山龍討伐一日目(11)
『白い獣』は術式が成功して元気になったようだ。
体調が良くなったことが嬉しいのか、それとも感謝のつもりなのだろうか。
もふもふになった毛皮をこちらに擦りつけてくるのだが、これが暖かくて気持ちが良い。
そして、ひとしきりじゃれあった後は、また眠るようにおとなしくなった。
存在感が薄まっていく。
ついさっきまで『獣』と認識していたにもかかわらず、今ではまさに『白い岩』にしか見えない。
普通に考えれば、森の中にこんな『白い岩』がむき出しであるのはおかしいことなのかもしれないが、不思議なことに違和感を感じない。
やがて『白い岩』自体も見失ってしまった。
あれだけ大きかったのに、辺りを見渡しても全く見当たらない。
<<ふむ。 森との調和もうまくいっているようであるな。>>
<<これにて、我らの仕事は完了である。>>
声の主たちによると、今でも目の前にはあの『白岩の獣』がおとなしく眠っているらしい。
なんでも、術式による治療は完了しても、体力を取り戻すためにしばらくは安静にする必要があるとか。
次に起きるのは数ヶ月後だとか、あの獣は森の浄化装置のようなものだとか、難しい話を色々とされた気はするけど、正直よくわからなかった。
ただ、なんやかんやあってこの先100年近く、森は安泰らしい。
仕組みは全く理解できないけど、いいことをした後は気持ちがいいものだ。
「それでは、用事も済んだところだし、チシロを案内するかの。
ところで向かう場所は、人間が集まる集落で良かったかの?」
「えっと・・・そういえば、どこに向かえばいいんだろう・・・」
村の名前なんて知らないし、地図上で指差そうにも、地図上のどこに村があるのかもわからない。
こんなことなら、集合場所の名前ぐらい聞いておくんだったな・・・。
「チシロさま、ひとまずはライアちゃんの言っている『集落』に向かいましょう。
そこからなら、外と連絡を取ることもできるでしょうし」
「ま、そうか。 じゃあライア、道案内、よろしく!」
「うむ! 任せておくが良い!」
ここからわりと近くに、人間が集まっている場所があるらしい。
おそらく、この森で生活する人たちの村か何かだろう。
ということで、再び薬草を探したり魔獣を倒したりしながらライアに村まで案内してもらうことにした。




