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第7話 魔法少女の悲劇

「「「…」」」


魔法少女達は一向に喋ってくれない。

「しょうがないですね…」

そう言って黒い提灯を掲げる葉月ちゃん。

すると、周りでウヨウヨしていた黒い二足歩行の行き物が葉月ちゃんに向かって歩き出し、黒い提灯に次々と吸い込まれていった。

空を飛び回っていたでかいカラスも葉月ちゃんに向かって飛んで、あの黒い提灯の中へ。

葉月ちゃんが取り出していたあの黒い硬貨、あれってやっぱり黒メダルだったんだ。てか、私達ってアルバイト感覚であんな恐ろしいメダル作ろうとしてたのか…


こうしてこの場には私と葉月ちゃん、そして魔法少女3人と白熊だけになった。


「さて、何故私達を襲ったのか教えてくれませんか?」


葉月ちゃんが改めて問いかける。その問いかけに1人の魔法少女が答える。赤パーカーの子だ。


「普通じゃなかったからだ。」


…あれ!?それだけ?!

次にピンクドレスの子が答える。


「だって、その辺の猫又より強い魔力…じゃなくて強い妖力を持っていたから…」


え?猫又?魔力?どう言う事?

さらにオレンジ魔道士が答える。


「猫又は妖怪、妖怪は人間を襲う行き物です。だから私達魔法少女は人間の敵である妖怪を退治するんです。と言うか貴方達は妖怪ですよね?私達には分かります。」


まじか…

どうやら魔法少女にとって私達妖怪は敵認識されているようだ…

せっかく魔法少女と友達になれると思ったのに…


「そうですか…ちなみに一体誰が妖怪を敵だと吹き込んだのですか?」

赤パーカーの子が答える。

「大魔法使いだ。私達を魔法少女に変えてくれた人物でもある。そう、私達は大魔法使いに会うまでは普通の人間だった。ある日、私の夢の中に大魔法使いが現れ、この世界を救って欲しいと頼まれたんだ。この世には悪魔、妖怪、悪い魔法使い、悪い人間、この世は悪が蔓延る悪の惑星だと教えられ、その中で私は悪にも靡かず自分の信念を貫く、まさに正義の立場に立つ立派な人間だと、私には特別な力があると言われたんだ。私なら強い力を悪用しないだろうと信頼して特別な力を与えてくれた。その日から私は魔法少女になった。だが、この日本には少ないがそれなりに魔法少女がいる。自分と同じ信念を抱く魔法少女と徒党を組み、自分の縄張りを見張り、時には悪と戦い、時には自分と同じ魔法少女と戦う。そんな私達は最近隣の地域で活動する別グループの魔法少女に負け、縄張りを取られた。そんな私達の前に私達にとって経験値となる魔力を沢山もったお前達が現れた、だからお前達を倒して経験値を稼ぎ、強くなってあいつらに仕返ししようって何で私はこんな事喋っちまってんだよクソが!!」

「ちょっと!?」

「喋りすぎだよ!」

ピンクドレスの子とオレンジ魔道士が焦っている。

てか台詞長い!長すぎるよ!

赤パーカーの子一体どうしてしまったのだろうか…少し様子もおかしかったような気がするし…


「つまり、大魔法使いに唆され魔法少女になり、経験値となる魔力を持つ妖怪を倒して魔力を奪い、その魔力で強くなって他の魔法少女と戦っていると…そう言う事ですね。」

それってつまり…


「私達は貴方達の魔法少女ごっこ遊びに巻き込まれた訳ですね…」


何て傍迷惑な魔法少女なんだ…


「うるさい!貴様らみたいな妖怪に説教される筋合いはない!」

赤パーカーの子が逆切れした。


「私達にカラスの化け物けしかけてきました…」

ピンクドレスの子が魔法の杖を握りしめながらこちらを睨む。

それは君たちが先に攻撃してきたからでしょ…


「そうやって私達を悪者扱いして、この場を有耶無耶にして貴方達は堂々と帰るつもりですね…?」

オレンジ魔道士も私を睨む。

違うよ!てか話を有耶無耶にしたいのはそっちの方じゃないの!?


魔法少女達が怒る中

「(白雪ちゃん、聞こえますか?)」

葉月ちゃんが私の脳内に直接話しかけてきた。葉月ちゃんそんな事もできるの?

「(あの魔法少女達の心を乱すような事は出来ませんか?)」

できるよ!

