5
今の電話の内容から、この家の地下に先生が居るのは間違いない。
だが、これから警備が強化されるのか…。
もう、時間の猶予が無い。
少々、強引な方法を使っても先生と話をしないと…。
そうだ、「エタウイ」のレオンのように勇気を出せ!!
ピンチの時ほど、己を奮い立たせるんだ!!
「遊びの時間は終わりだぜ!!」
俺は西田に聞こえないように呟いた。
しばらくすると扉が開き、閉まる音がした。
西田の気配が消えた。
外から車のエンジン音がする。
そして走り去っていく音。
俺は念のため、3分待った。
それから物音を立てずに、そっと階段を下りた。
扉の窓から外を見る。
車がない。
よし、今がチャンスだ。
俺は地下室への階段に向かった。
西田が壁にかけた鉄製の鍵を手に取る。
これをどこかで使う可能性もある。
階段を地下へと進む。
暗い。
たどり着いた廊下の先の扉から、光が洩れてる。
通路はコンクリートの打ちっぱなしで少し肌寒い。
俺は扉の前まで、そろりそろりと歩いた。
扉は重々しい鉄の扉だ。
鉄格子がはまった窓がある。
俺は窓を覗き込んだ。
中は照明で明るい。
廊下と同じコンクリートむき出しの、だだっ広い部屋の真ん中に大きめの机が置いてあった。
左右の壁には本棚。
大量の本が並んでる。
部屋の奥側には小さな扉が見えた。
中央の机には30代後半くらいの男が座り、前屈みになって、必死に右手のペンを動かしてる。
俺は思わず、ガッツポーズした。
やった!!
俺はついに重松先生にたどり着いた!!
興奮に震える手で鉄の扉のノブに手をかける。
開かない。
そこで扉に鍵穴があるのに気づいた。
上にあった鉄製の鍵を鍵穴に差し込む。
開いた。
俺は部屋の中に入った。
先生が顔を上げて、こっちを見た。
口を開けて呆然としてる。
俺は先生に近づいた。
「あ」
先生が言った。
「新人の方ですか?」
少し震えた声。
不安そうな表情。
先生の顔は、いやに青白い。
髪はぼさぼさでヒゲ面。
まるで無人島に暮らす人だ。




