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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第壱章:砂漠世界

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砂漠遺跡(2)

 砂まみれの遺跡を歩いていると、いろいろなことが分かってきた。

 まず、基本的に木製の物はほとんどなくて、あるのは石や金属で出来た物ばかりだった。

 ただ、木製の柱や壁があった痕跡(・・)は見られるから、もともとそういう文化だったというわけではなくて、時間が経つことで風化の進み具合に差が出て、結果的に今のような状態になった可能性が高いらしい。

「パパ、見て! 面白い場所見つけたよ!」

 お互いに目の届く範囲で自由にいろいろ探していると、魔王の妖精が何かを見つけたらしい。

 呼ばれた場所に向かってみると、砂が掘り起こされているのか、綺麗な固い石の床が見えていた。

 そしてその中央には、砂の詰まった穴のような場所があった。

「これは?」

「わかんない。でも、この下にも空間が広がっているみたいだよ」

「魔力で調べたのか……どうしよう、掘り返してみる?」

「そうしましょう、チシロさま! 魔術を組みますので、発動をお願いします!」


 マテラはそう言うと、魔王と協力して即席の魔方陣をささっと書き上げた。

 自分がそこに、銀片を細かく砕いて作った粉を振りかけると、魔術が発動する。

 すると、穴の中にたまっていた砂が一気に吹き出して、すぐ隣に砂の山が積み上がっていく。

 穴の中には……どうやら、階段のような物が続いているようだった。

「地下室……?」

「どうやらそのようですね。お手柄です、よくやりましたね!」

「うん! パパも褒めて!」

「ああ、すごいぞ! ……早速、入ってみようか!」

 砂抜きの作業は十秒ほどで完了したようで、役目を終えた魔方陣は徐々に輝きを失っていく。

 自分たちは、新たに発見された地下室へと続く階段を、ゆっくり降りていくことにした。


 石の壁と金属製の扉に囲まれたその空間は、砂の侵入を完全に防ぐとまではいかなかったようだ。テーブルや床の上には(ほこり)と砂が混じったようなものがうっすらと積もっているし、壁際にはうずたかく砂の山もできている。

 けど、それでも外と比べればまだ、かつて人間が暮らしていたときの痕跡がかなり残っている方だと思う。

「チシロさま、見てください! かつての資料が残っています!」

「これ……パパ見て、すごい! 一枚一枚が薄いガラスの膜でコーティングされてる!」

「どうやら、このフィルムのおかげで、かなりいい状態で保存されているようです。……早速読みますか?」

「ああ、自分も読みたいから、そのテーブルの上に広げようか」


 マテラと魔王の二人が発見した資料は、ラメ加工されたようにつるつるしていて、一枚一枚の厚さは5ミリほど。

 束になっているそれの一枚を取り上げて、軽く力を入れてみれば、ぐねっと《しなる》ような感触はあるけれど、紙と言うよりは板の方が近いかもしれない。

 タイトルやページ数が書いてあるわけではないから、順番がぐちゃぐちゃにならないように、テーブルの上に一枚一枚綺麗に並べていくことにした。


<<砂界化に関する調査報告1>>


 一番上の紙にはタイトルらしき文字が書いてある。

 どうやらこの資料は、「砂界化」という現象についてまとめられた資料らしい。……言葉のニュアンスからして、この世界が砂に覆われていることにも関係してくるのだろう。

 とりあえず、細かいところを読み飛ばしながらあらすじを読んでいくことにする。


『○月○日 植物の一部が砂状に変化しているのを確認。同様の現象が各国で発生していることを確認。原因の調査を開始する』

『○月○日 依然、砂化の現象は継続して発生中。また、初期状態では草花の一部にしか現れなかった同現象が、樹木にまで及んでいることを確認。原因の一端として、一年近く前に発生した地震が影響しているのではないかと推測。引き続き調査を継続する』

『○月○日 砂化の影響が、植物由来の製品(木材、紙など)にも及んでいることを確認。投資料は保護のため、シールド加工を行う。原因の調査は継続しているが、新たな情報は見つかっていない』

『○月○日 一定範囲内において砂化の影響を緩和する装置が開発されたらしい。この街には配備されないことになったので、住民の避難が始まっている。我々も、移動の準備を……』


 他にも、他の拠点とやりとりをしたような痕跡や、細かい調査結果などは載っていたけれど、その中から日記のような部分だけを抽出したら、こんな感じだった。

「チシロさま……やはり、私たちの推測が当たっていたようですね……」

「うん、そうだね。この資料を見た感じ、何らかの原因(・・・・・・)があって、それでこの世界が砂に覆われるようになったっていうことか……でもこれって、いつ頃に会ったことなんだろう」

「そうですね……この資料からは年代を特定することは出来ませんが、この時代のことを覚えている人がほとんどいないという状況から考えると、2〜3回は世代交代を挟んでいそうですね。平均寿命が日本と同じ程度だとすれば……100年ほどでしょうか」


 100年。

 人生という意味で考えれば長いようにも思えるし、歴史という観点では短いようにも思える微妙な期間だけど、重要なのは、どうやらかつてはこの世界にも普通に自然が存在していたらしいこと。

 そして、今この状態になったのには、何らかの原因があるらしいこと。

 どうやらこの日誌を書いた研究者は、最初の砂化が確認された日の数年前に起きた地震のようなものが原因ではないかと考えているみたいだけど……だとしたら、一番怪しい場所はその震源ということになるんだろうか。

 研究結果を見た限り、どうやら大まかな場所の特定はすでにされているらしい。

 ただ、その場所に近づくほどに砂化の現象が激しく、人体にも影響が出ることが確認されたから、結局調査は行われていないらしい。

「だったら、その場所に行ってみる? 自分は、行ってみたいと思うんだけど、二人はどう思う?」

「そうですね……危険なのは間違いないです。ですが、いく価値はあると思います」

「私も、パパに賛成。『砂化』っていう現象もそうだけど、この世界の異常に低い魔力濃度にも関係していると思うからね!」

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