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君と言葉の数

作者: 稲平 霜

とても短いですが暇つぶしにでもなればと書きました。

良ければ読んでいってください。


それではどうぞ....。

僕は一体なんでこんな所にいるのだろう....


自分の背後に聳え立つ城。

視線の先には城門と言えるような城下町を囲む城壁が門になっている。

城は西洋でヨーロッパ地域でよく見るような豪華なつくりだ。


突如後ろから声をかけられる。

「どこここ!?面白そう!!」

馴染みのある甲高い声は僕の幼なじみ、かんなだ。

続けてかんなが同意を求めてきた。

「ね!とうや!!」

その言葉に僕はただ立ち尽くすしかなかった。


ーーーーーー


僕は学校に行く必要がないと自分でそう思っている。

なぜなら、学校が楽しくないからだ、と言っても僕はそもそも他の人と関わりがない。

ベッドに寝転んでこんな事を考えるのも何度目だろうか。

ゆっくり意識が遠のいていく。


鳥の囀りが目覚ましのように僕は目を覚ました。

今日が始まった事で憂鬱だが、将来生活して行くためには必要な道だと分かっているのだが、やはり面倒な事には変わりない。


冴えない動作で家を出た。

すると家の門の前には幼なじみのかんながいた。かんながいるのを再確認し挨拶をする。

「おはよう...」

「おはよ!と!う!やっ!」

「なんでそんなに張り切れるんだ?」

「だって元気だしてた方が楽しいじゃない!?」

元気なさげな僕の挨拶を掻き消すようにかんなが挨拶をした。

かんなの挨拶が終わると僕は疑問をぶつけたが、かんなからは最もと言える答えが帰ってきた。


朝の交流が終わり、学校へと歩き出す...とそこは見慣れない所だった。

噴水、馬車、城、西洋の街並みが視界を支配している。

明らかにおかしい。さっきまで道路を歩いていたはず。


どうやら、僕は“異世界”に来てしまったようだ。


自分でも驚く位に理解出来た。

看板などの文字は日本語じゃないのに読めるし、話す言葉も理解できないものでは無い。


そして後ろから声がする。

「どこ?ここ...」

いつもとおかしい様子になったかんなが小さい声で言った。

さすがに不安なのだろうか、僕は少し心配の声をかけようとした。

「かんな....大じょ...」

「面白そう!!」

僕が「大丈夫か?」と心配するのは無駄だったようだ。


「おやおや、新婚旅行か何かですか?」

気落ちしている僕に話しかけてきたのは立派な顎髭を伸ばした老人だった。

「ち、違いますよ!」

僕は少々おどけて笑顔を作って答えた。

すると老人は

「所でお主らどの“世界”から迷い込んできた」

小声かつ核心を突くように言った。

「な、何を仰っているのですか?」

僕は震え混じりに普段まともに使わない謙譲語を使った。

想像以上にその場に緊張が走る。


そして次の瞬間予想外の事が起きた。


「「「ようこそ!発展途上の世界へ!!」」」

街の歩行人、店の店員、城の音楽隊が一斉に声を上げた。

露店を出している人が赤色の果実、橙色の野菜などを紙袋に入れて「ようこそ!」と言わんばかりに渡してきた。

僕はそれににこやかに応えるも他の歓声に掻き消された。

次々と物を貰っていく内に僕は笑顔が苦笑いに変わっていく。

そしてようやく街の人々からのおもてなしが終わると宿屋の主人が

「疲れただろう?私の宿に無料で泊まらせてあげるよ!」

無償で泊まらせてくれるとにこやかに言った。

僕はその言葉に甘えて宿の1番状態が良い部屋に案内された。


「はぁー、ようやくひと息つけるー」

僕はベッドに寝っ転がりため息混じりに言った。

「所でさっきから放心状態のかんなさーん、そろそろ正気に戻ったらどうですかー?」

僕が気だるげに呼びかけるとかんなが「ハッ...!」となって正気に戻った。

「なんだかとても歓迎されてたね!」

かんなが元気よくその場の雰囲気のそのままを述べた。


僕は何を貰ったのか持ち物を整理することにした。

果物は赤色なのにみかんの形状をしているものだったり、レタスの形で橙色の野菜や、不思議な物が多く貰っていた。

さらに見ていくと布で包まれた物があった。

布を開いていくとこの世界特優と言える様な衣服も幾らか貰っていた。

制服の様な物は上級貴族、または天貴族などしか着ることが許されていないらしく、宿屋で着替える事を教えられていた事を思い出して、僕はその場で着替え出すと、

「なに服脱いでるの!?」

「あ、いるの忘れてた」

かんなが驚き慌てふためきながら言った。

僕は無表情で答えた後に再び着替え出した。

「待っ...!向こう向いてるよ!」

僕はかんなの言葉を無視してそのまま着替えた。

サイズ感は少しぶかっとしていて、動きやすい素材だった。

着替え終わって

「かんなも着替えるか?」

僕は服を布に包んだままかんなに差し出すと

「じゃあ、着替えるね!あ、こっち見ないでね?」

「見ないよ、興味ないから」

「ちょっと酷くない!?」

かんなのツッコミを最後に着替え出した。

布の擦れる音が終わると声がかかった。

「着替えたよ!」

「おう」

「.....感想は?」

前屈みになり感想を求めてきた。

僕はにこやかに

「うん、いいね!」

「下手か!?」

その感想にかんなはキャラ崩壊を起こすくらいのツッコミを入れた。


しかし、なんだっていきなりこんな所に...

