147 OUTSIDE。ヒキニートは死ぬ。
さて。
陽光に照らされてゆっくりもできたことだし。
いろいろ動いていきましょうかね!
それじゃ、早速分体にメイドと火竜をゾンビ化してもらってーっと…。
{視覚を持つ魔法生物を洗脳完了。}
{視覚を持つ魔法生物を洗脳完了。}
そうして、ワクワクしながらゾンビを作っている最中、遠く離れた分体から成功の吉報が入るのだった。
えええええ?
…。
{視覚共有パイプが最高値に達するまで、残り「60.79」秒。}
{視覚共有パイプが最高値に達するまで、残り「59.42」秒。}
最近すっかりお馴染みになってきたこのカウントを、私は微妙な気持ちで見ていた。
…いやだってさ。
私だってこっちはこっちでいろいろ苦労して準備してきたわけだよ。
メイドのデロデロ死体探して。
身体中血まみれにしながらなんとか引き上げて。
脳が死んでたからいろいろ試行錯誤して。
ようやっと光明が見えた獄洸魔法を使って大量にMPを消費して。
やっとなんとかなったーってなったところにこの仕打ち。
私の苦労及びここ5、6話の活字数は何だったのか。
いや、決して分体たちについてなんやかんや言ってるわけじゃないんだよ?
というかぶっちゃけ褒め称えたいわ。
これ。
スゲーもん。
分体たちだけで私の命令を忠実に守って。
自分達よりもはるかに大きい生物を洗脳して。
150%以上の成果を上げた。
いや、もう胴上げもんだわ。
あとでしてあげるね?
ただ、なんというかいろいろ噛み合った末のタイミングが悪かったかなーって。
いや、ほんと、分体たちにはマジで感謝してるし、この愚痴も分体たちに言ってるわけでなくてね?
じゃぁ誰に言ってんだって言われるとちょっと答えづらいけど。
まぁ強いていうなら神かな?
もうちょっとお前空気読めよと。
タイミング考えとけよと。
うん。
それだけ。
{視覚共有パイプが最高値に達するまで「0.00」秒。}
{視覚共有パイプが最高値に達するまで「0.00」秒。}
そんなことをぐちぐち考えているうちに、カウントは0になった。
…。
私とテレパスで繋がってる分体の洗脳している生物の目からの視覚情報が私の脳内に浮かび上がる。
…こう考えると随分とまぁ複雑な事をしてるもんだ。
要するに三つの媒体を通して網膜からの刺激が送られてきてるわけだからね。
マルチタスクどころの話じゃねーぜ。
うん。
それで、うっすらとだけど分体からの転移先の情報が伝わってきた。
えーっと?
こっちの分体は…青の魔法陣に入った分体だね。
んーと?
どれどれ?
―岩。
それは、灰色に鈍く光り、ゴツゴツとした表面からはどことなく冒険の風味が感じられ、アクセントのように這った苔がその自然を語っていた。
うん。
岩だね。
岩オブザ岩。
無駄に岩に情景描写使うのが流行ってんのか最近。
んじゃ、周りの状況も見てみたいし、見回して見てちょーだい。
{了。}
ぐるっと回る視界。
その視点の先には、なかなか興味深い世界が広がっていた。
…洞窟だ。
横穴。
いや、そういうと誤解を招くか。
大空洞。
それが目の前に広がるものを的確に表現する言葉だと思う。
先へと続く道は闇へと続き。
今分体が洗脳してるやつの大きさにもよるけど、目測では天井は優に20メートルを超え、横幅に関しては100メートル、小さなマンションくらいなら余裕で建てられるくらいの広さがあった。
天井や地面からは鍾乳石が生えており、魔法的なものなのかなんなのか、その空間は妙に明るかった。
ほえー。
まぁ、なんとなく予想はしてたけど、正にザ・ダンジョンって感じの見た目だねー。
耳をすませば魔物っぽい鳴き声も聞こえるし、特に明かりもないのに周りが見えるって正にダンジョンあるあるじゃん。
まぁ、元より疑ってたわけじゃないけど正真正銘私がいるのは、異世界だ。
…
んじゃ次。
さっき見たのが青の魔法陣だったから、次は赤の魔法陣の方だね。
んじゃ、パパっと見て見ますか。
赤の方に意識をつなげてっと。
どんな感じかなー。
―緑。
ん?
―緑、青、赤、灰…
ん?ん?
―緑、青、赤、灰、茶、白、黒、銀…
え、ちょ、は?
―浅緑、版緑色、老竹色、藍鼠、群青色、茜色、赤紫、赤橙、青鈍、薄墨色、薄茶、江戸茶、柿渋色…。
私の混乱を他所に薄れながら脳内に映し出された景色は、群青色の空の下、青々と咲き乱れた農園に、美しい城下町と、禍々しい巨城だった。
アウトサイドワァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアルド!!!!!




