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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第弐章:精霊世界

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精霊の学園(2−5)

<<私は、この世界の破片が精霊化して生まれた精霊だ。第五位の精霊も同様であろう?>>

<<そうね。この世界に召喚されることで生まれたのよ>>

<<この世界の者達が使う『精霊召喚』には、すでに精霊化した者を呼び寄せる力だけでなく、精霊未満の者を呼び出すと同時に精霊化する力もある。そうして生まれた精霊は人の形しており、向こうで意思の獲得までした精霊は獣の姿をしている……と、言われている>>

<<……言われている?>>


 最後に付け加えられた一言が気になったので聞き返すと、獅子の精霊は気まずそうな顔をした。

 卓上の小精霊も、小さな手の細い指を顔に当て、俯いている。


<<そう、私たちにも、私たち自身がどのように生まれたのか、わかっていないのだ……>>

<<あたしの場合は本当に、気がついたら目の前にこの世界が広がっていたって感じなの。そのことを伝えたら、最初の主人は『やはりそうか!』って興奮してたけど……>>

<<つまり、先ほど私が言ったことは、この世界の者達が立てた仮説に過ぎない。ということであるな……>>

<<なるほど……>>


 つまり、精霊がどのように召喚されるのかとか、そもそも精霊とはなんなのか。みたいなことは、精霊自身にもわかっていないことのようだ。

 だからこそ、この世界では定期的に精霊を召喚して、力を借りると同時にその生態も調査をしているのだろう。

<<精霊達のことはわかりました……それで、うちのナチュラが『別の世界』って言っていたのは?>>

<<言葉にするのが難しいのだが……私たち普通の精霊は、複数の世界の『匂い』が混ざっているのが普通なのだ。それは『龍』であっても例外ではない。だがお主の小精霊達は……>>

<<あんたのあのちびっ子は『気配』が純粋すぎるのよ! 少なくともあたし達とは生まれが違う! そうでしょう?>>


 卓上の小精霊は「ちびっ子」と言うけれど、大きさでいったら彼女自身も同じぐらいだと思うけど……

 ややこしくなりそうだから、口には出さないでおこう。


 しかし、それなら確かに納得ができる部分もある。

 なにせ、ナチュラは元々『魔王』だったのだから。

 自分が最初に転生した世界で、星からしみ出した魔力が凝縮して生まれたような存在だから。

 他の精霊が、世界と世界の間の世界で、いろいろな世界からしみ出した『なにか』を集めて生まれたなら、それと比べて『世界そのもの』と表現するのは、間違ってはいないのかもしれない……


 顔を少し横に向けると、もぞもぞと二人の精霊が、こっそりと顔だけ出してきていた。

 マテラからナチュラへの説明が終わったのだろうか。

 良いタイミングだから、二人の意見も聞いてみることにしよう。

「二人とも……どう思う?」

 他の生徒達には聞こえないように小声で聞くと、二人とも少し考えるそぶりをしてから答えた。

「チシロさま、どう思う……とは? 確かに彼らの工夫は、魔力を使った陣にも応用できると思いますが……」

「パパ、さっきの話に、何か気になるところでもあったの?」

「そうじゃなくて……獅子の精霊と人形の精霊が言っていることについて……」

「パパ……」

「チシロさま……」

「どうしたの、二人とも?」

「「…………なんのこと(ですか)?」」

 二人とも、とぼけているような感じではない。


 一体どういうことなのかと少し慌てていると、見かねた様子で獅子の精霊が尻尾を振った。

<<第六位の精霊よ、その小精霊達には、おそらく私たちの声は聞こえておらぬぞ?>>

<<……え、なんで>>

 それに続いて、卓上の精霊も呆れた顔をする。

<<なんでもなにも、こんなふうに会話ができるのは、私たちみたいな『高等な』精霊だけよ>>

<<左様。私たち以外にこの声が聞こえる者は……今回召喚された精霊の中でも、上位のものだけであろうな>>

 そういうことは、先に言ってよ……


 道理で、客席側の精霊達が何も反応しないわけだ。

 というか、精霊力だったらスィラさん達、学生や教師にも扱えるはずなのだから、もし彼らにも聞こえていたら、自分たちが生徒達の会話も聞かずに駄弁っているのが筒抜けになっていたわけか。

 とはいえ今この場でマテラとナチュラに同時通訳をするのは効率が悪い……

「実は今、あそこにいる二柱の精霊と、精霊語みたいなので話をしているんだけど……後で内容を共有するから、その時意見を聞かせて欲しい……」

「そうでしたか。かしこまりました、チシロさま」

「楽しみにしてるね、パパ!」


<<それで……なんだっけ。ナチュラが、世界そのものって話だっけ。それは話すと少し長くなるんだけど……>>

 自分は、この二柱の精霊達に、自分たちがこの世界に来た経緯を簡単に話すことにした。

 そのためにはまず、ナチュラが生まれた経緯から話す必要がある。

 全てを話すと、100万文字ぐらいになりそうだったので、重要なこと以外は省略しながら、思い出しながら話をする。

<<……なるほど、それで言うと第六位の精霊。お主は精霊ではなく、別の世界の『人間』ということになるのだが?>>

<<そういうことです。ライアという妖精に精霊力を与えられた、妖精使いなんです……実は>>

<<っていうかあんた、それじゃもう一つのチビ精霊も?>>

<<そうですね。マテラも、自分が『想力解放』という、能力というか、そういうので……>>


 精霊達は「自分たちが生まれた経緯をよくわかっていない」と言っていたけれど、よく考えたら自分も、自分自身について全くわかっていない。

 今更かもしれないけれど、想力とか精霊力とかについて、考え直した方が良いのかもしれない……

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