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第11話 親と王子と

お久しぶりです…


今日は訪問客が多い。







「なんだかすごい事になってるな…」

「にゃー」

「いや、にゃーじゃねえよ。なんでそんなに猫になりきっちゃってんだよ」


うにーと鳴いているなんとも愛らしい黒猫の腹を撫でると、そいつは気持ちよさそうにゴロゴロ喉を鳴らしていた。なんだこいつ。



   ***




「ルツ…入ってもいいかしら?」

こんこんと控えめにドアを叩いたのは、母様だった。


「はい、どうぞ」

なんだか母様の声がさっきの悲嘆しているような声とは違って、酷く落ち着いていた。


入ってきた母様はひどくやつれていて、いつも陽にきらきらと輝く黄金の髪もこころなしかくすんでいるような気さえする。眉もハの字に下がっていた。じっとこちらを思いつめたように見つめて、クロがいることにも気づいていない。


これが私の目が変わったことに関係しているには当然すぐ気づいた。さっきシュベルツに説明を受けて、それほど悲観するような事態にはならなさそうだ。なぜ母様はこんな…今にも泣き出しそうな目をしているのだろうか。


「かかさま…るつはどこにもいきません。なにがかかさまをかなしませているのですか?」


知識人な母様が貴族の異性人引渡し免除の法を知らないはずはないだろう。趣味は大学とかで読まれてるような本を読むことだし、知らなくとも父様が教えないはずがない。

母様はふ、と目元を和らげると、横に座っていた私を抱きしめた。


「ありがとう…。貴女は本当に賢い娘ね…、私たち夫婦の誇りよ。…だからね、自分の能力を隠す必要なんてないのよ?貴女は貴女のしたいことをすればいいと思うし、私たちも応援するわ」


優しく頭を撫でる手を感じる。耳元で囁くように言われた言葉に、私は背筋が震えた。




気をつけていたのに。

ばれないように。怪しまれないように。…普通の娘だと思ってもらえるように。

いつから、気がつかれていたのだろうか。




全身が、震える。




黙りこむ私をよそに、母様は続ける。


「何に怯えてるのかしら。ねえ…私達にもっと頼って頂戴。貴女は本当に手がかからなくて…いっつもいい子ちゃんなんだもの。まだ、子供なんだから…フリなんて、しなくていいのよ?父様も私も、寂しいわ」

「かかさま、」

「心配しないで?私達が守るから。貴女を、ずっと守るから」


この身が、尽きるまで――――――。


   ***


「ギルベルト様、奥様は…」

「ああ、ルツのところに行った。そのほうが、セリシアのためにもなるだろう。気が動転していた…」


ギルベルトは髪を掻き揚げ、黒檀の机に頬杖をついた。

机の正面に立ったシュベルツは苦笑する。


「あなたも、奥様と同じくらい気が動転していらっしゃるようにお見受けしますが」

「そりゃそうだろう!まさか俺の子供がなるとは思いもしなかった!それに、この状況はかなりまずい…」

ゆっくりと硬くなった眉間をもむ。しかしそれに寄せられた皺がとれることはない。

「兄君との関係は良好で?」

「いや、周りの者からかなり言われてるらしい…。斥候もうろちょろしているし…よほど俺が煩わしいらしいと見える」


ギルベルト・シフォンキーア。今はシフォンキーア領を与えられそれを家名にしているが、列記とした王族である。アレンナ大陸の3大国のひとつ、アストゥルノ帝国第12代国王カルメルンの次男。つまり、王子殿下と呼ばれる立場だ。


王宮では近衛騎士団の副団長であり、現王太子である兄が即位すると同時に王を守る近衛騎士団の団長になることが内定している。武芸が堪能でカリスマもあるギルベルトに憧憬の眼差しを向けるものは少なくない。


対してギルベルトの兄レフェントは頭脳に恵まれており、現在は王の下で王になるべくの仕事を学び、王の補佐役をしている。


この二人の兄弟は武人と役人というものからか、よく対立していた。ギルベルトには武官が。レフェントには官吏が味方につくようになり、どんどん対立は王の知らないところで激化している。


ギルベルトとしては争いごとを起こしたくないのが本音だ。アステゥルノ帝国は大国であるからこその多くの問題を抱えている。今は落ち着いているが、大国らが虎視眈々とどの領地をふんだくろうかと目を光らせているのだ。こんなときに内乱でも起こったら…。


しかし最近は武官の中でギルベルトが王になるよう薦めてくる者も出始めてきた。もちろんその度に叱責してはいるが、綿密に計画を立てて提出してくる者さえいるのだ。今、国は王の知らないところで揺れている。


「あっちも俺をどうやって失脚させようかと必死だ。ルツが異彩人だと分かったら…事が酷い方向に転がり込む可能性が高い」


異彩人は国力の(かなめ)。異彩人の魔力は一般的な魔法使いの遥か上を凌ぐ。異彩人の数で勝敗が決まるとも言われているくらいだ。そして、現在のアストゥルノ帝国の現異彩人の人数はわずか6人。大国でこれなのだから、異彩人の希少さがわかるだろう。しかし6人の内、3人はもう50歳を過ぎている。そのうち1人は今現在78歳だ。この歳では戦などに赴くのは到底無理だろう。つまり、使えるのは最高で5人。これは大国としてはかなり少ない数だ。


もし今、国にルツを()()すれば、国の中でのギルベルトの株は多いに上昇することになるだろう。ギルベルト派も活性化するに違いない。レフェントはそれを恐れるだろう。


---ルツの存在が知れたら、何かしでかすに違いない。


ギルベルトはそう思っていた。


「なるべく、ルツの情報を外に漏らさないようにしろ。幸いアルやルツはこのギルベルトの子供としては領地に名乗っていない。うまく隠せ。もちろん、ルツには外出禁止を言い渡すつもりだが…そこのところは宜しく頼むぞ」

「はい、かしこまりました。斥候は…よろしいですか?」

「ああ、好きなようにやれ」


その言葉に、シュベルツは口元をふ、と緩めた。


眠い…

すいません、これからはもうちょっとペース上げていくので…


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