赤銅革命計画(103)姫選抜戦(46)魔王討伐戦(6)
この山魔獣の心臓部を見る感じ今はだいぶ落ち着いた状態になっているようで、徐々に魔力が高まり続けてはいるけれどマテラによるとまだ数日間は猶予があるらしい。 猶予がなくなった時どうなるかは今の所わからないけれど、火山の噴火だけで済むようなことはなさそうだから、そういう意味で一刻を争う状況ではあるんだけど。
でもまさかの白黒姉妹がいる状態でも戦力が足りてないということがわかったので、捨て身で突撃するようなことはせずにもう一度洞窟を通り抜けてそのまま下山することにした。
ここで自分たちが多少の魔獣を討伐してくたばってしまっても、それで事態が解決するわけじゃないからね。
「おかえりなさいませ! ・・・いかがでしたか?」
「あれはダメなんだぞ☆ とりあえずシショーたちに連絡したいんだぞ☆」
「そうですね〜、とりあえずプラタちゃんやギルマスたちに連絡はしますが〜・・・」
さっき歩きながら聞いた話だと、現時点で『黒鉄』や『白銀』の『Aランク』以上の冒険者が大勢この地域に集結しようとしているらしいのだけど、シロヒメさんやクロヒメさんの見解では「全然足りませんね〜」ということらしい。
というか「『Sランク』や『SSランク』の中でも戦闘が得意なタイプ以外が山に入っても足手まといになるだけだぞ☆」ということらしい。
つまり有り体に言ってしまえば「戦力が足りない!」の一言に尽きるんだとか。 まあ足りないからといっていつまでも手をこまねいているわけにもいかないんだろうけど、ここに来てもやはり『赤銅』の不在が大きな影響を与えているってことになる。
自分も加担した立場だから大きな声では言えないんだけど、いつになったら終わるの!? 早く戻ってきてー、キューちゃーん! クリンさーん!
「チシロさま、『赤銅』は5大ギルドの中でも技術分野と冒険分野の両極端を備えていますからね。 やはりこれの不在の影響は大きいですし、ベルンさんやウィスさん、マシロさま、それにライアも同じ戦いに巻き込まれていますからね・・・」
「そうなんだよね。 ほんと、いつになったら戻ってきてくれるんだろう・・・」
「それは、私にも向こうの状況は全くわかりませんから・・・」
「「はぁ・・・」」
ため息をついてもどうしようもないとわかっていても、ため息が出てしまう。 それぐらいに難しい状況なわけだけど、黙っているわけにもいかないかな。
「チシロ、シショーたちと話してきたんだぞ☆」
「一応、もう少し様子見をすることになりました〜。 ただし猶予がなくなったら戦力不足でも突入することになります〜」
「それは・・・、相当な覚悟が必要になりそうですね」
「その時はシショーたちも出陣するって言ってたんだぞ☆」
「それでも力不足な気はしますけどね〜」
「ですよね・・・」
というか、そういう状況なのであればなおのこと司令塔であるアウラたちが出陣するのはまずい気がする。
とりあえず今できることは、魔獣が外に漏れでないように見張り続けることと、外に出てきた魔獣を確実に討伐することだけかな。少しでも山の魔力を浄化するために、あちこちでお焚き上げ(魔力を熱のエネルギーに変換)とかお祓い(負の魔力を正の魔力に変換させた上で相殺)が行われているけれど、まあ素人目に見ても焼け石に水って感じなんだよね。
「チシロさま、このペースだとリミット三日がおそらくリミットになりそうです。 それ以上たつと・・・噴火の確率が一気に高まります!」
「噴火って、・・・まさかあの魔力が吹き出るってこと?」
「チシロさま、魔力もそうですが、それにつられて魔獣たちも解き放たれることになります。 おそらく世界中が大混乱に陥るかと・・・」
魔獣たちは、今は山の魔力に引き寄せられて一箇所に集まっているけれど、もし爆発が起きて世界中に魔力が飛び散ってしまうとそれにつられて魔獣も世界中に飛び去ってしまう可能性が高いらしい。
そうなってしまうと、単体でシロヒメさんやクロヒメさんレベルの脅威を持つ魔獣が世界中で暴れまわることに・・・。
「それは・・・まずいんだぞ☆」
「ですね〜。 その前に手を打つ必要がありますが〜・・・」
このままじゃまずいということはわかっていても打てる手立てが見つからない。 こうしている間にも時間は刻々とすぎていく。
ちなみに、一部の金持ちなどはすでにこの状況をどこかから聞きつけて地下のシェルターなどに避難を始めているらしい。たとえそれで生き残ったとしても魔獣が地上を支配してしまったらなんの意味もない気はするけど・・・。
「そうだ、シロヒメさん、クロヒメさん! 二人の武器を貸してください。自分が想力の解放で少しでも強化しておきます!」
「そうだぞ☆ シロ姉、チシロの武器強化はすごいんだぞ☆」
「そういえばゴローさんもそんなことを言ってましたね〜。 チシロさん〜、よろしくお願いします〜」
最近は精霊力が便利すぎて想力をあまり使ってこなかったけど、今できる最善の準備はこっちの力を使い倒すことなんじゃなかろうか。そう思ってシロヒメさんの純白の拳銃とクロヒメさんの漆黒の刀を受け取ると、やはりというか今まで大切に扱われてきた証拠というか、自分が何か想いを込める必要もなく『解放』のボタンが表示されていた。
自分はただそのボタンを押してあげるだけ。 それだけで今まで封印されていた武器本来の強さが解き放たれる。
「さすがチシロさんです〜、話に聞いてた以上ですね〜」
「助かるんだぞ☆ これであいつらを2〜3体なら同時に相手できそうなんだぞ☆」
確かにこれでシロヒメさんもクロヒメさんも戦力的に強化されたことにはなるけど、それでどうにかなるレベルではもはやない。やはり今はもっと何か根本的な解決が必要なんだと思う・・・。
やはり『赤銅』の帰還を待つのが一番なのかもしれないけど、最悪の場合は自分たちが犠牲になってでも魔力の噴火だけは阻止しないと・・・。