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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第壱章:砂漠世界

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砂漠の迷宮(跡地)

 この短い期間で何度往復したかもわからない砂漠の空を飛んで移動する。

 だけど今回は、今までとは明らかに様子が違っていた。


 具体的にいうと……そこはすでに、砂漠というには自然にあふれすぎていた。

 地上の様子を眺めてみると、まだまだ砂や大地も目立つけど、草花が生え始めている場所もチラチラと確認できる。

 そして何よりも、まだ太陽は昇っている時間なのに、結界がなくても平気で移動することができる。


「すごいよね。こんなことになってたんだ……」

「はい、チシロさま。ですがまだまだこれからですよ! 今は背の低い草花ばかりですが、やがて大きな木が生え森が形成されていき、豊かな世界になっていくのでしょう」

「まあでも、そのころには私たちはこの世界にはいないから、パパがその景色を見ることはないと思うんだけどね!」

「それはなんていうか……残念だけどね」


 おっちゃんのホテルで見た絵画のような景色が、当たり前に見られるようになるのも、時間の問題ということか。

 移動の制限も解除されるから、交易もどんどん行われるようになって、それは新しい争いの種にもなるかもしれないけれど、それでも小さな街で命を削り合っているよりは、健全と言えなくもない……と、信じたい。


 この世界が豊かになっていくというのなら、いっそここに残って暮らすというのも良いのかもしれないけれど……

 だけど、自分には『黄金(くがね)』の仲間がいる。

 『黄金』以外にも、シロヒメさんやクロヒメさんや、他にも多くの人達に、別れも告げずに来てしまったから。

 帰る方法があるというのなら、やっぱり帰りたいと思うんだよね。


「チシロさま、見えてきました。あそこです」

 マテラが言うとおり、砂漠の迷宮があった場所にたどり着いたはずなのだけど、そこにあったのは『穴』ではなく『山』だった。

 少なくとも自分が今飛んでいるよりも高い山がそびえ立っていて、しかもその山は今も成長を続けているようだ。

 噴火こそしていないみたいだけど、ぐらぐらと地面が揺れるような音が常に聞こえてきて、そのたびに地面が大きく盛り上がる。


「チシロさま、あの魔力……正面に、ものすごい魔力があるのですが、何か見えますか?」

「うん。あの光が魔力なの? 自分にも見えてるよ」

 山の中央からは巨大な光の柱が伸びていた。

 さっき街でスペラさんの溜め込んだ魔力を使って発動した魔術の光の、さらに数倍の明るさで、半径も数百メートルはありそうだ。

「パパにも見えるんだね! だったら話は早いよ。パパ、あの光の真ん中に向かってくれる? たぶん、触っても危険ではないから!」

「了解!」


 ナチュラに言われたとおりに、山を乗り越えて光の柱の根元に向かい、地上に着地する。

 恐る恐る光に触ってみても、特に体調に変化はなさそうだ。

 むしろなんだか、温かいものに包まれたような……優しくて心地よいような感触すらある。

 莫大な魔力のエネルギーが集まっているのは確かなようだけど、今のところただ光っているだけのようだ。


 これに悪意とかが混じってくると、前の世界の魔王みたいにやばいやつになることもあり得るらしいんだけど……今のところは問題なさそうかな。

 もしかしたら将来、この世界でも魔術が発展して、前の世界みたいに何かのきっかけで魔王が生まれるなんてこともあるのかもしれないけれどそんなことは、その時代にこの世界にいる人達に任せることにしよう!


 いろいろなことを考えながら待っていると、数分も経たないうちにマテラとナチュラが自分の元へと戻ってきた。

「パパ、できたよ! いつでもゲートを開けるよ!」

「もう? 早くない? すごいね!」

「うん。これだけの魔力が一杯あって、しかも私とマテラが協力してるんだから、どんな魔術でも簡単だよ!」

「はい、まあそういうわけですチシロさま。それにこれは、以前に一度発動した魔術ですから……仕組みはわかっていましたからね」

 光の柱の中心には、綺麗な図形の組み合わせで魔方陣が描かれている。

 その魔方陣の中心に向かって、ナチュラが「えいっ」と声をかけると、光り輝く扉が現れた。

「なんか、前のやつより、なんていうか……すごいね」

「はい! 以前は時間がなく、無理矢理こじ開けたのですが、今回はその時の反省も生かしています」

「さあ、開くよ! 扉が開いたら、吸い込まれると思うから、パパは逆らわずに、そのまま力を抜いていてね!」


 マテラとナチュラは自分にしっかりとしがみついて、扉に向かって小さな手を伸ばす。

 すると、ゆっくりと音もなく扉が開き、自分の身体はあっという間に吸い込まれていった。

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