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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第弐章:精霊世界

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精霊の学園(2−9):フラウ・フラフリカ

「フラウさんですね。有名人ですから、もちろん知っていますよ」

 スィラさんの答えに対して、フラウさんはどこか不満げな雰囲気を出しながら頷いた。

「はい……そうです。フラウ・フラフリカです」

「ボクはスィラ・リィラルルクです。フラウさん、こちらこそよろしくお願いします」


 フラウさんと簡単な挨拶を終えたスィラさんは、椅子に座る前に自分の方に向き直り、一段階トーンを落とした声で自分に耳打ちをした。

「大精霊様、これはちょっとした自慢なんですが……フラウさん(かのじょ)は昔、ボクの講義を受けたことがあるんです。と言っても、フラウさんがまだ入学したばかりの頃でしたけど。彼女はあの頃から優秀な方でした……」

 その言葉が聞こえたのだろうか、フラウさんは一転して上機嫌になり、聞こえるか聞こえないか、ぐらいの小さな声で呟いた。

「はい……今の私があるのは、スィラ先輩のあの時の講義があったから、です……」

「? さてじゃあ早速、話をしましょうか。今日はボクを呼んでくれてありがとうございます」

 どうやらこちらの呟きは、スィラさんの耳には届かなかったみたいだけど。


 スィラさんが椅子に腰掛けて、自分がその後ろの空いているスペースに立つと、フラウさんは早速といった感じで話し出す。

「今日、スィラ先輩に来てもらったのは、スィラ先輩に相談があったから……なのです」

「相談? ……というと、霊狐を召喚した件ですか。大変なことになりましたね」

「はい。私なんかが霊狐(この子)を召喚したせいで……教師達は今、私の家系図を洗い直しているそうです。もしかしたらどこかで王族の血が混ざり込んだんじゃないか……って」

「ボクが思うに……精霊の召喚に血筋は関係ないと考えているんですけど。大精霊様は、どう思いますか?」

 確か、フラウさんが召喚した『大霊狐』は、歴史上王族しか召喚したことがないらしい。

 それを、フラウさんが召喚したことで前例を覆してしまったというわけだけど……

「えっと、どう思うって聞かれても……」

 自分には、特にアイデアがあるわけではない。

 なにせ自分はどちらかというと『召喚される側』で、召喚術については全く詳しくないのだから。

 マテラとナチュラに助けを求めるように視線を向けると、彼女たちも首を横に振った。


「ですがチシロさま、一つの仮定として……王族の魔法陣には固有のパターンがあり、大霊狐などはそのパターンに引き寄せられるのかもしれません」

「なるほど。でも、だとしたらなぜフラウさんはそのパターンを身につけたの?」

「それは……申し訳ありません。私にもそこまでは分かりません」

「別に謝ることではないよ。自分にも、ここにいる誰にも分からないことなんだから」

 結局のところ、自分たちの答えは「よく分からない」ということになりそうだ。

 申し訳ない視線で顔を上げると、スィラさん達は気にした様子もなかった。


「スィラ先輩、それで相談なんですけど……これから私、どうしたら良いんでしょうか」

「フラウさんは、どうしたいですか? 今なら、新たな王族を名乗ることもできますよ」

「そんなつもりはないです……私なんかが王族なんて、相応しくない、です」

「でも、フラウさんは学年三位の実力者ですし、他の王族生徒よりも、むしろ……」

「私がこの順位なのは、他の王族の方々が順位に興味を持っていないからです! 本気で挑まれたら私なんて……」

「フラウさん、それは違いますっ!」

 自信なさげに自身を卑下するフラウさんに、スィラさんが水を差すように鋭く叫んだ。

 勢いよく机を叩いて椅子から立ち上がったスィラさんを見て、フラウさんは驚いて目を丸くしている。

「ボクだって……他の王族だって、手を抜いたことなんてありません。今の順位に満足したこともありません! そう見えないのは、そう見えないように努力をしているからです。それを、手を抜いているだなんて、それこそ王族(ぼくら)に対する侮辱ですっ!」

「……ごめんなさい。でも私なんかが、スィラ先輩よりも優れているとはどうしても思えなくて……」

「それは、買いかぶりすぎですよ。それに……良いですか、フラウさん。『成績』というのは一つの物差しです。僕ら生徒はその物差しに合わせて競い合っているんです。だから、順位が高いからと言って全てが優れているわけではないのも事実ですが、順位が高いこと自体は、素直に誇って良いんですよ」

「……はい、スィラ先輩……」


 スィラさんって、王族だったんだ……

 なんていう、場違いな感想が頭をよぎったけれど、口には出さないでおこう。

 それよりも、少し気になったことがある。

「ねえ、二人とも。その霊狐の精霊本人から、何か話は聞いた? なんでフラウさんの召喚に応じたのかとか、直接聞くのが早いと思うんだけど?」

 何気なく自分が口にした質問に、スィラさんとフラウさんは少し驚いた顔をしている。

「大精霊様、龍や霊狐などの上位精霊は『格』が高すぎて、ボクたちの言葉を伝えることができないのです。彼らからの言葉を受け取ることは、かろうじて出来るのですが……」

「スィラ先輩の精霊様、私たちが精霊に言葉を届けるには『縁』を結ぶしかないんです。でもまだ私は未熟で……霊狐様からの試練を聞き取るので精一杯で……」

 なるほど、つまりやらないのではなく、出来ないのか。

 まあそんな単純なことが思いつかないわけがないか……

「それなら自分が試しに聞いてみるけど、それは問題ない?」

「はっ!? それは、大丈夫ですが……」

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