第0話 始まり
私の名前は白雪幸。
地球生まれの日本育ち。人間と雪女のハーフ、つまり半妖だ。
自身が雪女の半妖であり普通の人間とは違うと気づいたのは小学生一年生の頃だった。お昼の給食のに出てきたデザートのゼリーを凍らせて食べようとした時
「!!、ユキちゃんそのゼリーどうなってるの!?」
「えっ?」
「ミカさん、どうしたんですか?」
「先生!ユキちゃんのゼリーが氷みたいに固くなって食べられなくなってます!」
「氷?」
私はデザートのゼリーを凍らせ過ぎた。ゼリーがカチカチに固まってしまい食べられずに困っていた所、隣の席の友達であるミカちゃんがどうしたの?と声を掛け、私のデザートに起こった異常事態を見て驚きの声を上げたのだ。
先生は1つだけハズレがあったのだろうと結論づけ、先生のゼリーと交換してもらい今回の事件は何事も無く幕を閉じた。
家に帰り夕食の時間、それとなくお父さんとお母さんに氷過ぎたゼリーの話をしたらお父さんは
「そうか…ユキはお母さんの子どもだもんな、使えるようになって当たり前だよな」
と言い、お母さんは
「そうだったの、じゃあ今度は失敗しないようにお母さんと練習しましょう。それから、その凍らせる力は私たち家族だけの秘密にしましょう?ね?」
と言われ、始めて自分は他の人間とは違う存在だったのだと気づいたのだった。
それから私は雪女と妖怪について母から色々学んだ。
力の制御だけではなく
雪女は人間よりも弱く脆い事、
妖怪だと気付かれたら退治されてしまう事、
特別な力には変なものが寄り付き、友達にも危害が加えられてしまうかもしれないという事、
とにかく色々教えられた。(当時の事を振り返ると、やはり小学生低学年に聞かせる話では無いのでは?と疑問に思う時はあったが…)
命やら何かと重い話であり、私の力のせいで友達が酷い目に遭うかもしれないと気付く。能天気で魔法少女に憧れ、まるで魔法使いみたい!と最初は軽く見ていた私だったが、あまりにも異常な力による責任が大き過ぎて怖くなった私はついに泣き出してしまった。
ようやく泣き止んだ私は
「友達もお父さんもお母さんも守れるくらい強くなりたい…そしたらみんなとずっと一緒にいられるもん…」
と、まだ現実を受け止め切れない私はその言葉の意味を深く理解しないまま苦し紛れにそう呟いた。
呟いてしまったのだ。
「よくぞ言ってくれたわね!じゃあ強くなってみる?」
「え?」
「変な奴が手出しできなくなるくらいの超強い力手に入れて自分の平和な世界を守る決心がついたのね!やったじゃないの!お父さんとお母さんも喜ぶわよ!」
いや、あの
誰?
お父さんとお母さんと私しかいないリビング
食事の時に使う大きめのテーブルの椅子に腰掛けている私を
テーブルの上から
土足で
私を見下ろすこのなぞのおかっぱ黒セーラー服の女性は誰なんだ?
「あら、花子ちゃんじゃないの。久しぶりね」
お母さん知り合いなの?!
「10年前から相変わらず元気だねぇ」
お父さんまで!!?
この変な奴と知り合いなの!?
「さあ、そうと決まったら善は急げって奴よね!今日から私が猛特訓であなたを最強の雪女に変えてあげる!付いて来なさい!!」
そう言うとその花子って言われた黒いセーラー服着た女性はテーブルの上からひょいと私を持ち上げて小脇に抱えた
「!?!?」
小脇に抱えられ、あまりの急展開に目を白黒させている間に花子はテーブルから飛び降りベランダへと(ものすごい速さで)向かっていく
「あまり無茶しすぎるなよ〜」
「頑張ってね、お母さん応援してるからね」
「」
マジか…
両親は完璧に花子って人を信用していた…
そんな両親の言葉を聞きながら花子はベランダの扉を開け、両親の方へと向き直ると
「大丈夫…ユキちゃんは私が立派な氷マスターに変えて見せるから…」
とキメ顔で言い放つ
「さっき最強の雪女って言ってなかっああああああ!!!!」
花子はようやく出た私の台詞を無視してベランダから満天の星空が輝く空へと思いっきり飛び出していた
飛んでる!私空飛んでる!小脇に抱えられているけど!
「朝の6時になったら返しにいくからね〜」
まさかこれ毎回やるの!?しかもさっき朝6時って言ってなかった!?いや私お父さんと違って一日中起きてても大丈夫だけども!!
てか律儀に返しに来るの!?
こうして私と花子の地獄のような特訓が始まったのであった…
そして
時はあっという間に流れて約9年後…
「ねえ、花子ちゃん。最初に出会った時みたいに小脇に抱えて空飛んでくれない?」
「ユキちゃん、あんた来年から高校生でしょ?何言ってるの?」
私ことユキは自称最強の師匠、花子に鍛えられそれなりに最強の雪女に成長していたのであった…
「それ自分で言うの?まあそれなりに最強になったのは否定しないけども」