193 討伐
一号に言われながら、思考加速を等速に戻してキャパを増やす。
軽い振動。
下に潜った蛇が土の中を移動する音だろうか。
バゴォンッ
前方が爆発する。
またしても土から飛び出てきた大蛇が、今度は体を半分土に埋めたまま低い体勢で突っ込んでくる。
ぐーぱーぐーぱー。
迫る振動を感じながら未だスキルを解除してない右腕を動かす。
ダイアモンドで固められた右腕は、それでもなお柔軟な硬化をみせ、なんの抵抗もなく感覚神経を受け入れる。
凶化はステータスだけでなくスキルもワンランク上に進化させる。
現実、凶化バーサクバフがかかってない状態では魔女っ子の技をトレースしただけで再現することは不可能だ。
ならどうすればいいか。
{アキネト・サディカルエデヌスからの要請を受け取りました。スキル「変異Lv.4」を発動します。}
{アキネト・サディカルエデヌスからの要請を受け取りました。スキル「土魔法Lv.10」を発動します。}
{アキネト・サディカルエデヌスからの要請を受け取りました。スキル「腐蝕攻撃Lv.6」を発動します。}
{アキネト・サディカルエデヌスからの要請を受け取りました。スキル「地魔法Lv.7」を発動します。}
{アキネト・サディカルエデヌスからの要請を受け取りました。スキル「暗黒魔法Lv.3」を発動します。}
{アキネト・サディカルエデヌスからの要請を受け取りました。スキル「物理大攻撃Lv.6」を発動します。}
{アキネト・サディカ…
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元々あるスキルに足して何倍にも何十倍にも重ねがけすればいいんだ。
{なんと言う脳筋。}
{そこは思考のレベルをランクアップさせてけよ。}
分体達が何か喚いてるけど関係ない。
力こそ全て。
絶対暴力を受け入れられないやつは死ぬのみなのだ。
でかい図体を揺らして猛進してくる大蛇に対して全力で振りかぶる。
どりゃせいっ!
本日2度目、渾身の右ストレート。
何重にも纏わりついた触手が織りなす加速は音速を超えた。
走る衝撃波。
暴力的なまでに重ねられたスキル共が挙って対象を破壊せんと大蛇に迫る。
大爆発。
超新星が起こった。
粉塵が巻き上がり、私自身反動で体が真後ろに吹き飛ばされる。
少し遅れて衝撃音。
空を舞った大蛇の前半分が数十メートル先の地面に墜落した音だった。
今度は地面に潜ろうともしない。
音を立てず、素早く動体と別れた首に接近する。
{フォレストダーピーワーム Lv.2
HP 18/1390
MP 89/1090
SP 21/1263
平均瞬発力: 1218
平均攻撃能力: 3529
平均魔法攻撃能力:2969
平均防御能力: 2351
称号: (土の王)(哺乳類の捕食者)(災害)(強者)
スキル :「地中移動Lv.9」「土竜Lv.5」「大地魔法Lv.4」「凶顎Lv.5」「物理大攻撃Lv.5」「物理大攻撃耐性Lv.7」「HP自動回復Lv.6」「SP消費緩和Lv.7」「状態異常耐性Lv.7」「聴覚強化Lv.7」
特典スキル :
経験値: 189507
特記事項:瀕死}
痙攣し、全身から体液を吹き出しつつ、喘ぐように口を上下させる大蛇の片割れ。
驚いた。
まだ生きてたとは。
びっくりだぜ。
うーむ。
どうも、ダメージの入り具合を見る感じ、爆発の衝撃にばっか威力が向いちゃって、肝心のダメージがあんまりなかったっぽいね。
…ま、行動不能になったコイツを見る限りダメージの総量はあんま関係なかったっぽいけど。
横になった大蛇の顔面を踏みつけつつ、上に乗る。
縦長の瞳孔がこちらを睨み付ける。
激しい憎悪、殺意、少し前なら萎縮してたその圧も、今やなんの効果も私の心に及ぼさない。
どうにもミート・イーター戦は私の心の何かを奪ってっちゃったっぽいね。
軽く鼻を鳴らし、両手を眼前に上げる。
{アキネト・サディカルエデヌスからの要請を受け取りました。スキル「暴風魔法Lv.7」を発動します。}
{アキネト・サディカルエデヌスからの要請を受け取りました。スキル「雷光魔法Lv.5」を発動します。}
手の上で発動される二種類の中級魔法。
魔力が収縮して来、スパークとかまいたちが周囲に飛ぶ。
ここでようやく、大蛇の視線の殺意が恐怖へと変化する。
縦長の瞳孔はあくまでも無機質だけど、それくらいはわかる。
ニヤリと笑い、両手に発動させた魔法を直接大蛇の顔面に重ね合わせる。
電気交わる竜巻が大蛇の体内で暴れ回った。
爆発が起こった。
{アキネト・サディカルエデヌスの条件が一定に達しました。Lv.7になりました。}
…ブゥン




