一話 何も変わらぬ日常…?
ここは、魔法使いと人間が平穏に暮らしている世界。
しかし場所によっては、世界が平穏になる前の時代を引きずり「魔法使いは悪」という古い考えを持つ者もいる。
その考えがとても根強く残るとても小さな村ある靴屋に住む少女「サーニャ」。
サーニャは幼少期から魔法使いに憧れていたがこの村で魔法使いになると言ったら罰は間違いない。
いや、罰はまだ軽い方だ。
処刑されるという「時代遅れ」な古い風習がこの村には残って居る。
サーニャの母親は、サーニャが生まれた二年後に病気で亡くなり、父親はサーニャに技術を継承してほしいという思いで靴の直し方などの技法を教えた。
しかし、父親は村で揉め事を起こし、その後行方不明になった。
それから数年が経ち、今はサーニャ一人で父親の店を継ぐという形で嫌々靴屋を続けているが…
(あー暇だなー…)
サーニャはため息をつき、心の中で愚痴をこぼす。
「今日も客来ないし…もう閉めようかな…」
小さな村なだけあって客一人来ない。来たとしても暇つぶしに来た顔馴染みの隣の老人だ。
その老人も最近どこか悪いのか来ない日のほうが多くなっていた。
店番をしつつ部屋にある本を読み漁るのが習慣であるが、大半は二回以上読んだから内容が分かり面白みがない。
「はぁ…これも終わっちゃった…。他になかったかな…ん?何この本?」
サーニャは立ち上がり、自分の部屋にある本棚から次読む本を取りに行こうとすると、廊下に無雑作に置かれていた本を見つける。
その本はとても古く、古本屋のの片隅にあるような見た目だった。
古びた本を手に取り、自室にある本棚を眺めるが本棚にこの本が入るスペースなどない。
「こんなのあったっけ?…ってタイトル読めないし…なんの本なんだろう…?」
その本を開いてみるが何が書いてあるのかわからない。サーニャはこの本をよくわからないが暇つぶしになるならと思い自分の机の上に置いた。
店番に戻ろうと廊下を歩いていると突然外が暗くなり大雨が降りだした。
「え!?外に出してる売り物片付けないと!」
店の前に出していた売り物を大急ぎで店の中へ入れ、店の戸を閉めた。
この村では雨が降ると客はもちろん来るわけがないので店を閉めても大して問題はない。
その後雨は止むどころか強くなっていき、風も吹き始め外は大荒れになった。
部屋の中で店番の時に拾った本を開いてみる。
読める文字も少しあることに気づくがやはり読めない文字の方が多く、読めたとしても意味のわからないものが多い。
何気なく読み進めていると玄関の方からコンコンと物音がした。
なんの音だろう?と思いながら玄関へ向かう。
玄関の向こう側から風や雨音と一緒にかすかに早く開けて欲しいかのようなノックの音がする。
玄関のドアを開けるとそのにはずぶ濡れになった女性が立っていた。