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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第弐章:精霊世界

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精霊召喚の儀

「それでは、次! スィラ・スー・リィラルルク! 準備は良いか?」

「はい、先生! いつでもいけます!」

「よろしい。焦らなくても良い。落ち着いて、執り行うのだぞ!」


 大丈夫。

 今まで何度も練習してきた儀式だから。

 友達もみんな成功している。僕だって、いつも通りにやれば良い。


「それでは、学生番号6番。スィラ……始めます!」


 このクラスでは、成績が良い順番で学生番号が割り振られる。

 6番というのは、僕の上にさらにもっとすごい人が五人もいることを意味しているけれど、同時にそれは、一万人を超える全学生のうちのトップシックスに入っていることも意味している。

 特にその中でも上位六人は最上位の六芒星(ヘクサグラム)なんて呼ばれて注目されている。


 末席とはいえ僕もその一員で、しかも今年は「数十年ぶりの大豊作」なんて言われるぐらい、優秀な人が多い年だったらしいから、その期待はすさまじいものだ。

 校内生徒だけでなく、他校の学生や、企業のスカウトなんかも見に来ているという噂を聞いたことがある。


 ルーラララ♪


 この歌に、歌詞は要らない。

 精霊に言葉は通用しないから。

 ただひたすらに、想いを込めて、願いを込めて。


 ララリララルーラ♪


 床に描いた複雑な図形の上で舞い踊り、狭間にたゆたう精霊に歌いかける。

 これは、古より伝わる精霊召喚の儀式。

 歌と踊りで精霊に語りかけ、力を借りるための大切な祭祀(さいし)

 僕たち、精霊塾の塾生は、卒業試験で精霊召喚を行うことになっている。

 届ける願いはこの世界の繁栄と、僕自身の成長。

 気まぐれな精霊を確実に呼び出す方法は、ただ一つ。

 それは、精霊が来てくれるまで、踊り、歌い続けること。


 僕の一つ前……第七位の女の子は、子猫ほどの大きさの精霊を召喚するのに丸二日踊り続けたらしいけど、これでもかなり、早いほう。

 順位の低い方の人達の中には、卒業試験を半年前から続けていて、今もまだ踊り続けているような人達もいる。

 そういう人達は、チームでこの試験に挑んでいて、交代を挟みながら毎日毎日、途切れないように歌い踊り続けているらしいけど……それでも成功率は半分を切る。

 そして、卒業式までに精霊を召喚できなかった人達は、無情にも留年に。


 いつから始めるかは、自己責任に委ねられている。

 だったら、みんな早くやって合格をもらった方が良いと思う?

 でも、実力者がギリギリになるまで試験に挑まないのには、それなりの理由があるんだ。


 リララルララルーラ♪


 まず一つ目の理由は、周囲がそれを求めているっていうのがある。

 変な言い方だけど、さっさと合格をもらって安心を得るよりも、ギリギリに挑戦して、最悪不合格になるのを選ぶ人もいるぐらい。

 僕は、馬鹿馬鹿しいからそういうのは気にしないようにしているんだけど……

 もちろん、もっとまともな理由もある。

 まず、僕らぐらいの、一桁クラスの術士が舞えば、小精霊ぐらいならほんの数分で呼び出すことができるから、最悪それを呼び出せばいいんだけれど……それでは、卒業後の進路に大きく響く。

 やっぱり、最低でも中精霊以上は狙いたいし、できることなら大精霊の召喚に挑戦したい。

 だけどそうなると、無数に集まった小精霊がむしろ邪魔になってしまうから……


 つまり要するに、僕はこの試験で大量の精霊が召喚されて、小精霊や中精霊の数が削られるのを待っていた。

 まるで彼らを利用したみたいに見えるかもしれないけれど……

 僕が序盤で儀式を行うと、すくい上げた精霊に混じって大量の小精霊を召喚することになって、それはその年の精霊の枯渇を招くことになるわけだから……僕が自重することが、彼らのためにもなるってこと。

 むしろ、上位の術士である僕たちが何を召喚できるのかは、下位の術士の評価にもつながってくる。

 僕たちがすごいものを呼び出せば、それは下位の術士がちゃんと小精霊を召喚によって取り除けていた証明にもなる。

 だから、僕たちに文句を言ってくるような人は、少なくとも校内にはいないし、僕が手を抜くことは、僕だけじゃなく、同級生数万人の期待を裏切ることになってしまう……



 っと。踊り始めてまだ数秒しか経っていないけど……この反応は?

 今まで感じたことがないぐらいに大きな精霊の力を感じる。

 最悪、数日間は休み無しで踊り続ける覚悟でいたから、「こんな簡単に決めてしまって良いのか?」という不安が浮かび上がるけど……

 僕の直感は「確実に大精霊クラス。もしかしたら、それ以上かも……」と言っている。


「スィラ・スー・リィラルルクが祈り、希う(こいねがう)! 偉大なる精霊よ、扉を開き、わが前に姿を顕現(けんげん)せよ!」


 迷っていた時間は、コンマ数秒にも短い時間。

 踊りと歌の軌道を修正し、術式起動のキーワードを告げる。

 足下の図形が輝き、中空に数メートルの光のリングが現れる。


 会場の空気が凍り付く。

 リングの大きさは、その精霊の大きさに比例している。

 そしてこの大きさは……僕の知っている限りでは最大で、もしかしたらこの学園の歴史上でも最大級かもしれない……

 緊張でみんなが息を止めて見守る中……


 姿を見せたのは、小精霊を二柱従える、人間大の大精霊だった!

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