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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第弐章:精霊世界

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精霊の学園(7)

 武器でも精霊術でもありと聞いたので、自分は精霊力を丸めて伸ばして棒状にした。

 一応、自分の弟子(ウィスさん)は杖術の使い手としてAランク冒険者に合格できる程度には実力者だし、自分もその時にある程度杖の使い方を学んだ経験はある。


 ……自分の杖術は完全に付け焼き刃ではあるけれど、以前マテラとライアとリオが自分の身体を操って戦ってくれたときの感覚が身体に残っている。少なくとも素手や他の武器よりはましに使えるはずだ。

 あの時の完全再現とかは無理だけど、ある程度それっぽい動きをすることは出来るはず。

 あとは、あの時よりも自在に使えるようになった精霊力を駆使してごり押しすれば、ある程度の相手ならなんとかなるはず……


「教官さん、行きます」

 できるだけ相手に判断させる時間を与えないために、精霊力の棒が完成するよりも前に踏み込んで、ちょうど杖が杖として完成するちょうどのタイミングで突き出す!

 ……確かこの技は、

<<杖術初級基本技:火花(ひばな)>>

 早さと隙の無さに優れた技で、初劇として不意打ちをするのには一番使いやすい。

 ただ、さすがは教官と言うべきなのか、間合いも見えなかったはずの一撃を教官は紙一重で回避した。

 ……こういうときは!

<<杖術中級基本技:半月(はんげつ)>>

 突き出したままの状態で杖を手で引っかけて、投げるようにして半回転させる。

 線の攻撃から面の攻撃へ。『火花』を躱して体勢を崩している相手に流れるような連携で攻撃するこの技は、普通は躱せないはずなんだけど……


「うぉっと……そう来るか!」

 教官は、身体を反るようにしてまたも紙一重で自分の攻撃を避ける。

 だけどこの『半月』は、回避されることが前提となっている技でもある!

「まだですよ!」

 ちょうど半回転して、突き出した方の棒の先端をつかみ取り、回転の運動エネルギーをそのまま使って、身体ごと回転させて……

<<杖術中級基本技:旋風(つむじかぜ)>>

 回転の軸を少しずらして、相手の足下に狙いを定めて、杖を繰り出すが……


 教官はその場でバク転するようにして、むしろ攻撃中の杖の方に蹴りを加えていく。

 ミシッという鈍い音が聞こえて、精霊力の杖が強く弾かれた。

 杖を強く握っていた自分の態勢までも崩される……

<<杖術初級基本技:木葉(このは)>>

 あえてその場に止まらず、杖の弾かれる勢いに任せて自分の身体も飛ばす。

 精霊力も使って体重を限りなく減らしている自分の身体はそのまま数メートル飛ばされて、安全に着地する。


「やるな! 精霊様のくせに、人間の武術まで使うとは!」

「……そちらも。完全に隙を突いたと思ったんですがね」

 まあ元々自分は人間だから、人間の武術を使うのはある意味、当たり前でもあるんだけど……

 今のやりとりで、自分の攻撃が教官の足に触れてはいるが、これは「攻撃を当てた」というよりは「攻撃を相殺された」という方が近い。

 まさかこれだけでこっちの勝ちになったりはしないだろう。


 今の短いやりとりで、教官の強さを痛感させられた。

 前の前の……つまり、自分が最初に転生した世界でいうところの、少なくともSランク以上の実力があることだけは確実に言える。

 さすがは、人の身でありながら精霊である自分に喧嘩を売るだけはある……っていうことか。

 最近、自分よりも強い人を見ていなかったから油断していたのかもしれないけど……このまま負けるのは悔しいな。

「……チシロさま、あいつなかなか出来る(・・・)ようです。手助けしましょうか?」

「マテラもそう思う? 自分も今そう言おうと思ってたところなんだけど……力を貸してくれる?」

「私も! パパ、私もやる!」

 一度は「自分一人でやる」と言っておいて、負けそうになったらすぐに助けを呼ぶのは格好悪いかもしれないけれど、マテラもナチュラもそんなこと気にした様子すらない。

 ここは素直に二人の力を借りることにしよう。


「……どうした? 来ないのか? こっちから行くぞ?」

 精霊達(マテラとナチュラ)と話をしていた自分を訝し(いぶかし)んだのか、教官が声をかけてくる。

 あれだ。変身シーン中に攻撃する敵キャラは嫌われますよ?

 ……と言っても、この世界に小説やアニメがあるのかも知らないし、似たような物があったとしても伝わらないだろう。

 そもそも、自分の場合マテラとの合体は一瞬で終わるから、そんな隙はないんだけどね!


「チシロさま! 行きます!」

 マテラが、自分の中に溶け込んでくる。

 自分の中の精霊力が押し出されて結晶化し、武具の形で装着される。

 精霊力の羽は消滅するけれど、代わりにマテラの力で空を飛ぶことが可能に。

「パパとマテラが合体した! すごい! 私もっ!」

 ナチュラが、自分の身体にペタッとくっ付いてくる。

 力が流れて……来るわけでもない。ん? あれ? 何も変化がないような気が……

<<チシロさま! ナチュラ(この子)の力が、私の中に流れてきます!>>

「そっちか! ナチュラ、どういうこと?」

<<えへへ! なんて言うか、パパの精霊力(その力)と私の魔力(この力)は水と油なの

  だから直接パパに力を渡すより、マテラを通しての方が効率が良いの!>>

<<チシロさまの膨大な精霊力と、元魔王であるナチュラの莫大な魔力……

  この力があれば、いろいろ試せそうです!>>

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