Code.4 (2)
時刻は日も地平線に隠れ始めた黄昏時。
僕は街に入った時に最初に貰った地図をみながら、目的地に向けて歩いていた。
…
帝都は王城を中心として、ほぼ円形に作られている。
王城からまっすぐ真南に行くと世界有数の超エリート魔法学校、アドヴァンダル魔法学校がある。
これはお坊ちゃまとか未来の勇者が通う学校で僕とは程遠い雲の上の存在だ。
そして、その学校の反対側。
王城から真北にまっすぐ進むとある4階建ての巨大な建物。
それが僕の所属する冒険者ギルドだ。
…。
荘厳とは言わないまでも、数多の英雄が所属した帝都冒険者ギルド。
建物から発せられる威圧感と重厚感は他の建造物とは何か一線を隠した雰囲気を醸し出していた。
冒険者ギルドにはいくつかの施設が繋がっている。
ギルドマスターの住む中ビルの両サイドには、
冒険から帰ってきた冒険者が獲得したアイテムを鑑定、および換金する鑑定所、依頼の受付、及び依頼受け取りを行う依頼所、冒険者達が泊まる宿屋や娯楽を楽しむ酒場なんかもある。
要するに冒険前と後のアレコレを全てギルドで完結できるような複合施設なのだ。
…そして今回僕が向かう先は勿論冒険の疲れを癒すための酒場…ではなく、依頼所だ。
ギィ…
と軋む音を出しつつ依頼所のドアを開ける。
奥行きの広い大広間。
扉を入ってすぐのところにはいくつかの椅子と机が並べられており、話し合いや受付の待機などに使えるようになっている。
壁には掲示板のようなものが幾つも建てられており、依頼書が大量に貼り付けられていた。
入口から数メートル先、部屋の一番奥にある依頼受付と書かれた看板が立てかけられている長机のカウンターの奥にいるギルド嬢のアンナさんがこちらを見て笑顔を返してくれる。
時刻は日も傾いた黄昏時ということもあり、昼間の賑やかさからは想像もできないほどに建物の中は静かだった。
おそらく、昼間ここで騒げるような冒険者は今頃酒場にいるのだろう。
壁に張り付いている依頼書を横目で見ていく。
「ゴブリン討伐 : ブロンズ」
「野草採取 :ブロンズ」
「魔王城第一階層攻略、素材回収 : シルバー、ゴールド」
「魔王城第二階層攻略、素材回収 : ゴールド」
「白魔討伐 : ゴールド」
…冒険者には各々魔物討伐などでしたギルドの貢献値や単純なステータスの差によって付けられる冒険者ランクというのがある。
段階は合計で五種類で、下から、
ブロンズ→シルバー→ゴールド→プラチナ→ダイア
とある。
それで、肝心な僕はというと…。
「カートマン様。現在ブロンズに出ている依頼は以下の通りになります。」
「ありがとうございます。」
勿論、最低ランク、ブロンズだ。
冒険者として探索での金儲けを行う上でランクというのは酷く大切だ。
より高ランクになればなるほどハードな依頼を受けられるようになり、金も一つの依頼で大量に貰えるようになる。
逆に、ブロンズは単純かつ報酬も少ないようなものしか無い為、一日のうちに何回も仕事をこなさなくちゃならない。
そして、報酬が少ない僕は、生活するため今日もまた同じような仕事を繰り返すこととなるのだった。




