山龍討伐一日目(3)
森に入って一番に感じたのは、薄暗さだった。
背の高い木が生い茂っているせいか、地上まではほとんど光が届かず、昼間のはずなのに夜のように暗い。
獣や魔獣がいないどころか、鳥の鳴き声も、風の音すら聞こえない。
不気味な静けさが漂っている。
森の奥にばかり気を取られていたからなのだろうか。
それとも、どこかに油断があったのだろうか。
気づいたら、本当にあっという間に、帰り道を見失っていた。
森に入って5分も経っていないと思うのだが・・・。
「この感じ・・・? まさか?」
しばらく途方に暮れていると、マテラが何かを試すように魔力で炎の塊を作り前方に飛ばす。
すると、魔力の炎は不自然に曲がった軌道をとって数メートル進むと消滅した。
「チシロさま、やはり、この森は『普通』ではないようです」
「普通じゃないって!? マテラ、それはどういう?」
「はい。 魔力の流れに違和感を感じます。 これは自然な流れではありません。
明らかに人為的に操作された形跡があります。
それもまるで、侵入者を逃すまいとする結界のように」
「結界!? なんでそんなものが? いや、そんなことより、アウラたちに連絡を・・・。
って、あれ!? ステータスカードの通話ボタンを押しても反応がない!?」
「この結界は周囲との連絡も阻害しているようですね。 このぶんでは、助けが来るのもあまり期待はできません。
・・・・・。 ええ。
そして、どうやらそれだけではすまなさそうです。 強い魔力を持つものがどんどん近づいてきます」
「ああ、こっちもなんとなくだけど感じる。 これ、包囲されつつあるよね」
不思議な感覚だ。
自分でもうまく説明できないのだけれど、『嫌な感覚』があたりから漂ってきているのがわかる。
最も近い感覚は、嗅覚だろうか・・・。
漂ってくる方向とにおいの強さ、その種類から、対象の数や考えていることがなんとなく感じられる。
おそらくは『想力値』が高いことで『他人の想い』をなんとなく感じられるようになっているのだろう。
マテラには、『魔力の流れ』を感知できるので、二人の情報を合わせることでかなり正確に自分たちを包囲しようとしている人(?)たちの動きを読める。
「チシロさま、ここは三十六計です。 逃げましょう」
「そうだね。 完全に包囲される前に離脱してしまおう」
こちらが状況に気付いているとできるだけ悟らせないように・・・って、
そんな悠長なことを言っていられないようだ。
だんだんと包囲が狭まってきているのを感じる。
「逃げるぞ! マテラ、捕まって!」
「はい! 私は支援魔法でサポートします!」




