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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第弐章:精霊世界

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精霊の学園(2−16)

 そこからは、フラウさんが王になるための作戦会議が行われた。

 自分は基本的に霊狐の通訳みたいな感じだったけど、前前前世(ちきゅう)の学生時代に学んだ歴史の授業を思い出したりしながら、自分なりのアイデアも出してみたりした。

 過去なんて学んで何の意味があるのかと思っていたけれど、思わぬところで役に立つものだ。

 先生もまさか、異世界で活用されることは想定していなかっただろうけれど。


「それじゃあ、今日はここまでにしておきましょう。皆さんありがとう、これからもよろしくお願いします」

「ふむ……どうやら貫禄も出てきたようだの。これならば大丈夫であろう」

 窓から差し込む夕焼け空が、フラウさんを妖しく照らす。

 結局、日が暮れるような時間まで話すことになってしまったけれど、おかげで作戦は大分まとまったし、フラウさんにも自信がついたみたいに見える。

 

 その後、フラウさんと霊狐は校長先生に案内されて、学校の裏口から帰宅することになった。

 なんだったら、フラウさんの家まで自分が送ってもいいと提案したんだけど、それは遠慮されてしまった。

 まあ、歩いているだけで襲撃を受けるような、過激な世界ではないし、霊狐という強力な精霊もついているから、二人だけでも問題はないのだろう。


 人と霊狐のシルエットが夕日に向かって歩き去るのを見送って、自分たちも帰ることにした。

 学校の校庭で精霊力の羽を広げて空に飛び上がり、スィラさん宅へ一直線に向かう。

 昼間と比べて薄暗くなるような時間帯だからなのか、地上を歩く生徒たちもどこか疲れているようで、これから頑張るというよりは、とりあえず帰ってのんびりしようと想っているようだった。


 十分ほど空を飛ぶと、自分たちの寝泊まりしているスィラさんの家が見えてきた。

 門の上空をそのまま素通りして、玄関の前に着陸する。

 戸を開けると執事さんが出迎えてくれたので、スィラさんに「帰ってきた」と伝えてもらうようにお願いして、自分たちは自室へと向かう。


「チシロさま、フラウさんは無事、王になれますかね……?」

「さて、どうだろう。自分も手を貸すつもりではいるけれど、なにせこの世界のことは詳しくないからね……」

「パパは、王様になるための政治? について、詳しかったんだね。わたし、尊敬しちゃった」

「いや、違うよナチュラ。日本の学生だったら大体知ってるような、常識レベルの話しかしてないから。この世界でも通用するかは、フラウさんや校長先生に判断してもらう必要があったし」

「チシロさまのいうとおり、この世界から見たら私たちの世界は『異世界』ですが、だからこそこの世界の常識にとらわれない発想ができるのでしょう。それに、なんだかんだ私たちの世界と似ていることも多いので、応用することはできるはずです」

「ふうん、パパとマテラの世界かぁ……わたしも、いつか行ってみたいかも……」

「自分たちの世界は、そんな面白い世界でもないけどね」


 なんといっても、自分たちの世界には魔力もないし、精霊も存在しない。

 かといって、特段技術が優れているわけでもない、至って普通の世界だからね。


 久しぶりに自分の生まれた世界について思い出してしんみりしていると、そんな空気を打ち破るように、部屋のドアがノックされた。

「どうぞ〜」

 椅子から立ち上がりながら返事をすると、一瞬だけ間を置いて扉が開き、スィラさんが部屋に入ってきた。

「大精霊様、論文を書き上げて、提出が完了しました」

「すごい、もう!? 論文って、そんな簡単に書けるものなの?」

「いえ、頑張りました。多少粗い部分もありますが、今回は早さを重視しましたので」

 もしかしてスィラさんは、自分が「龍と話をしたい」と言ったことで、無理して急いでくれたのかもしれない。

 自分としてはありがたいけれど、この論文にはスィラさんの人生もかかっていたはず

「なんか、急がせてしまったみたいで申し訳ないような……」

「それ以上に、僕が、早くこれをまとめたかったんです」

「それなら良いんだけど……」

「あと、ついさっき、クリニヒ兄弟から手紙が届きました。『明日にでも会いたい』ということです」

「……え、早くない?」

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