110 次戦ボス部屋 ②
祝123話
再度火竜洗脳を施し、薬合成で多少回復して、操土で篭っていた壁に穴を開けて外に出る。
その姿には流石の勇者御一行様も驚愕と焦燥の表情を滲ませる。
ふふ。
まぁそうだろうね。
なんてったってこっちはMPを大分消費したとはいえ、薬合成と土魔法によってさっきの獄魔法シリーズで食らったダメージは最終的には皆無に等しい。
対してあっちの代償は、魔女っ子の大量のMPの消費と、魔法の余波から仲間を守るために結界を浪費したメイド、メインウェポンを失って攻撃手段が尽きた女騎士。
多分あっちはさっきの獄魔法で決め切るつもりだったんでしょ。
けど、今その必殺の魔法を私が防いだことで私の勝利に確率は大分上昇した。
もちろんそれに相反して、あっち側の勝率は大幅に低下した。
天秤は今や私の方に大きく傾こうとしている。
それをあっちも理解してるからこその驚き、焦り。
しかし、そんな絶望的な状況でも、再度闘気をみなぎらせ、戦闘の陣形を取る勇者御一行様。
ほー。
さすが勇者。
やっぱり勇者たるそれ相応の覚悟と勇気は持ち合わせてるわけだ。
わかった。
私もその勇気を讃えて全力で最後まで戦ってやろう。
…正々堂々かは別として。
さあ、最終ラウンドの始まりだ。
…
初っ端、私は洗脳前に発動していた魔法を使う。
それは、幻魔法レベル2の暗幻変と、影魔法レベル3の包身影。
この明らかに適当な感じ貼り付けてそれっぽい名前にしましたよー的な魔法の効果はそれぞれ暗闇を変化させて幻を作り出す魔法と、暗闇を体に纏う魔法だ。
これらの魔法の合成技により、私の姿は完全に消えてなくなる。
これなら、相手が鑑定スキルとかの探知系スキルを持っていない限り、こっちから一方的に敵を殴ることができる。
これこそが私の持つ切り札その一。
分かり易く説明すると、某スパイな映画とか某スパイダーな映画とかでよく見る光学迷彩を魔法で再現したって感じだね。
実に便利だ。
うっしし。
どこから狙ってやろうかねー。
え?
卑怯?
イヤイヤ。
いくら食らわなかったとはいえ、もう今後は魔女っ子の極魔法シリーズとか言う確殺攻撃を放たれた時のあの肝が冷える感覚は味わいたくないのですよ。
それに元々は、実力的な部分でも経験数の部分でも、ステータスの部分でも、確実にあっちの方が格上。
ここまでやったとしても未だ戦況的には五分五分みたいな状況なのですよ。
それなのにここまでこれたのは単に運と、私の無駄に高い初見殺し性能によるものだ。
でも今や幾つかの最後の切り札以外ほぼ全ての手札を切った後。
だからここから先確実にこちらが勝てると言う確証はない。
私みたいにあっちも最後の切り札的なものを隠し持ってるかもしれんし。
だからそう言うわけでこれくらいのハンデは許してくださいお願いします。
…さて。
そんなことはおいといてと。
現状、今の私の状態は微有利。
このまま影魔法と幻魔法を維持したまま虚無から相手を一方的に倒せれば私の勝ちなんだけど…。
シュン…ッ
おわ!
急に飛んできた火球から身を捻って避ける。
{火魔法lv.10発動確認。}
はぁ。
やっぱりか。
その事実に気付き、一旦動きを止める私。
竜の瞳が見つめる先には、隠れているはずの私をまるで視認しているかのような動きでこちらの動きを追ってくる魔女っ子の姿があった。
イヤイヤ。
あれ絶対にこっちを感知してるよね?
おかしいなー。
私的にはこの霞隠れの切り札その一には割と自信があったのになー。
まさかの感知系のスキルを持ってない魔女っ子に見破られるとは…。
さすがは勇者御一行様。
期待を裏切らないチートクオリティだわ。
しょうがない。
これじゃただ無駄にMPを浪費するだけだ。
切り札その一を解除する。
幻によって隠されていた巨躯が改めて姿を表す。
それによって完全に私を視認できるようになった魔女っ子が、今や唯一のダメージソースとなった魔法を怒涛の勢いで放ってくる。
火が、氷が、土が、風が、雷が、一つになって束になって襲い掛かる。
それを火翼を展開して避けまくる。
苛立ったように半ばやけくそ気味に投げつけられる低レベルの魔法は、それでも私にヒットすることなく、岩壁に跳ね返って消えていく。
焦ってるね。
もうそれは最低レベルの魔法しか使ってこない時点で目に見えてる。
でもMP的な余裕に関してはまだ見た限りじゃあるはずなんだけどなー。
流石に獄魔法をポンポン打てるほど残ってないけど、それでもまだMPが枯渇寸前ってわけでもなさげ。
弾幕を張ってこないあたりMPを節約してきてる感じか?
なして?
うん。
まあいいや。
わかんないし。
が、しかし、次の瞬間私はその判断を後悔することになる。
{空間魔法lv.1 発動確認。}
{空間魔法lv.2 発動確認。}
{空間魔法lv.3 発動確認。}
{空間…
山:…。
ア:…スッ
山:…落ち着こうアカツキたん。
ア:気持ち悪いので殺意倍増です。
山:ごめんなさいアカツキさん。
ア:私の怒りの理由わかります?
山:冷蔵庫のプリン勝手に食べたこと?
ア:…殺意が倍増されました。
山:おおおおお落ち着こう落ち着こう。あああ、あれね。毎日投稿するーとか言ってまともに投稿してない件についてね?
ア:その通りですよ。昨日なんて一週間で一番稼げる時でしたからね。
山:正直すまんかった。
ア:何があったんですか。
山:いや僕も、毎日登校頑張ろーっと思ってアナログの紙から頑張って一文字一文字打ってたんですよ?そしたらですね…
ア:どうなったんですか
山:朝チュンしてました。
ア:最近そんなんばっかりじゃないですか。




