそれは大自然の偉大さを醸している様だった。
次いでその周辺をみる。
私のいる場所から段々になって、どんどん広大になっていく超巨大な洞窟。
所々にひび割れの様なクレバスの様な渓谷があり、その周りに点在する池の水がそこに流れていた。
絶え間なく聞こえる轟音。
天井のひび割れから流れ落ちてくる水の音だった。
恐らくこの上もここと同じ様な様相を呈しているのだと安易に想像がついた。
一瞬すわ天国かと思ったけど、どうやら神様もそこまで気を回してはくれなかったらしい。
取り敢えず立ちあがろうと手をついて腰を浮かせたところで左足に激痛が走った。
いつつ…何?
痛みに堪えつつ目をやったその先では、左足が黒く染まり、亀裂が走った様な模様が浮かび上がっている様だった。




