第8話 本物の魔法使い
「おい!私のブローチ返せよ!」
「返してください…」
「せめて財布とスマホは返して…」
元魔法少女3人はブローチの返却を求めている。
…あれ?変身が解けているのにまだ私達が見えるの?
「どうやらこのブローチが無事である限り、妖怪の類いは見え続けるようですね。」
と、葉月ちゃんが私にささやく。
成る程、変身していてもしていなくても関係無いのね。
「とりあえずこの子達どうしよっか…ん?」
人の気配が近づいてくる。しかも上から。
私が空を見上げるとそこには
腰辺りまで伸びている黒髪に凛々しい顔
青いコートに黒いスカートの女性が
何も持たずに直立しながらふわふわと浮いていた
何あれ!お化け!?
「「「タタ先輩!!」」」
元魔法少女が空に浮いている女性に反応する。
タタ先輩と呼ばれた女性は直立のままゆっくりと下り、私達と元魔法少女の間に着地した。
魔法少女の先輩って…このタタ先輩って言われた人物ってどう考えてもこの子達3人の知り合いだよね。
まさかまた敵がどうたらこうたらと言われるんじゃ…
こちらに歩み寄るタタ先輩。
「一部始終見させてもらった」
あの現場見られてたんだ…追い剥ぎもどきの現場まで…
これはマズイかもしれない…
「私の後輩が迷惑をかけた。本当に申し訳ない」
タタ先輩はそう言うと
私達に向かって頭を深々と下げて謝罪した。
「先輩…?」
「何してるんですか…?」
「その人達は私達を」
「黙れ」
「「「!?」」」
頭を上げるとくるりと向きを変えて元魔法少女達に近付く
「お前達3人の事はよく分かった
何もしていない初対面の人間相手に不意打ちで魔法を使った事
一般市民に暴言を吐いた事
魔力が豊富にある一般市民を妖怪などとのたまって悪者扱いして魔力を奪おうとした事
他所の魔法少女と無断で戦った事
私が禁止した猫又狩りをした事…」
次々と出てくる魔法少女達の悪業。
「「「ごめんなさい…」」」
謝る魔法少女達。
へぇ、私達は妖怪だってバレてなかったんだ。
よかったー、とりあえず一安心。
その後
「私はこの後輩達を家に送り届ける。その後でちょっと話をしてくれないか?大丈夫、10分以内にここへ戻ってこられる」
「私は大丈夫ですよ!葉月ちゃんは?」
「私も大丈夫です。近くの公園でお待ちしますね」
「あの…その前に財布とスマホ…」
「返して…」
「お願い…」
「分かってますよ、では…」
葉月ちゃんが元魔法少女達に近づく。
「まずは…出席番号2番アカ「うわーっ!おい!!ちょっと待て!!」
元赤パーカーの子が慌てて財布とスマホを受け取る。もしかして名前呼ばれかけた?
…葉月ちゃんどうやって知ったの?
「出席番号12番「待って!!」
「出席番号6「やめて!待って!!」
慌てて葉月ちゃんへと駆け寄り財布とスマホを受け取る。
「もう二度とこんな事しないで下さいね?もし、私達に仕返しするような真似をしたら…水下中学校の一年生の皆さん、分かりますよね?」
笑顔で元魔法少女に語りかける葉月ちゃん。
学校名を口にした瞬間に分かりやすいくらい驚く3人。その学校名って魔法少女達が通う中学校の名前なのかな?てか何で知ってるの?
そして
「「「申し訳ございませんでした…」」」
葉月ちゃんって一体何者なの?
一旦タタ先輩と別れて近くの公園まで歩く私と葉月ちゃんと白熊。特に何事も無く公園に到着。
私達は公園のベンチに座り、白熊はベンチの後ろでゴロンと横になっている。
葉月ちゃんと無駄話をしながら待ち続ける事約8分後…
「待たせてすまない」
タタ先輩が公園に入って来た。
「まずは自己紹介をしよう。私の名前は…とりあえずタタって呼んでほしい。一応魔法使いをしているものだ」
まさかの魔法使い!まあ、空に浮かんでいた時点で普通の人間じゃないもんね。
「君達は?」
「白雪です」「葉月です」
「白雪さんと葉月さん、こんな事に巻き込んでしまい本当に申し訳ない、心から謝罪する」
頭を下げるタタ先輩。
「いえいえ、何とか無傷で済みましたし…ところで、何故私達が攻撃された時点で助けに来なかったのですか?」
そう言えばタタ先輩ってさっきの出来事の一部始終を見てたって言ってたっけ?
「そうだな…それを説明するならまずあの魔法少女達について説明しなくてはいけないな」
そう言ってタタ先輩は、さっきの魔法少女達について説明してくれた。
タタ先輩とは違うとある魔法使いの自分勝手な判断で、無理矢理力を与えられて魔法少女になった女の子達の事。
魔法少女は周りの魔力を集めて強くなる事。
「魔力…?」
あのゲームやらアニメに出てくるようなあの魔力?
「ああ、君達2人には魔力が豊富に含まれている」
私達に魔力?
「(私達の妖力の事を言っているようです…)」
葉月ちゃんがこっそり教えてくれた。
タタ先輩が話を続ける。
「その割には強そうな気配が無いからいいカモだと思われて狙われたのだろう」
さりげなくディスられてしまった…
「あっ!別に見下している訳ではない!君達2人が私と同じ魔法使いの類いである事は分かる!あの白熊の汚れ具合が本物そっくりだし流れるような追い剥ぎは美しかったぞ!」
タタ先輩って褒めるの下手なんだね…
ん?魔法使い?
「魔法使いって「はい、そんな所です」
葉月ちゃんに割り込まれた。
そうだね、半分妖怪とか余計な事言うより同じ魔法使いって言った方が怪しまれないよね。危ない危ない。
「そう、何故襲われているのにすぐ助けに行かなかったのか、についてだったな、それは…
君達の追い剥ぎを見るためだ」
???