220 オリジナル救出作戦 ②
外なるもの的な奴との戦闘はそこまで過酷じゃなかった。
幻錯の状態異常は奴が発動しなかったのか、私には効かなかったのかわからないが、特に影響はなかった。
あの体のどこに察知器官があるかわからなかったから、取り敢えず触手推進と、この体になって使える様になった「立体移動」スキルを併用し、空中からのマッハの奇襲で一瞬で組み伏せた。
幸いこいつの物理ステータスは全くなく、問題なく無効化が完了した。
鑑定スキルを先に使っておけばよかったかもだけど、気が動転していてそれどころじゃなかったのだと自己弁論する。
そんな時だった。
オリジナルからの生存連絡が来たのは。
{一号!!!}
脳を貫く様なオリジナルの声。
切羽詰まった焦り具合を醸していたが、生きていることは確かな様だった。
オ、オリジナル!生きてた!
あまりの安心に視界がぼやけるが、次いで聞こえてきたオリジナルの指令に気持ちを切り替える。
{いやぶっちゃけ瀕死!
さっきのモンスター!
まだそこにいる!?}
普段のほほんとしてるオリジナルからは想像がつかないような絶望混じりの絶叫。
モンスターとは外なるもの的な奴か。
それならもう捕縛まで完了してる。
{洗脳出来るか!?}
そう問われたらやらないなんて選択肢はない。
やってみる!
慌てて返事をして、体内からそいつを捕縛してる分体に洗脳を命じる。
{洗脳完了。}
凡そ数秒後、分体から返事が出る。
と、同時に外なるもののとの感覚が共有される。
視界はほとんど暗黒に包まれている。
半径1メートル先も見渡せないような弱視。
だけど、視界に映ってるのは周りの状況だけじゃなかった。
視界の右上に張り付いている円形のウィンドウには白い点が一つ蠢いていた。
分体からの鑑定結果が送られてくる。
脳内に流れてくる情報を一瞬みるだけですぐ思考を元に戻す。
どうやらアレはコイツの種族固有スキルらしい。
口内に作る簡易テレポートと、飛ばした相手をマップで追従するスキル。
その二つで狩りをするタイプのモンスターのようだ。
なら、逆のことをすればオリジナルをここに呼び戻せる!
{飛ばせ!}
その考えにオリジナルも気付いたのか、再度命令が下される。
了!
そう叫んでスキルを使用する。
{座標計算中…転移可能推定時間、三十秒後。}
オート君がそう結論を出す。
これで取り敢えずは一安心かな。
いやはやいやはや。
一時はどうなることかと思ったけど、これで何とか…。
{残り10秒…。}
カウントダウンは続く。
{残り5秒…。}
{3、2、1。}
そしてそのカウントが0になった時。
{ゼr…
ヴォンッ!!!!!!!
妙な擬音を放ち、外なるものの口から深淵が飛び出してきた。
同時に爆発が起こり、あたりに土煙が巻き起こる。
濃厚な闇の気配が一瞬当たりに充満したかと思えば、すぐに消えた。
土煙が晴れた後、そこに在ったのは半径5メートル程のクレーターと、ひしゃげて潰れた外なるものだけだった。
…オリジナル?