僕はため息混じりに呟きながら窓の外を見やる。


僕は異変に気づいた。


街の人が全て僕達のいる“宿屋”のみに群がっていることに。

そして、今一度自分の来ている服の左肩を見ると、何かの文様が描かれていた。「僕はこれを見た事がある?」と唐突に思う。

そして部屋のあらゆる所に肩と同じ文様が刻まれているのに気づいた。

その文様は山羊に似ていた。

そして僕はある本の内容を思い出す。


その本の内容は“古代に行われていた儀式”というものだ。あの時は特にすることも無く何となく手に取ってパラパラっと捲ってたまたま見たページが山羊に関する記事だった。

書いていた事は“山羊の模様は生贄を捧げる時に用いられる”と...。


咄嗟に後ろを見た。僕は目を疑う。

「かんなが....いない....」

音もなく消え去った。

僕は急いで宿屋のドアを開けようとすると、既に出られなくなっていた。

その状況に僕は混乱しドアを何度も肩をぶつけながら、

「大体!異世界は!何か能力を!得られるものなんじゃ!ないのかよっ!」

いつもの気だるげさを無くし、ただもがきながら文句を叫んだ。


いつの間にか空間が変わりドアだけが存在している。

「全く、愚かよのう」

気だるげに肘を着いて僕を見ている影が見える。影は何かと口を挟んでくる。

「クソっ!クソっ!」

「野蛮でしょうがないやつじゃ」

「さっきからうるせぇ!」

「もう諦めろ」

「諦めてたまるか!」

「諦めろ。」

諦めろと告げる声は冷徹で僕の動きを一瞬にして止めた。

「お前はもう“あの世”にいない」

「.......」

「お前のもう一人の人間はまだ“あの世”におるがな...」


名前を出さなくとも僕はあの世界に取り残された人を知っている。かんなだと。

僕は助けなければならないと、謎の正義感に駆られる。

「僕はどうすればいい?」

「残念だがお前の答えを私は知らん」

「少しも?」

「少しも」

僕は自然に発した「じゃあ」という言葉に続けて声を乗せた。

「ここから出させて貰う」

「不可能だ。第一お前は死んでいる。生き物が生き返ることは全ての生き物の最大の禁忌だ。例え生き返れたとしてもお前の体は腐っていくだけだろう」

「それでも僕は.....やるんだ」

僕の覚悟を決めた言葉は本物だ。

きっと生まれて初めて本気で動くのはこれで最後だろう。


僕は息を深く吸って次の瞬間何も無い空気中を殴り始めた。

まず一撃。僕の右手の崩壊が進む。

続いて二撃。僕の突き出した左手が悲鳴をあげながら皮がベリベリと剥がれていく。

三撃目。既に拳が崩壊した右腕をさらに壊す。

四撃目。左手が肘まで無くなる。

五撃目。両腕の代わりに頭でこの空間を“割った”。

空間は無音であって無音でないような音をたてて、崩壊を始める。

同時に僕の体も。


ーーーーーーー


目を覚ますと宿屋だった。

戻ってこれた事に安堵を覚えた。

それと同時に不安が込み上げてくる。

かんなはもちろん居ないのだ。

僕は開かないドアに触れると崩壊が始まった。

一瞬でドアは光に包まれ、触れた部分から端の方へ。

僕は自分の手を見た。

「.....なんだ。.....僕は人じゃないのか....」

僕の一言で世界が光り出す。

「お願いだ」

初めてのこの感覚は優越感、違う。

嫉妬、違う。悲しみ、違う。正義感、違う。怒り、違う。喜び、違う。責任感、違う。苦しみ、違う。妬み、違う。

自己犠牲、違う。

僕はかんな、“檻鳴(かんな)”にただひっそりと憑いていた“燈八(とうや)”に変わりない。

僕は知っている。彼女の苦しみも。カノジョの嫉妬も。彼ジョノ痛みも。彼女の悲しみモ。

全ては僕がミテキたに過ぎない。

僕は、いや俺は、いや僕は、いや“君”はこの世界の写鏡だ。


この世界が全てひび割れていく。

ピシッ!ミシミシミシ...!パリッ!

全てが割れると空気中に鏡の破片が視界から無くなってくれない。

全ての鏡が僕を写す。

「この世界は僕がこうありたかったと、願望の世界だ」

空気中に漂った破片も全て消え去った。

ただ一枚破片が残っていた。

「違う。焦らなくていいよ。私は平気だから。この世界は君だけなんかじゃないよ。私が...付いてるから」

この声は聞き慣れていて、また僕の心を揺さぶった。

「なんだよ、それ」

僕しかいない空間で人知れず輪郭を描いた。




ふと、誰かが微笑んだ。


ーーーーーーーー


ネクタイを結ぶ音。

パンが焼き上がる音。

コップに飲み物を注がれる音。

「行ってきます」

.......


数秒経って「行ってらっしゃい」

人知れず声がした。



どうだったでしょうか。

自暴自棄になって行く主人公を想像していたのですが伝わりましたか?

伝わっていたら嬉しいです。

良ければ次の作品も読んでいってくれたら嬉しいです。

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