表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/61

第20話 進むべき路と居場所~続きと記憶~

――私が思い(ふけ)っている間に、ビターさんがサンセとカイトとの魔力石の連絡を試したみたいだけど――ビターさんの最初の推測通り、私を通していない点で魔力はないから連絡出来なかったみたい。


 そう考えると、やっぱり不便なのかも……。


――ふと、マカダミアに行く件で思い立った。

 しーちゃんに伝えて、一緒に行こうって言おう! しーちゃんも白銀の髪に青い瞳だから、チョコランタでは紛らわしい容姿で危ないもん!

 サンセ達もいるけど、何とか会って仲良くなってもらいたい。しーちゃんもサンセ達も良い人だから、お互いを知らないなんて勿体ないし。


「あ……いったん、おうちかえっていー?」

「ああ、例の裏山か……どんな所に住んでる? 食事や寝床はちゃんとしてるのか? 風呂は?」

「……うっ……」


 ビターさんに畳み掛けられ、言葉に詰まる。


 孤児院(ここ)に来て、初めて快適なベッドに横たわったから、藁を敷いただけのベッドもどきに寝ていると言い出しにくい。

 食事は、しーちゃんが狩った獣を獣の街ザルクの住人に分ける代わりに、調理してもらったものを貰うという物々交換(取引)をしていた事がザルクに行った時に判明した。

 だから、食事に関しては子供の身体で満腹になるくらいには食べれている。

 お風呂なんて岩穴に当然ない! 雨の日に水浴びのように遊ぶだけだし……。ラビくんは臭くないって言ってくれたけど、まさか私臭う!?


「……その顔は、微妙そうだな?」と、ビターさんがクスクス笑い出した。


 ほんとにバレバレ……ビターさんに隠し事は不可能じゃない?

 私は苦笑いでごまかすしかなかった。


()()()()()()()()が良ければ、出発まで孤児院(ここ)に居たらどうだ? 風呂や食事はもちろん、部屋も余ってるし」

「っ! ほんちょ!? いいの!? しゅぐきいてくりゅ!」

「おいっ! どうやって行くつもりだ?」


 慌てて部屋を出ようとした私をビターさんに止められ、自分の考え無しの行動に気付き反省する。


 そうだよ……孤児院の子にバレたらダメって言われてたのに、堂々とドアから出て行ける訳ないじゃん!


「……カイト。メティーを頼む」


 ビターさんの言葉にカイトは黙ってコクリと頷き、私のそばに来て背中を向けてしゃがんだ。何だろう? と首を傾げた私に、カイトがボソリと「……乗って……」と呟いた。


 乗るって……まさか! おんぶ!? カイトがおんぶ!?

 想像つかない等と失礼な思考が頭を巡り、頭を振ってその思考を追い出し、カイトの背にしがみついた。


 おんぶしてもらったものの、どうやって行くんだろう?


「……ちゃんと捕まってて……」


 そうカイトが呟き、カイトは勢いよく()()()()()()()()()!?――


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 窓から飛び出したカイトを横目に、サンセ()はビターに視線を向け、()()()()()事を尋ねる事にした。


「――さっきの伝記の話……僕らが聞いてよかったの?」

「……王だけが知ってても、なんの解決にもならないと思ったしな」

「……解決? 何か問題でもあるの?」


 僕の問い掛けにビターは目を見開き、失言したとばかりに視線を逸らして溜息を吐いた。


「教えてくれないと、解決策を立てようがないけど?」


 僕が続きを促す視線をビターに送ると、ビターは僕の目を見たものの、また逸らされた。


「――伝記には……()()()()()が書かれてるとだけ……伝えておく」


 ビターが言いにくそうに視線を逸らしたまま答えた。

 ビターは昔から王族としての教育を受け、内心を悟られないようにしていた。そんなビターが僕に目を合わせない時は――


「……僕に知られたらダメな事?」


 ビターが焦ったように僕の方をバッと見て、言いにくそうに顔を(しか)めた。


「……悪い……今はこれ以上は言えない……俺自身が……サンセに伝える勇気が……まだない」


 ビターが口籠もりながら答えると、これ以上の追求から逃げるように「そろそろ城に戻る」と、窓から魔法で飛んで出て行った――


「パーティーに王が不在はまずいしね……」と、ビターの遠ざかる背中へうわの空にぼんやり呟きつつ、僕は頭の中を巡っているビターの意味深な発言をしばらく考えていた――


――()()()()()で、()()()()()()()()()事?――


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


――カイトが勢いよく窓を飛び出し、思わず下を見てしまって後悔した。メティー()が落ちた崖より低いけど、普通はこの高さから飛び降りたら大怪我しちゃうって!


 怖くて目をギュッと閉じて、しがみつく手に力が入る。


 タトンと軽やかな着地の音がして、ゆっくり目を開けると、平然としたカイトが私を見ていた。


「……なんかいかりゃ、とびおりたー?」

「……3階……」

「え!? あしへーき? いたくない?」


 カイトはコクリと黙って頷いた。

 なんでそんなに平然と何事もなかったかのように振る舞えるの!? 重力はどこに行ったの!? 3階からタトンって! おかしいよ!


「……危ないから……捕まってて……」

「へ?……わぁ!」


 私の心の中の疑問を問答無用とばかりに、カイトは崖に向かって猛スピードで走り出した。

 そして、腰に付けていたと思われる先端に(おもり)が付いたロープを取り出し、勢いよく振り回して崖の上にある木にクルクルと巻き付けると、ロープを頼りに崖を軽々駆け登って行った。


――なんということでしょう! ものの数秒で崖の上に到着とか!

