219 オリジナル救出作戦 ①
Feat.ポチ
本能の赴くままに、命じられたままに。
絶対の不可侵を守り続けている神の飼い犬は、外敵が完全に消滅したことを確認し、来た道を振り返った。
深淵の最奥。
昏い瘴気に包まれ、視認することもできないその幾何学の触手が静かに脈動している。
辺り一面に張り付いているのは忘れ去られた星の遺物。
黒き侵食によって崩れたかつてのコンクリートジャングルがそこにはあった。
誰も知らない地獄の底で闇の聖獣は再び眠りについた。
…
Feat.一号
オリジナルがあの外なるもの的な奴に食われたとき、やってしまったと思った。
文字通りこの世の絶望だった。
あの時のオリジナルは、オート君によれば「幻錯」とかいう状態異常にかかっていたらしい。
油断した。
オリジナルには…私もだけど、だいぶ昔、それこそ私が生まれるよりも前から鍛え上げてきた状態異常耐性があったから。
状態異常のエキスパートみたいなオリジナルがあっさり敵の幻惑に惑わされるなんて思いもよらなかったんだ。
あの時、唐突に歩を180度回転させていきなり引き返した時点で引っ叩いてでも止めるべきだった。
もしくは、私が代わりに食われるべきだった。
私達分体の全てに優先されるのはオリジナルの安全確保と生命維持であるというのに。
でもそんなものはもう後の祭り。
後悔先に立たずともいうんだっけ。
オリジナルの分体、すなわちオリジナルのスキルから作られた私はまもなく終焉を迎える。
他の分体、地上に出ていった奴らも同じ運命を辿るだろう。
私達は一蓮托生。
オリジナルとは一方通行の命の糸で繋がってる。
本体とは別に身外身として人生を謳歌する何処ぞの猿とは違うのだ。
今にも私の意識は消えゆく…。
…。
…。
…。
…消えゆかなかった。
ワッツ?
何で?
私はスキルで作られたシステム上の創造物。
ならシステムの枠組みの中で死ぬはず。
それなのに私の体はオリジナルからもらったアルラウネの身そのままで残っている。
これの意味するところ即ち…。
…オリジナルは生きている?
そんな筈はない。
さっき外なるもの的な奴に食われていくのをこの目で確認した。
オリジナルとの通信も不明瞭で、生死の確認ができない。
…それでも、オリジナルが生きている可能性に賭けられるならそこに全力を投資しよう。
ウアアアアアアアアアアアアアアオ…
決意を固めると、私の視線の先で外なるもの的な奴が唸り声を上げた。
…よし。
取り敢えずアイツをぶっ倒してオリジナルを探そう。




