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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第零章

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山龍討伐一日目(17)

「それではみなさん、会議室に案内しますので、ついてきてください」

 双子姉妹が村に入ってから数分後、村から出てきた案内人についていくと、大きな建物の中にあるわりと大きめな部屋に案内された。

 部屋の中を見渡すと、3人がけの長机がざっと20以上並んでおり、机の上にはパンフレットのようなものが置いてある。

 この部屋を使って『探索ギルド』の人たちと一緒に「仕事の説明」を受けることになったらしい。

 職員の人は「それでは、しばらく掛けてお待ちください」と言って即座に退室してしまい、探索ギルドの人たちもささっと椅子に座って資料を読み始めてしまった。


「ごめんなさい〜、チシロさん。

 説明が足りなかったようでして〜・・・」

「チシロさんも『探索ギルド』の一員だと勘違いされてしまったんだぞ☆

 ほんとすまないと思ってるんだぞ☆」

 状況がうまく読み込めないのでとりあえず座って待っていると、双子姉妹が戻ってきた。

 二人が「一緒に連れてきた人もいる」と説明したら、早とちりされてしまったらしい。

 まあ、こんな口調だけど本当に申し訳なく思っているように見えるし、任せきりにしてしまったこちらにも落ち度はあるので責めるのはやめておこう。

 それにしても、帰り道を聞きそびれたのは痛いなぁ・・・。


 仕方がないのでしばらく座って資料を流し読みしながら待っていると、5人ぐらいの人が壇上に登って、そのうちの一人が説明を始めた。

「え〜、まずは、よく集まってくれた。

 俺は『赤き農民』ギルドマスターのディーノだ。

 これから、情報共有と今後の方針について話し合いをする。

 今着いたばかりの『赤い羅針盤(探索ギルド)』もいることだし、まずは前提条件からもう一度共有しようと思う。 おい、始めろ!」

「へい! 了解です、親方!

 それではみなさん、これから現状の説明を始めやす!

 わかってらっしゃることもあるかと思いやすが、再確認の意味も込めてちゃんと聞いてくださるとありがてぇです。

 まずはこちらの資料を・・・・」


(あれ、チシロさま。 確か、『山龍討伐』のクエストの発行元も『赤き農民』って名前のギルドだった気がするのですが・・・)

 マテラが耳元で囁きかけてくる。

 ちなみに、マテラとライアはフードの中で休憩中らしい。

 フードの中にいても、外の様子がわかるようだ。


(うむ? なんじゃ、二人の知り合いでもおったのか?)

(いや、知り合いというほどのものではないんだけど・・・)


 言われてみれば、『赤き農民』のホームで自分達を出迎えてくれた人のような気もするんだけど、なにせ基本的な交渉ごとはアウラとガストフさんに任せていたので、なんとも言えない。

 向こうも多分、こちらには気づいていないだろう。


(それにしても『赤き農民』は、私たち『黄金』だけでなく、他のギルドにも依頼を出していたのですね)

(うむ。 そういうことならば、誠実さが足りぬの)

(まあまあ、そう言わずに。 多分彼らだって生活がかかっているから大変なんだよ)


 3人でひそひそ会話している間にも、「赤き農民」ギルドによる説明は進んでいく。


 説明の内容をまとめると、今回仕事を依頼した経緯は「作物の品質が悪化したこと」にあるらしい。


 もともと、この辺りで作物を育てると()()()、「食べることでバフ効果を得られる」「傷の回復効果がある」などの、特殊な作物が採れていたらしい。

 おかげで、味や栄養価にこだわらなくても量さえ作れば売れるので、このあたりでは基本的に「品質よりも量を優先した農業」が発展して、商品価値は『特殊効果』に頼り切りだったらしい。


 だが、これもまた原因が不明なのだが、数年前からバフ効果が一気に減少し、今年の作物に至っては一切のバフ効果が確認されていない。


 このままでは、この辺りは「ただまずいだけ」の粗悪品しか採集できず、ギルドの経営も立ち行かなくなりかねない。

 そこで、外部の力を借りてでも、「何とか現状を打開したい」ということらしい。


 話を聞く限り、こういう事態に備えていなかったギルドの自業自得という考えもあると思う。

 というか、与えられる恩恵を()()()()に思ってしまい、何も努力してこなかったことにこそ問題があるような気もするわけだが・・・。

 まあ、それでも困っている人がいて、しかも「このままでは数千人単位で路頭に迷うことになる」などと言われると、見捨てるというのも心苦しいところがあるし、こうして状況打開のために『行動』を始めているのだから、「努力不足」などと言って切り捨てるのはそれこそお門違いなのだろう。


 ライアの能力とかは探索にも向いていそうだし、手伝ってもいいのだけど・・・、

(チシロさま、どうしますか? このまま手伝うとなると、『黄金』と合流するのがさらに遅れそうですが)

(そうだね。 手伝いたい気持ちはあるんだけど、最低限アウラたちに一言連絡を入れておきたいしなぁ・・・)

(チシロよ。 連絡を入れるだけならば可能であるぞ? ステータスカードに『結界貫通』の魔法を付与してメッセージを送れば良い。 ただし、向こうからのメッセージは届かぬがな)

(え、まじで。 じゃあ、連絡だけいれて・・・。

 って、そもそも、部外者の自分たちが関わっても大丈夫なのだろうか・・・)


 そもそも、自分は『赤い羅針盤』のメンバーでは無いので、後からばれたときに厄介ごとにもなりかねない。


(これは、『赤き農民』側との交渉が必要になるかなぁ・・・。 面倒だなぁ・・・)

(チシロ、話は聞かせてもらったぜ!

 そういうことなら赤の羅針盤(うちのギルド)で、アルバイトとして手伝ってくれないか?

 バイトと言っても料金は正規メンバーと同額を払うし、ステータスカードの実績にもちゃんと残る。

 ああ、もちろん仕事が長引くようだったら途中で抜けることも可能だ。

 その場合でも働いてくれた分の給料は支払う。

 どうだ、悪い話じゃあないだろ?)


 マテラ、ライアとの会話が隣の席に座っていた『赤い羅針盤』の隊長にも聞こえてしまっていたらしい。


(そうですね・・・。 そこまで言ってくださるなら、そうしましょう。

 マテラとライアも、それでいいよね?)

(もちろんです。 チシロさま!)

(うむ。 我にも異論はない)

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