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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第壱章:砂漠世界

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砂漠の迷宮(8)帰還

 スペラさんの手を引いて、迷宮のような砂の洞窟を縫うようにして、外に向かって飛んでいく。

 その途中でドラゴンのいた部屋のある方角から爆発音が聞こえてきて、同時に砂の迷宮自体がパラパラと崩れ始めていた。

 マテラとナチュラが作ったこの結界は、熱や魔力を遮断することは出来ても物理的な壁の役割は果たしてくれないのか、崩れた天井や壁の破片は素通りして自分たちに降りかかってきた。


 幸いにも、そのほとんどは細かい砂だったのでぶつかっても怪我をすることはなさそうなのだけど……服の中にまで砂が入ってきて、それはそれでうっとうしい。

 というか、今はまだ「邪魔だな」と思うぐらいで済んでいるけれど、洞窟が崩れて生き埋めになってしまったらそれどころではなくなってしまうだろう。


 洞窟の道を全て覚えているわけではないけれど、この迷宮の道は魔力の通り道にもなっていて、全ての道がさっきの中心部に通じている。

 と言うことは、どの道を選んだとしても外に通じているということにもなる。

 根拠のない推測だけど、今はそれ以外に頼れる物もなく、というか、道を選んでいる余裕はなかった。

 枝分かれをしたら、なんとなくで右か左を選ぶ。

 もしかしたら遠回りになっているのかもしれないけれど……それでも少しずつ道が広くなっていて、ほんの少しずつ明るくもなってきているから、確実に外に近づいているのだと信じたい。


 そんな感じで、慌てたように洞窟内を妖精の羽で駆け抜けると、突然視界が大きく開けて、目の前に真っ白な光景が広がっていた。

 高く登った日差しが砂で反射して、目を開けていられないぐらいに眩しい。


 昼間の砂漠ということは、気温はかなり高いはずなのだが、どうやらそれは結界が防いでくれているのか、強い日差しで肌が焼かれるようなヒリヒリとした感覚はあるけれど、空気の熱さというのはあまり感じない。

 プレートにはめ込まれた金片はじりじりと消費されていくけれど、その速度は迷宮の最深部での消費と比べたらまだ穏やかだ。

 金片の残り枚数に余裕はないから、あまりじっとしているわけにはいかないけれど……それでも、このまま街に飛んで戻れるぐらいの余裕はありそうだ。


「さて……どうしようか、スペラさん」

「どうしようかと言われましても……あれ、崩れてしまいましたが大丈夫なんですか?」

「大丈夫……なのかなあ」

 ついさっきまで迷宮があった大きな縦穴は、崩れて跡形もなくなっていた。

 ありの巣のように張り巡らされていた迷宮が崩れたからなのか、周りの地形と比べて一段階低くなっていて、隕石が落ちて出来たクレーターのように見えなくもない。

 縦穴の場所もわからなくなっていて、当然中心部の場所もここから見ただけではわからない。


 地上からの反射熱と反射光が和らぐ上空まで上がって、途方に暮れたように地上を眺めていると、ザーッというノイズが聞こえてきて、耳を澄ましていると徐々にそれが声として聞こえるようになってきた。

『……さま、チシロさま……聞こえますか?』

『パパ、大丈夫……? うん、大丈夫みたいだね。見失っちゃったときはどうしようかと思った……』

 これは、マテラとナチュラの声だ。

 どうやら二人は、遠く離れた街で自分たちのことを心配してくれていたらしい。

 今すぐ「自分たちは大丈夫」と伝えたいところだけれど、こちらから連絡を取る方法はないんだよね……


「スペラさん、これってどういう状況か……わかんないよね」

「そもそも私を連れてきた人がわからないのに、私にわかるわけないですよね」

「……だよね」

 念のためにスペラさんにも効いたけど、何も解決しそうにない。知ってたけど。

 やっぱりここは、魔術の専門家であるマテラやナチュラの意見を聞かないことにはどうしようもないのだろう。

 とはいえ、二人の妖精をここに呼び出すわけにも行かないし、いくら彼女たちでもこれだけ離れた場所から現場の様子を調査することなど出来ないのだろう。

 その証拠に、さっきから二人の声は自分のことを心配することばかりで、変わり果てたこの地形については一言も言ってこない。

「よし、街に戻ろうか」

 スペラさんに聞こえるようにそう呟くと、彼女も「わかりました」と賛成してくれた。

 街の方角は……向こうの方角から想いを感じるから、何もない砂漠でも道を間違う心配は必要なさそうだ。


 自分が方向転換をして、ゆっくりと空を飛び始めると、スペラさんも着いてくる。

 砂漠の迷宮があった場所から離れて街に移動し始めると、どうやらマテラとナチュラもそれに気づいたようで、『お戻りですか?』とか『案内は必要ですか?』とか、そんな声が聞こえてくる。

 近づくほどに街の人々の想いがはっきりと見えるようになってくるから、道案内は必要ないんだけど、二人に任せておけば、気づかないうちに道からそれていても、教えてくれるだろう。

 それにしても、一方的に声が聞こえるだけというのは、思ったよりも不便だな……コトが片付いたら二人には、早急に送受信が出来る通信魔術を作ってもらうことにしようかな。

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