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第5話 葉月ちゃんと材料集め

「とりあえず道なりに進んで下さい」


葉月さんの指示に従い白熊を走らせる。

明かりが1つも無く暗くて不気味な道路。周りは草葉が生い茂っている。どうやらここは田舎道のようだ。

そんな田舎道を走っていると後ろに居る葉月さんが声を掛けて来た。


「これから私達はとある小さな商店街に向かいます。」

「うん」

「とりあえず目的地に到着したら黒メダルの材料の集め方について説明しますね?」

「分かった!」

目的地に向かう間、私は白熊を走らせるだけ。

その間は物凄く暇だったので私達は無駄話をしていた。


「へぇ、あの半妖倶楽部は花子さんが白雪ちゃんの為に作った部活だったんですね?」

「そうそう、葉月ちゃん含む皆んなを私の倶楽部ごっこに付き合わせる形になっちゃってね…」

「でも、そのお陰で小学校の設備は24時間使い放題、しかもこうして私達は知り合えたんですしいい事尽くめじゃないですか」

「葉月ちゃんありがとう…」

葉月ちゃんと私はほぼ同い年、同じ学年だったのでとても話しやすかった。

いつの間にかお互いの苗字をちゃん付けで呼び合う程度には仲良くなっていた。


「それにしてもこの白熊さん、二人乗りまで出来る上にこんなに速く走れるなんて凄いですね!」

「でしょ!こんな事も出来るよ!」

私が白熊の頭をポンポンと軽く叩く。


「グ オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」


白熊が咆哮しながら真っ白な雪のブレスを広範囲に吐き出す。目の前が真っ白だ。

その白い煙の中に突っ込む白熊。


「あはははは!」


「うふふふふ!」


雪だらけになりながら笑い合う私達。

物凄く楽しい。こうしてバカみたいな事しているこの時間が一番楽しい。それは後ろの葉月ちゃんも同じらしく

「白雪ちゃんとアルバイトに付いて行って本当に良かったです」

と言ってくれたのだ。

こんな嬉しい事を言われてさらに調子に乗った私は

「もっといいもの見せてあげる!」

そう言って私は辺りを見回す。

あった!

辺りには広葉樹らしき木が沢山生えている。その中に一本だけ、すっかり枯れ果てた木が生えていたのだ。これは丁度いい!

