218 根源的恐怖
視界が暗転する。
意識ははっきりしてる。
体の感覚もある。
外なるもの的な奴に食われたはずだけど、どこにも欠損はない。
ただ周囲が歪曲し、前後不覚に陥る。
この感覚、転移だ。
…
開けた先は深淵。
只、何もない深淵。
意識がなんとなく混濁してるのは、転移直後だからか。
瞬間、唐突に口元から温かいものが垂れてくる。
目が染みる。
だばだばだばだば。
暑くて、生臭くて、濁ってる。
服を汚すその物質が、自分の血だと気づくのに若干の時間がかかった。
{状態異常:猛毒}
{状態異常:錯乱}
{状態異常:侵食}
{状態異常:腐蝕}
{状態異常:分解}
{状態異常:融解}
{状態異常:朦朧}
見えざる敵からの攻撃をオート君がアラームと共に知らせてくる。
私には昔から、それこそ細菌時代から鍛えてきた高レベルの状態異常耐性があった筈だ。
でも、今意識は混濁し、目から口から全身の毛穴から血が噴き出ている。
それの意味する所、つまり。
私の状態異常耐性を貫通するほどの超高レベルの状態異常攻撃。
HPが激減していく。
HPの自動回復が間に合っていない。
なんのともなしに膝をつく。
血を失いすぎた。
慌てて薬合成を発動する。
ぶくぶくぶくぶくぶく。
生成されたポーションを速攻で自身にふりかける。
瞬間。
身を焦がす激痛にのたうち回った。
HP回復ポーションが、酸に変えられた。
訳がわからない。
もはや座り込む気力すらない。
手をつき、床に這いつくばる。
体が崩れ出す。
視界が分離した。
こぼれ落ちた右目が、右手の親指にあたった。
ぐにゃりと生暖かい感触を残して、右目は深淵に飲まれた。
もう今魔女っ子が人間の形を保っているかすらわからない。
生命の危機。
ふざけんな。
死ぬ。
生き残る方法を模索する。
死にたくない。
高速分裂で体勢を立て直す。
ドロドロに溶けた四肢が生え変わる。
落ち窪んだ右目に再び光が灯る。
HP自体は回復しないけど、体が五体満足でいられることのアドバンテージは大きい。
文字通りリフレッシュした脳で状況の打開に努める。
HPの消費速度は尋常じゃない。
常時モンスターにリンチされてる様な削れ方をしていく。
持って私の命は後一分。
それまでに状況の打開案を出さなくてはいけない。
幸い、まだ分体との接続は微弱ながらきれてない。
なら…
一号!!!
{オ、オリジナル!生きてた!}
いやぶっちゃけ瀕死!
さっきのモンスター!
まだそこにいる!?
{まだいる!}
洗脳出来るか!?
{やってみる!}
おそらくあいつのの今までの戦闘スタイルは、自分から直接手を下さず、こう言う場所に無理やり転移させ、獲物が死んだ所で死体を呼び戻すトラップ型。
ならばそいつを洗脳してしまえば私をあっちに今引き戻すことも可能なはず。
{洗脳完了!}
ナイス!
飛ばせ!
{了!}
{座標計算中…転移可能推定時間、三十秒後。}
うっし。
これで勝つる。
血が肺に入り、むせる。
一時はどうなることかと思ったけど、これでなんとか…。
あ゛
瞬間。
極大の恐怖が私を貫いた。
ミート・イーターなんて目じゃない。
根源的恐怖を表すその深淵の主が、闇の向こう、存在した。
{熟{練度{熟練{熟{熟練度{一定{達{ま{ま{ま{スキ{キル{「恐{無効{Lv.{v.6{7獲{しま{し{た。}}}}}}}}}}}}}}}}}}}
{ステータスの鑑定に失敗しました。Lv.ステータスの鑑定に失敗しました
HP:ステータスの鑑定に失敗しました。
MP:ステータスの鑑定に失敗しました。
SP:ステータスの鑑定に失敗しました。
平均攻撃力:ステータスの鑑定に失敗しました。
平均瞬発力:ステータスの鑑定に失敗しました。
平均防御能力:ステータスの鑑定に失敗しました。
平均魔法攻撃能力ステータスの鑑定に失敗しました。
称号:(この称号は存在しません。)
スキル : 「このスキルは存在しません。」
特典スキル: 「このスキルは存在しません。」
経験値: ステータスの鑑定に失敗しました。
特記事項:ステータスの鑑定に失敗しました。}
そいつが、腕を振りかざす。
動けなかった。
何かが通り去った後、全ては無にきした。




