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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第壱章:砂漠世界

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世界の狭間にて

 景色が切り替わる。

 眩いばかりの光に包まれていた空間から、何もない真っ暗闇の世界へと。

 そして後ろから、扉が閉まるような音が聞こえる。

「……チシロさま、無事ですか?」

「あ、そういえば。前のと気は意識を失っていた気がするけれど……」

 二回目と言うことで、改良でも加えられていたのだろうか。

 何も見えず、何も感じない状況ではあるけれど、意識だけははっきりしているようだ。

 かなり離れた場所に小さな光がいくつかあるようで、目が慣れてきたら、星空のような光景が広がっているのが見えてきた。


「あのね、パパ。……その、言いお知らせと、悪いお知らせが一つずつあるの」

「こんどは両方ちゃんとあるのね。学習していて偉い! ……それで、どんなお知らせ?」

「言いお知らせは、マテラの言っていたとおりで、無事に世界の壁を越えることに成功したよ! ここは、世界と世界の間にある……狭間? っていう場所なの。この空間を移動することで、別の世界に転移することができるのよ! ……理論的には」

「ほう、すごいじゃん。『理論的には』って?」

 なんだろう。最後に付け加えられた一言が妙に気になるというか……

「その……悪いお知らせなんだけど……あの、怒らないでね?」


 ナチュラは、おびえたような表情で自分のことを見上げている。

 これは、相当何かやばいことをやらかしたのだろうか……

「大丈夫、怒らないよ。言ってごらん?」

「えっと……さっきも言ったけど、世界の壁を越えることには成功したの。でも……」

「ナチュラ、もう良いですよ。チシロさま、私から話しますね。私たちは、世界の壁を越えることばかり考えていました。壁さえ越えれば後はなんとかなるだろう……と、考えていたのですが……」

「パパ、ごめん。世界を超えることはできたけど、見ての通り私たちは今、世界の波に流されてるみたい……」


 ……え?

 それってどういう……

「わかりやすく言えば、漂流しています。いずれどこかの世界にたどり着くのでしょうが、それがどんな世界になるのかはわかりません」

「パパ、ごめん。私は『なんとかなる』って言ったのに……」

「いや、二人に任せきりにした自分も悪いから、あまり謝らないで。連帯責任ってことにしよう! それよりも、本当にどうにもならないの?」

 自分でもどうにかしようと思って精霊力を使ってみると、ふわふわと浮かぶように流されていた自分の身体を、ある程度コントロールすることはできるようだった。

 とはいっても、そもそも目的地がわからないのだから、がむしゃらに身体を動かしたところで意味がない。



 ルーラララ♪

 ララリララルーラ♪

 リララルララルーラ♪


 どうするべきかと悩んでいると、どこかから音が聞こえてきた。

「……これは?」

「チシロさま、歌声のようですね」

 どうやらこの音は、自分だけでなくマテラ達にも聞こえているらしい。

 ということは、想力が関係した『想い』とかではなく、物理的な音が実際になっているのだろう。

「パパ、向こうから聞こえてくるみたいだよ!」

「私には、この声が私たちを呼んでいるように聞こえます。 チシロさま、向かってみませんか?」

 確かに自分にも、この声が自分のことを呼び寄せているように聞こえなくもない。


 いずれにせよ、他に手がかりになりそうな情報もない。

 精霊の力で水をかくように力を込めると、自分の身体がゆっくりと移動していく。


 たどり着いた先には、白く光り輝く、半径一メートルぐらいの円があった。

 ルールールルルー♪

 ラーララ♪ ラララー♪

 歌声は、確かにこの光の向こう側から聞こえているようだ。


「チシロさま、これは、別の世界につながる入り口です」

「パパ、どうする? これは、さっきの世界でも、パパが前いた世界でもないみたいだけど……」

 マテラとナチュラには、世界を渡る前からこの世界のことがある程度わかるようだ。

 そしてその二人によると、この世界はまだ見ぬ、自分にとっては全く新しい世界ということになる。

 でも……

「どちらにせよ、他に手がかりはないわけだし……だったら、自分たちのことを呼んでくれたこの世界に行くことにしようか」

 あまり悩んでも仕方がない。

 そう思った自分は、マテラとナチュラを抱きかかえるようにして、光の中へと飛び込んだ。

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