【バックハグのインスピレーション】
【バックハグのインスピレーション】
幼馴染みが大きなぬいぐるみを抱き締めている。いや、ぬいぐるみがでかすぎて、ぬいぐるみに埋もれていると言った方が正しいかもしれない。だが、幼馴染みがコレをしているときは必ずと言って良いほど、ボクに「ハグして」と言いたくても言えないとき。
だから、ボクは彼女の背中側から優しく彼女を抱きしめる。
「どうしたの? 言ってごらん?」
「さみしかった……」
これでは理由がわからない。だけど、ぬくもりがほしいのかもしれない。だから、ボクは「そっか……」と小さな返事をして、彼女を抱きしめ、彼女の肩に顔を乗せ、彼女の顔を見ようとするが、ぬいぐるみに埋もれていて見えない。
「苦しくない?」
彼女はの頷くだけ。しかも、なんだか、泣いているみたいだ。
「ボクもいるから大丈夫だよ」
彼女のお腹に回した手で、小さくゆっくりと彼女の脇腹辺りを控えめにポーンポンとしてみる。
「……ありが、とう」
その声は震えていて、泣いているように聞こえる。
暫くの間、そうしていると、彼女はぬいぐるみから離れ、クルリとボクの方を向き、正面から抱きついてきた。一瞬見えた顔は、やはり泣いていた。理由を聞こうかとも思ったが、やめにした。
だって、今日は、彼女にとって辛いことがあった日。
それを途中で思い出したボクは彼女が落ち着くまで、彼女のぬいぐるみになることを決めた。
読んで頂きありがとうございました。