山龍討伐一日目(6)
<<そ、そうか。 聞こえておったか。 ならば早よ、そう言わぬか・・・。>>
<<まあ、よいではないか。 ある意味において、最も望む結果ではある。>>
「ところで、自分に用事ってなんなのでしょう。
こちらとしては、最終的に道案内してもらえるのならば多少の寄り道をしてもいいという気持ちぐらいはありますよ」
<<で、あったな。 だが、語るよりも実際に見た方が早かろう。 案内をするのでついてくるがよい。>>
「用件ぐらい教えてくれてもいいのに・・・。 まあいいか。
マテラも、それでいいよね。」
「チシロさまが決めたことには従いますが・・・。 ところで、先ほどからチシロさまは一体、誰と話をしているのです?」
「え、ここにいる『龍』みたいな・・・。 そういえばこいつらは一体何なんだろう?」
「いえいえ。 お言葉ですがチシロさま。 龍なんて見当たりませんし、先ほどから一人で話しているようにしか・・・」
「あ、そう・・・。 まじか・・・」
どうやら、マテラには言葉が聞こえないだけでなく、姿も見えていないらしい。
もしかして、自分が見ている物の方がまちがっているのだろうか・・・。
会話をしているうちにお互いに近づきあって、今となっては手が届く距離まで近づいていたので、試しにステータスカードを使って鑑定してみると、微妙にタイムラグはあってから<<竜王種>>とだけ表示された。
こっちの世界に来てからいろいろなものを鑑定してきたけど、今までは「即座に結果が表示される」か、「結果が一切表示されない」の2パターンだけで、鑑定の数秒後に結果が表示されたのは初めてだ。
「確かに、鑑定結果は表示されているみたいですね・・・。 あ、チシロさま、見てください。
『解放』のボタンが表示されています。 どうやら『想力』を『解放』できるみたいですよ?」
マテラに言われて鑑定結果を見直してみると、確かに『解放』のボタンが増えていた。
「あ、ほんとだ。 でも、さすがに勝手にやるわけにもいかないし・・・。
あの、竜王さん? でいいのか? まあいいや。 スキルを使って『想力解放』してみたいんですけど、試してみてもいいですか?」
<<ふむ? 人種程度の力で我らの存在がどうなるとも思えぬのだが・・・。 まあ、よかろう。 好きにするが良い。>>
「よーし。 じゃあ、ポチッとな!」
<<「竜王種」の「想い」が「解放」されました。>>
竜王種 → 龍神