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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第弐章:精霊世界

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精霊の学園(2−6)

<<お前達が私たちとは違う存在だというのは分かった。だが分からないことがある>>

 獅子の精霊は自分の説明を聞いてから話を咀嚼するように考え込み、納得するように頷いてから話を続けた。

<<お前達は、なぜ世界を旅しているのだ? 何か目的でもあるのか?>>

<<目的、と言われても……>>


 改めて聞かれるまでもなく、自分たちの旅の目的は『元の世界に戻ること』だ。

 この世界ではスィラさんと出会ったし、砂漠の世界にも知り合いは何人かいたけれど、やはり『黄金』のことを放っておくことはできないという気持ちが自分の中にはある。

 それにあの世界には、自分の帰りを待ってくれている人がいる。

 それは同じギルドのアウラやキューちゃんだったり、同じギルドに入ってくれた弟子のウィスさんや妹でもある真白だったり。

 自分なんかがいなくてもギルドは上手く回るだろうから、責任感とかそういうのが理由ではない。

 要するに自分にとっての故郷はあの世界の『黄金(あのギルド)』で、自分はただそこに帰りたいだけなんだと思う。


<<自分たちは、元の世界に戻るために、世界を旅しています>>

<<そうなのね。つまりあんたにとってこの世界は、寄り道しただけってことなのね>>

<<そうなります……気を悪くしたなら謝りますが>>

 卓上の小精霊に向かって軽く頭を下げて謝ると、彼女は「そんな必要はない」と言うように軽く手を振り払った。

<<別に謝ることじゃないわ。そんなの個の自由ですもの!>>

<<生まれた世界の近くに留まる我らにも、崇高な理由があるわけではないからな>>

<<そうよ。それに世界を旅する精霊なんて、面白いじゃない! ねえ、どうやって次の目的地を決めてるの?>>

<<……今のところ、特に当てもなく、みたいな感じです>>


 自分で言って情けなくなったけど、だけど事実としてその通りだった。

 自分たちがこの世界に来たのも、本当にただの偶然でしかない。

 強いていうならば、あの空間を漂っていたときに、スィラさんが自分を呼ぶような『想い』が聞こえたから。

 それがなかったら、多分今頃自分たちは知らない別の世界に不時着していたと思う。

 今にして考えれば、なかなかに無謀なことをしていたわけだ。


<<言い訳になるんですけど……自分たちはこの世界がまだ三つ目の世界で、指針を探っているところなんです>>

<<指針……か。私たちが役に立てれば良かったのだがな。第五位の精霊よ、お前はなにか知っているか?>>

<<世界を探す方法? そんなの知るわけ無いじゃない。でも、知ってそうなやつなら知ってるわ!>>

<<そうであるな。どうやら私と同じ考えのようだ……>>

 獅子の精霊と卓上の小精霊は互いに顔を見合わせて頷き合っている。

<<……その『知っていそうなやつ』っていうのは?>>

 自分が聞くと、二人の精霊は息を合わせて同時に同じ言葉を発した。

<<『龍族』よ>>

<<『龍族』である>>


<<龍族? それって……>>

<<第二位が召喚した精霊のことである。あやつならなにかを知っているであろう>>

<<そうよ、あいつらは世界を旅する精霊なの。あいつらなら他の世界のことも知ってるし、移動方法も知ってるかも>>

<<つまり、龍の精霊に話を聞けば良いってことですね>>


 そういえば龍といえば、砂漠世界にも竜がいた。

 自分たちがあの世界を抜け出せたのは、彼が溜め込んだエネルギーを使うことができたからだし、そもそも彼がエネルギーを貯めていたのは、砂漠世界から飛び立つためだったはず。

 希望というか方針が見えたので感謝を伝えようとしたところ、二人は苦い者を噛んだような顔をしていた。

 どうやらそう簡単な話ではないらしい。

<<だがしかし……あいつらはプライドが高いからのう>>

<<そうね。世界に留まる私たちを見下しているの。絶対にそうよ、あいつら!>>

<<な、なるほど……そうなんですか……>>

 二人の、龍族に向ける偏見がすごい。


 今まで自分が出会った龍族は、元の世界で出会ったライアと、砂漠世界のドラゴンの二人だけだと思うけど、二人ともそんな偏屈な印象は受けなかった。

 けどそれは、自分が精霊の立場ではなくて、人間の立場として話をしていたからなのかもしれないし、もしかしたら自分が出会った二人が、たまたま龍族の中でも親切だったのかもしれない。

 こちらから偏見を持って接したくはないけれど、ある程度覚悟はしておいた方が良いかもしれないね……

 いずれにせよ、自分一人であの龍の元に突撃するのは失礼に当たるだろうし、スィラさんに「第二位の精霊と話をしたい」と相談することにしようかな。



 自分は、いつの間にか獅子の精霊と卓上の小精霊と結構長い時間を話していたみたいだ。

 万雷の拍手がとどろいたのでふと我に返ると、スィラさん達は椅子から立ち上がり、客席側に軽くお辞儀をしていた。

「大精霊様、お待たせしました」

「スィラさん、お疲れ様。この後はどうするの?」

「とりあえず数時間は予定がありませんが……その、精霊の羽を出す練習に付き合ってもらえますか?」

「もちろん良いけど、自分からもお願いがあるから……後で話すね」

 ウィルさんは獅子の精霊を後ろにつれて、ヘプラさんは卓上の小精霊を頭に乗せて、それぞれ袖から舞台裏へと戻っていった。

 自分たちもその後に続いて退場して、期待と羨望のこもった想いからようやく解放された。

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