山龍討伐二日目(1)
朝起きて、ベッドの上でボーッとしていたら部屋の扉をノックする音が聞こえる。
ベッドから起き上がり、扉の鍵を開けようかと思うとマテラが「チシロさま、私が開けます」と言って、扉の鍵が魔術のような力で開き、そのまま扉自体もスーッと開いた。
自動ドアかよ。
「おはようございます〜、チシロさん〜」
「もう食堂・・・開い・・・んだぞ☆ 一緒に・・・食べ・ん・・ぞ☆」
「すいません〜、うちのクロは、エンジンがかかるまで時間がかかるんです〜。
ということで〜、よかったら一緒に食事をとりませんか〜?」
扉をノックしたのは白黒姉妹だった。
シロヒメさんはいつも通りだけど、クロヒメさんはなんか眠そうというか覇気がないというか。
目はショボショボしているし、話し方も語尾以外はなんかゴニョゴニョしてる。
シロヒメさんが言うには、たいてい朝食をとっているうちに目が覚めてくるらしいし、緊急事態が起きた場合なども瞬時に覚醒するらしい。
姉妹に誘われるまま食堂に向かうと、日が出てからまだ間もないにもかかわらず、すでにほぼ満席の状態だった。
朝食としてパンのようなものと、コーヒーのような飲み物を三人分受け取ると、白黒姉妹が確保した食堂の隅のテーブルで簡単に朝食をとることにする。
「そういえば、今日から山龍の討伐を始めるんですよね。
あとどれぐらいで出発するかって、聞いてますか?」
「そうですね〜。 もうじき〜、第一次の探索隊から連絡がきます〜。
私たちの出発は〜彼らの話を聞いてから。 ということになります〜」
「そう・・・だぞ☆
山・・・広い・・・、情報・・・ぞ☆
・・・・・ぞ☆
モグモグ、ズズー、ごくん。
ということで、情報が来るまでは待機なんだぞ☆」
うん。
「ということで」と言われても、どういうことでなのかさっぱりわからん。
シロヒメさんの通訳してくれた情報を総合すると、「山龍の数や場所は、まずは探索隊の人たちが探し出し、その情報をもとに討伐隊が討伐する」ことになるらしい。
このあたりの山々は、この世界の4割を占めると言っても過言ではないほど広大で、いくら山龍が巨大で、しかも大量発生していると言っても手当たり次第に探すのでは無理がある。
そのため、探索魔法などを得意とした探索隊を編成し、山龍の探索と討伐の役割分担をすることにしたらしい。
一度討伐に出かけたら少なくとも三日間は拠点に戻らないらしいから、準備はしっかりしておくようにとのことだが、準備も何も、荷物は全てフードの中に入っているから、特に用意するものもない。
とりあえず、今のところは役に立ちそうな魔法陣を数枚と、魔水の入った小瓶をいくつかフードの中から取り出して、いつでも発動できるようにはしておいた。
まあ、戦闘の役に立たないことはわかっているけど、念のために。 ね。
そんな感じで朝食をとり、食後の時間をのんびり過ごしていると、シロヒメさんのステータスカードに連絡が入る。
「チシロさん、早速探索隊の人達が山龍を発見したようです〜。
討伐隊の方々とは〜、お昼頃に合流することになっています〜」
「と、いうことで、私たちだけで先に討伐に向かうんだぞ☆
チシロ、準備はいいか? 早速出発するんだぞ☆」