 唖然と呆けた私を地面に降ろし、ロープを回収するカイトを眺めて思う。

 崖から落ちた私を助けたのも、きっとこの方法だ! さっきの軽やかな身のこなしは、まさしく忍者そのもの! だから、軽傷で済んだんだね!

 納得して思わず感嘆(かんたん)の溜息が漏れた。


――そういえば、しーちゃんに詰んだお花ないなぁ……。

 地面をキョロキョロ見て探したけど落ちてない。やっぱり、風で飛ばされちゃったかな? すぐ帰るつもりが遅くなっちゃったし、真っ直ぐ岩穴へ向かおう。


 くるっとカイトの方を向き「ここでまってて?」と伝えると、カイトは首を横に振った。

「……護衛……だから……」と、呟く無表情な顔は(かたく)なな意思があるように見えてしまって、説得するのは無理そうだと付いてきてもらう事にした。


――もうすぐ岩穴が見える場所で「しゅぐしょこだから……ここでまってて?」と、再び真剣な目でカイトに訴える。

 しーちゃんの許可を貰ったら、カイトを呼びに行くから――


 カイトはジッと私の目を見て、渋々頷き「……でも……変だったら……行く……」と、ぼんやりした声とは裏腹に目は真剣で、異変があればお願いを守らずに駆けつける気だとわかる。

 それならしょうがない事だし……と、私はカイトに頷いてから岩穴へと駆け出した。


――駆け出して視界に入った()()異変を見て驚愕した。


 岩穴があった場所のはずが、岩壁が並び()()()()()!? どうして!?


 岩穴があった場所の岩壁に触れると、間違いなくそこに岩壁がある――そんな事は見ればわかるのに、信じられなくて周辺の壁を闇雲に触れた。


 焦りから次第に叩くように触れ、涙で潤んだ瞳から涙が零れ落ちた。

 痛い……。叩いた手も、心臓もギュッと強く握られたように痛くて苦しい――このまま握り潰されてしまうんじゃないかってくらいに――


「……っ……しーちゃ……しーちゃ……っ……なんで?」


――しーちゃん……私に何も言わず、どこに行ったの? なんで勝手にどっか行っちゃうの?――


 しーちゃんと過ごした日々がよぎって、更に目頭が熱くなって涙がどんどん溢れていく。


――しーちゃんの事、何もわからないまま――あ……心の声が聞こえるしーちゃんには、私がしーちゃんに本当の事を聞こうと思ってたの、きっとバレてるよね? ()()()なの?


――()()()()()()わからないままでいいのに――


 行き場のない悲しさと、しーちゃんが嫌がる事をしちゃったんだっていう自分に苛立ち(むせ)び泣く。


「……どこに……いりゅの?……おちえて?……だれか……」


――しーちゃんの事教えてよ!――


 自分に苛立ちをぶつけるように強く心の中で思うと、ふわっと優しい風が吹いた。


『メシア様……私の()()記憶で良ければお見せしましょう……』


 突然、頭に響くように聞こえた声に驚き、周辺を見回しても誰もいない。


『だ、誰?』

『私はこの周辺に吹く風……』


 優しい風が、まるで私の頬の涙を拭うように吹いて語りかけてきた。

 メシスくんが土の中にある闇の力に()()()()()って言うのは、こういう事だったのかな?

 まさか、喋れる存在と思ってなくて驚きを隠せない。


『風?……風の精霊みたいなもの?』

『……個々の私はそんな大それたものではありません――お見せしても?』


 ()()()……この周辺に吹く風と言ってたし、たくさん存在するのかもしれない。


『見たい……見せて?』


 そう思うと瞬時に周りの景色が変わり、まるで風の記憶の世界に入り込んだように、風が私の目であり、耳でもある不思議な感覚になった。


――風となって吹き進むと、教会と孤児院の建物が見え、崖の上に人の姿が見えた――あれは、お花を持ったしーちゃん!?

 私が落としたお花、しーちゃんが拾ってくれたんだーとわかり嬉しくて口元が緩む。


 ん? しーちゃんの口元が動いて……何か言ってる?


 風がしーちゃんのそばを吹いた時、哀しげに顔を(しか)めて呟く声が聞こえた。


『――()()()()――』


――え? バイ……バイ?――


 思いがけない言葉に衝撃を受けると、風の記憶の世界がガラスが割れたように砕け、元いた場所に(たたず)んでいた――


――しーちゃんが哀しげに顔を(しか)めながら呟いた声が、ずっと頭の中に響いていた……泣きそうなか細い声が――


 しーちゃんの苦渋の決断が別れを選んだ事が悲しくて、そうさせてしまったのは私のせいだと思うと自分が許せなくて――


「っ……しーちゃ……ひっく……しーちゃん……うわあああああん!」


 今度は泣き叫ぶ声を抑える事が出来なかった――



――第1章 神奮励~チョコランタ王国編~ 完――


――第2章につづく――

ブクマして下さってありがとうございます!

大変励みになっております!


第1章終わって、次は前に後書きで書いた予定通り、ビターの過去話を挟んでからの2章突入であります!


後書きまで読んで下さりありがとうございます!

第2章もよろしくお願いします!


2021/06/24 りむ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人物紹介や豆知識や番外編
転生したら神とかチートすぎませんか!?の
他掲載サイトの小説リンク

アルファポリス版
↗1話分先行配信中↖

カクヨム版

ノベルアップ版
りむのX(旧Twitter)ページ
↑気まぐれツイートです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