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俺のバイクは西田の車の後ろを尾行がバレない距離でついていく。
1時間ほど走って、車は山間部に入った。
周りの車が減ってきたので、さらに距離を空ける。
しかし見通しはよくなったから、見失う心配はない。
西田は重松先生の所へ向かうはずだ。
絶対に間違いない。
根気強く尾行を続けると、西田の車は森の中にある一軒のログハウスにたどり着いた。
俺はバイクを停めて、木々の間からじっと様子を窺った。
西田は車を降りて、ログハウスに入っていく。
まさかつけられるなんて微塵も思ってないようで、全く警戒してるふしはない。
西田がログハウスの扉を閉めると同時に、俺は木の陰を出て走った。
玄関の前に着く。
身を屈めて、扉に耳を当てる。
中から西田が動く音がする。
俺は扉にあるガラス窓から、内部をそーっと覗いた。
テーブルやソファーがある広々とした室内に西田が居た。
こちらに背を向けてる。
鼻唄を唄いながら奥へと歩いていく。
西田の左側の壁に大きな鉄製の鍵が、ぶら下げてあるのが見えた。
西田がそれを手に取る。
そして階段を下りていくのが見えた。
俺は扉を押してみた。
開いてる。
物音を立てないよう、細心の注意を払って中に入った。
周りを観察する。
2階のロフト部分へ上がる階段が眼に入った。
俺はロフトへ移動して、下から見えない位置で身体をうつ伏せにした。
そのまま、じっと待つ。
10分ほど経つと地下に行く階段から西田が上がってくる気配がした。
俺は動かない。
突然、電子音が鳴った。
「もしもし」
西田の声。
「はい。こっちは順調です。重松先生のパート10ページ上がりました。アシさんたちの方へ回しますね」
うろうろしながら話してるのか、西田の声は近くなったり遠くなったりする。
「やる気はイマイチですね。最近ずっとそんな感じで…ええ、何とかなだめすかしてやらせます。はいはい。こっちへ来ますか? 新しい警備の人を3人も…良いですね! それなら安心です。分かりました。僕はこれからアシさんたちの所へ行きます」
西田が電話を切った。
どうやら重松先生はアシスタントたちとさえ、別々に作業してるようだ。
そこまでして隠すとは、ふざけた奴らめ!
しかし俺は諦めないぞ!