山龍討伐二日目(3)
異世界で出会った山龍は、前世で創作物に描かれる『龍』とだいぶ似ていた。
というか、姿形はライアに初めて出会った時の姿そのままだった。
元々ライアは、形を持たない曖昧な存在らしく、自分と出会ったときはたまたま森にいた山龍の姿形をコピーした形をとっていたからで、「ライアが実は山龍だった」ということでは無いらしい。
全長は5メートルほどだろうか。
ライアよりも体はひと回り大きく感じるけれど、ライアに出会った時の存在感やプレッシャーは感じない。
「いいですか〜、チシロさん〜。
あれぐらいの大きさの山龍なら大した力はありません〜。
私一人で倒します〜」
「だからチシロさんたちは後ろで見ているんだぞ☆
大丈夫だぞ☆ すぐに終わるんだぞ☆」
そういってクロヒメさんは一歩下がり、シロヒメさんは一歩前に出る。
本当にシロヒメさん一人で討伐してしまうつもりらしい。
「チシロさま、サポートブックで調べたところ、『極小型』の山龍を討伐できる目安として、『Aランク冒険者10人のパーティーで挑んだ場合の討伐成功率が50%』というのが相場になるそうです」
「え、山龍ってそんなに強いの? ん? っていうかそもそも、『Aランク冒険者』はどのぐらいの実力なの?」
「はい。
Aランク冒険者になれる基準は、『Aランククエストを安定して攻略できる』ことらしいです」
「うむ。 マテラよ、それでは『Aランククエスト』についての説明は乗っておらぬのか?」
「そうですね、『Aランククエスト』というのは『Aランク以上のモンスター討伐を含むクエスト』のようです」
「ちなみに、アタシとシロ姉は『SSランク冒険者』の資格を持っているんだぞ☆
特にシロ姉は『SSランクの中でも上位に入る』ってよく言われているんだぞ☆」
ちなみに、制度として『SSランク』以上の資格は存在しないらしい。
『冒険者ランク』については、「試験に合格したら資格がもらえる」ような感じのシステムになっているらしく、実力はあっても「面倒だから」「必要ないから」などの理由で資格を取得していない強者も大勢いるので、ランクだけを見ただけで実力を判断するのは早計だとか。
なんか、イメージしてた異世界と違うような・・・。
そんなことをのんびり話しながら眺めている間にも、シロヒメさんは無防備に山龍に近づいて行く。
山龍の方も近づいてくるシロヒメさんに気がついたようで、体をバネのように伸ばし、口を開いて牙を突き立てるように勢いよく飛びかかった。
全長5メートル、重量は100キログラムを超える(らしい)山龍が結構な速度で向かってくるが、シロヒメさんが片手を突き出し、軽く押さえつけるだけで突進の勢いは完全に消え、そのまま軽く手刀を振ると、山龍は綺麗な断面を見せて真っ二つになってしまった。
左右に両断された山龍はそのまま地面に落ちると体のほとんどが土に戻り、残ったのは二つの土の小山とビー玉のような綺麗な宝石が一つだけだった。
「ま〜、ざっとこんなもんです〜。
龍玉がドロップしたので、預かっといてください〜」
「ドロップ品の報酬は最後にみんなで山分けにするんだぞ☆
それよりもチシロさん! 次の山龍の場所に案内するんだぞ☆」
「チシロさま、ここから近い位置に山龍が5体ほど密集している場所があります。
次はそこに向かいましょう」
この調子で双子に任せておけば、大丈夫そうかな。
まあ念のため、双子が怪我をした時のために回復魔法をいつでも使えるように準備はしておこう。




