山龍討伐二日目(2)
白黒姉妹から受け取った地図は、広げて見るだけで山の様子を立体的に見ることができるだけでなく、現在地表示やズームイン、ズームアウトも簡単にできる優れものだった。
『赤き農民』が管理している地図で、本来は機密情報の為、ギルドの中でも上層部のものにしか解禁されないもので、今は緊急事態だから貸し出しされているが、仕事が終わったら返却する契約になっている。
地図をよく見ると、自分たちの位置を示すようなマーカーの他に、何箇所に赤い点が表示されている。
「山龍のいる場所が、地図上に表示されているらしいです〜」
「戦闘は私たちに任せるんだぞ☆ チシロは付いてくるだけで大丈夫だぞ☆」
「いえいえ、そんな。 自分たちも手伝いますよ」
「チシロさまの言うとおりです! お荷物になるつもりはありません!」
「うむ。 山龍程度に遅れをとるほど軟弱ではない。
チシロとマテラの言う通り我らに遠慮は無用である!」
ライアとマテラはやる気満々のようで、お荷物扱いに不満なようだ。
まあ、自分に限って言えば戦闘力は皆無なわけで、「手伝いますよ」と言ったのも、地図見たり、索敵したりぐらいをイメージしていたんだけどね。
「確かに〜、普通の山龍なら危険は少ないのです。 ですが〜、そうとも言えない事情がいくつかありまして〜・・・」
「赤き農民が、この山のいたるところに魔獣を放し飼いにしているんだぞ☆
ちなみにこれは、本来違法なことなんだぞ☆」
「そういうわけです〜。 それに〜、異常発生した山龍は通常よりも強化されている可能性もありますし〜、」
「それに、厄介な術を使うハンターも森に・・・あ。 これは言っちゃいけないことだったんだぞ☆
聞かなかったことにして欲しいんだぞ☆」
マテラとライアは『危険が多いからこそ手伝いたい』と言いたげな顔をしていたけれど、白黒姉妹が「だからこそ、私たちに何かがあった時に助ける要員として見守っていてください〜」「そうだぞ☆ お荷物っていうわけじゃないんだぞ☆」と言っていたのにも一理あると感じたのか、渋々ながら後方で待機することにした。
と言うか、それでも納得はしていないようだったので、一言「いざとなったときは、頼りにしてるよ!」と言っておいたら「ま、いざとなったら私たちがいますからね」「うむ。 確かに真のツワモノは牙を隠すものだの!」と、納得してくれた。
ちょろい・・・。
代わりというわけではないけれど、白黒姉妹が持ち歩こうとしていた巨大なリュックサックはフードの中にしまって運ぶことにした。
大量の荷物が消えた瞬間は流石の白黒姉妹も一瞬うろたえたけど、マテラかライアに言えば簡単に出し入れできると説明すると、「ついでにこれも運んでよ〜」などといった感じで部屋から大量の荷物を持ってきた。
さすがに、高価な物や重要な物は自分達で持ち歩いているようだけど、それでもこちらを信じて荷物を預けてくれるということは、あるていど信頼されているということなのだろう。 ありがたいことだ。
それにしても、「『どうやって運んでいるのか』とか『どこにしまっているのか』とかが気にならないか」と聞いたところ、姉妹の答えは「まあ、さっぱりわかんないけど、『妖精ならなんでもあり』だよね」とのことだった。
『妖精』という存在が便利すぎる。 というか、多分だけどマテラもライアも本物の妖精ではないんだよね・・・。
いや、妖精の定義を知らないからなんとも言えないのだけど、案外マテラやライアのような「よくわからない存在」のことを「妖精」と呼ぶのかもしれない。
結局、白黒姉妹の荷物の選別と運び込みに一時間ほどかかったあたりで『赤き農民』のギルドマスターから「はよ出発しろ!」とせかされて、追い出されるように拠点をでて、早速一番近い山龍のいるポイントに向かうことにする。
ちなみに、最初に確認した時よりも赤い点の数は増えていて、こうして歩いているうちにもまたポツポツと増えている。
「チシロさま、もうじき、山龍のいるポイントです!」
「あ、ほんとだ! シロヒメさん! シロヒメさんから見て右方向によくわからない生き物がいます!」
「え〜? どこ〜? ・・・あ! ほんとだ〜、山龍です〜」




