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俺は間違いなく世界で最も「エタウイ」が好きだから、この由々しき事態を察知したのも1番だったはずだ。
不安を胸の底で何とか誤魔化してるうちに、レオンとエリシアが…。
絶対に言わない台詞を言い始めた。
これには、すさまじいショックを受けた。
あり得なかった。
最初は少ない回数だった。
それが回を追う毎に増えていった。
2人の異常な行動はエスカレートしていく。
レオンは弱音なんて吐かない!!
最高にカッコ良くて強い心を持つ男だからだ!!
エリシアは嫉妬なんてしない!!
海のように大きな優しさを持つ女性だからだ!!
何だ、これは!!
いったい何が起こってるんだ!?
俺はすぐに抗議を開始した。
アンケートや手紙。
何度も編集部へ送った。
しかし返事は1回も来ない。
俺以外のファンは気づかないのか、何も騒ぎは起こらない。
これは大問題だ。
しかも最悪だ。
重松先生が、おかしくなってるのに編集者も日本中の奴ら、いや世界中の奴らも問題視してない。
誰かが先生に注意しなければ「エタウイ」は、どんどん間違った方向へ進んでしまう。
否。
このままでは「エタウイ」は。
死んでしまう。
それだけは絶対に回避しなければならない。
俺は決死の覚悟で悠久社の「エタウイ」を載せている雑誌編集部に乗り込んだ。
「重松先生に逢いたい」と告げると編集者たちは鼻で笑った。
「それは出来ません」なんて、ぬかしやがる。
俺は重松先生に逢うまで動かないと座り込んだ。
すると編集長が俺をにらみつけて「警察を呼びますよ」と言った。
そこで俺は、はっとなった。
ここで警察に捕まるのはまずい。
いろいろと面倒なことになって、重松先生と逢うチャンスが、むしろ遠のいてしまう。
何とか、冷静さを取り戻した俺は立ち上がって編集部を出た。
もっと慎重に行動しないと。
俺は次の手を考えた。
何としても重松先生に逢わないと「エタウイ」を救えない。
そこから2ヶ月間、俺は徹底的に編集部を見張った。
編集者の奴らについても詳しく調べた。
それで分かったのは「エタウイ」の編集担当が西田だということ。
それと西田が頻繁に車でどこかへでかけていることだった。
西田は1度出かけると2、3日、編集部に帰らないときもあった。
かなり不規則な動きだ。
俺は西田の車を尾行すると決めた。
どこまで行くのか分からないので、入念に準備した。
そして、ついに尾行を実行する日が。
今日なのだ。