白熊をその枯れ木の近くに近づけて止める。

「何をするんですか?」

「見てれば分かるよ」

そう言うと私は目の前の枯れ木を指差して


「枯れ木に花を、咲かせましょう!」


「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」


私の合図と共にあの白いブレスを枯れ木に向かって吐き出す


すると


枯れ木の枝がポツポツと白くなる。それはムクムクと膨らんでゆき、花の形へと変わっていった。


「素敵…」


さっきまで枯れていた木は、真っ白な雪の花で埋め尽くされ、周りのどの木よりも豪華に、派手やかになっていた。


「白雪ちゃんは素敵な力を持っているんですね」


「そうかな?でも葉月ちゃんがそう言ってくれるなら、きっと私が思っている以上に素敵な力なのかもしれないね!」


「ええ、どんな事だって出来そうです…」


満開の雪の花が咲いた木を2人で眺める。

私が半分妖怪で良かったと思えるのも

自分の力が素敵だと思えるようになったのも

私の存在を真剣に、時に優しく向き合ってくれたお父さんやお母さん、そして花子ちゃんの特訓のお陰だ。

まだ見ぬ敵に怯え、情け無く泣き続ける私に自信と希望をくれた。

私は花子ちゃんの特訓を思い出す。


「ほら!もっと速く走らないと水の底に沈むわよ!」

「木はこうやって倒すのよ!」

「お菓子作りをしましょう!」

「このままじゃ熊に食われるわよ?」

「この川を全部凍らせるのよ!」

「カルタで遊ぶわよ!」


碌な思い出が無い。

まあ、どの特訓も楽しかったには楽しかったけど…一部を除いて


と言うかこの場に居ない筈の花子ちゃんの声がやけに鮮明に聞こえてくるような…


「…なさーい、応答しなさーい、2人とも今何処にいるの?」


幻聴じゃ無かった。

よく見るとカエルの腕輪から花子ちゃんの声が聞こえてくる。


「もう黒メダルの材料集めてる?」


「あ!!」

「すっかり忘れてました…」


「もう、早くしないと黒メダルの材料回収出来なくなるわよ?」


「やばい!急ぐよ葉月ちゃん!」

「分かりました」


再び白熊を走らせて、目的地へと急いだのであった。



白熊を走らせ、辿り着いた先は少し寂れた商店街だった。

今は真夜中なので何処のお店も開いていない。

「静かだね〜」

「街を歩いている人間は1人も居ないみたいですね」

白熊は商店街の近くにあった公園に置き、私達2人で商店街の歩道を歩いていた。


「さて、黒メダルの材料についてですが…地面にへばり付いているこの黒いものがそうです」

「これが負の感情?」

私達が歩く歩道、その目の前に水溜りのように広がる黒い汚れのようなものが見えた。

「へー、こんなの初めて見たかも」

「こんな風に負の感情が溜まるのは真夜中だけですからね、朝になれば自然に消えますし。」

「成る程〜」

「で、この黒い物の回収方法ですが…これを使います。」

そう言うと葉月ちゃんば腰に提げている黒い提灯を1つ取り出し、その提灯を黒い汚れに向かって掲げる。すると…


黒い汚れから煙のようなものが出て、葉月ちゃんが掲げる黒い提灯へと吸い込まれていく。1分もしない内に黒い汚れを全て吸い尽くした。

「これで終わり?」

「はい、これで回収完了です。」

以外とあっさり終わった!

こんな事で一万円が手に入るなんて、何て簡単なアルバイトなんだ!

「ちなみに黒メダルは一週間で何枚作れるの?」


「真面目に集めれば一ヶ月で約1枚できます」


「え?」


「ちなみ今溜まった負の感情は約50円です。」


「」


さっき溜まっていた負の感情ってそれなりの量があった筈だよね。それがたった50円とは…

前言撤回。

これ、そんなに簡単なアルバイトじゃ無かった…


「まあ、これは本業では無く夜の散歩のオマケでやるようなものですし、タダ同然のものをお金で買い取ってくれるんです。中々いいアルバイトだと思いますよ?」

成る程、このアルバイトはオマケ程度に考えとけばいいのか。それなら気も楽だ。

一ヶ月のお小遣いが1万円増えるって考えれば悪くないかも。

「よし!とりあえず今日は真面目に集めてみるよ!」

「頑張って下さい、応援しますよ」

そう言うと葉月ちゃんと一緒に夜の商店街を再び歩き出した。


あれから1時間後、歩き回って見つけた黒い汚れ、つまり負の感情は最初に見つけた分も合わせて3つしか発見できなかった。

もう商店街は全て歩き尽くした。


「まあ、負の感情が沢山見つかっても逆に心配になるだけだよね。」

「そうですね、むしろこの商店街には汚れが3つしか無くて良かったです。」


そんな話をしながら白熊を待たせている公園へと向かう私達。すると…


葉月ちゃんの動きが突然止まる。

何故か険しい表情をしている。


「どうしたの?」


そう声を掛けた瞬間だった


ボン!!!


約3m先の地面が突然燃え上がる


目の前でゴウゴウと音を出して燃え続ける炎


「上です」


葉月ちゃんの声を聞き私は上を向く

なんとそこには


箒のようなものに座って空に浮いている3人の女の子がいた


赤いパーカーを着てジーパンを履いた女の子


可愛いピンクのドレスを身に纏う女の子


オレンジ色の魔法使いみたいな格好をした女の子


間違いない


私が憧れる


あの


魔法少女が


3人揃って怒りの形相を浮かべ


可愛い杖を握り、その杖の先を私達に向けていた


「あんた達、この町に一体何をするつもりだ。」


「この町を汚す者は全て私達が排除します!」


「大人しくしなさい、もし動いたら次は当てます。」


あれ?もしかして私達…


敵になってる!?

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