私は葉月ちゃんに頷くと、両手を広げて意識を集中する。

周りの水分を集め、魔法少女を助ける為に作り出した3つの雪山の雪も引き寄せ、私の手の中に集める。

「気を付けろ!何か来るぞ!?」

「何か集まってます…」

「何あれ…」

魔法少女達は警戒して防御の姿勢を取っている。

私の手の中に雪が集まり、やがて…


1羽の白い鳩ができた


「鳥か…?」

「鳩?」

「何あれ…」

そう、鳩だ。

本来この鳩は私の移動手段の一つになる筈だった。

私は空を飛ぶ事が出来ない。しかし空を飛んでみたかった私は沢山鳩を作り出し、その鳩達に私を空へと運んで貰いたかったのだが、幾ら改良しても私を掴んで空を飛ぶ事は出来なかった。

無駄に本物そっくりな鳩ができただけであった。

こんな無駄な芸がこんな所で役に立つなんてね。

そんな事を考えながらこの鳩を魔法少女に向けて放つ。

次から次へと鳩を作り出しては魔法少女に送る。

「うわっ!何すんだ!!」

文句を言われても構わず鳩を作り続けては魔法少女に送る。やがて、辺りは白い鳩だらけになった。


バサバサバサ…「ポッポー」

「ポッポッポ」バサバサー「ポッポッ」

真夜中の商店街、近隣の住民の睡眠を妨害しないよう注意しながら魔法少女の耳元へと近づいてはわざとらしく鳴く鳩。

バサバサ「うるせーーーー!!」ポッ

ポッポポッポ「魔法に集中出来ません!」

バサ「駄目だ!鳩が重い!」バサバサ

クルックー「これやめさせろ!」バサ

「お荷物お持ちしますね」

「おう、ありがとう」

「落とさないでくださいね?」

「はい、これで全部だよ」

バサバサ「おい!聞こえてるんだろ!?」バサ

ポッポー「これやめて!」ポッポー

バサバサ「何も出来ない!」ポッポポッポ

これくらいでいいかな?

ブワー

周りにいた全ての白い鳩が一瞬で雪に変わり、風に飛ばされて何処かへ去っていった。


「お前…!」

鳩攻撃を喰らい、かなりイラついている魔法少女。

「熊と貴様をまとめて黒焦げにしてやる!」

「いや、私達は善良な市民だよ?」

「妖怪の言葉になんか騙されませんよ?」

「そうです!言い訳せずに大人しくお縄につきなさい!そうしてくれたら貴方は立派な善良な市民だと認めてあげますよ」

「へぇー」

「さあ、第2ラウンドの開始だ!」

「容赦しませんよ?」

「私達の真の力を見て怖気付いても手加減しません」

「あの」

「何だ?言いたい事があるなら言ってみろ、一言くらいなら聞いてやる」

「分かった。あのね…


変身解けてるよ?」


「は?」


「え?」


「ん?」


そう、会話の途中で現れた


「お荷物お持ちしますね」

これは葉月ちゃんが魔法少女に掛けた言葉だ。

私と葉月ちゃんはこの魔法少女3人に敵だと認識され争い合っていた筈なのに、何故かこの3人は

「おう、ありがとう」

「落とさないでくださいね?」

「はい、これで全部だよ」

自分が持っていた荷物をすべて敵である葉月ちゃんに渡してしまったのだ。

魔法の杖、帽子、財布、スマホ、そして…


魔法少女3人が胸辺りに着けていた可愛いブローチのような物を外し、葉月ちゃんへ手渡した瞬間。


魔法少女の姿が一瞬で変わる


赤パーカーの子は黒いTシャツに黒いジャージのズボンに裸足


ピンクドレスの子は白地に青い水玉が入ったパジャマ、青い靴下屋を履いている


オレンジ魔道士は桃色と白のシマシマのふわふわでモコモコしたパジャマにスリッパ


そう、これは…


明らかに魔法少女の変身が解けていたのだった。


「「「!?!?!?」」」


驚く元魔法少女3人組。

私の隣で赤、ピンク、オレンジの可愛いブローチと3つの財布と3つのスマホを持ってニコニコ笑っている葉月ちゃん。

どうやら変身が解けた瞬間に魔法の杖やら帽子やらは消えてしまったようだ。


確か葉月ちゃんは狐の半妖だった筈。つまり…

魔法少女3人は葉月ちゃんに化かされたって事?

もしかして、あの赤パーカーの子の長話も葉月ちゃんの仕業だったりするのかな?


そんな葉月ちゃんが私に一言。


「白雪ちゃんのお陰で上手に出来ました♪」


葉月ちゃん、恐ろしい子…!

葉月ちゃんが味方で本当に良かった…

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