赤銅革命計画(31)迷宮探索(4)
「『赤姫計画』・・・ですか? 初めて聞きました」
「ふぅん、やっぱり『赤銅』の外ではあんまり噂になってないんだ・・・。
えっと、今のところ『赤銅』には『姫』がいないんだけど、そもそもチシロちゃんは『姫制度』ってわかる?」
「姫制度?」
「知らないかな。 えっと、『黒鉄』のクロヒメさんや『白銀』のシロヒメさんの名前を聞いたことぐらいはあるよね」
「え、はい。 そりゃまあ。 あったこともありますし・・・」
「え〜、いいな〜。 ・・・えっと。 クロヒメさんとシロヒメさんはそれぞれ『黒鉄』、『白銀』の『姫』って呼ばれる役職? みたいなもので、『姫』っていうのは『五大ギルド』だけに置くことができる特殊な役職なんだけど・・・あれ、チシロちゃんは『黄金』にいるんだよね。 なんで知らないの?」
なんで知らないの? って聞かれても、そんなこと説明されなかったからなんだけど・・・。
「まあいいや。 それでね、チシロちゃん。 もう想像ついてるかもしれないけど、最近『赤銅』でも『誰か一人に赤銅の姫になってもらおう』っていう活動が活発になってきて、その第一候補が見事に私になっちゃったの。
アカヒメになれる条件に『Sランク または SSランク であること』ってある時点で、私以外になれる人がほとんどいないからしょうがないといえばしょうがないし、わたしをアカヒメにしたいと思っている人たちの気持ちもわからないでもないんだけどね」
「? クリンさんがアカヒメになると得する人がいるってことですか?」
「得するっていうか・・・これって話してもいいことなのかな。 ・・・まあいっか、調べればわかることではあるし。
えっと、ちょっと長い話になるかもしれないけど・・・とりあえず歩きながら話すことにしようか」
クリンさんはそう前置きすると、ロフィとアディさんとの合流地点に向かって歩きながら話し始めた。
「まずそもそも、あまり知られてないんだけど『赤銅』には『赤銅闊歩』っていうギルドマスターがいます。
けど赤銅闊歩は根っからの研究者で、自分の研究以外については興味もないし全く口出しをしない人なの。 だから実質的に『赤銅』を運営しているのは『彼岸花』『赤龍』『アルデバラン』っていう、いわゆる『三王家』って呼ばれる一族になるんです」
「へぇ、そうなんだ。 変わったギルドもあるんですね・・・」
「そうなの! 赤銅って本っ当に変なギルドなのよ!! それもこれも、まともに働かないギルマスが全部悪い!」
ちなみに『〇〇ヒメ』の役職に就いた人には『サブマスター以上ギルドマスター未満の権限』が与えられることになるらしい。
つまりギルドマスターが仕事をしていない『赤銅』の『姫』になることは、実質的に『赤銅』の頂点に立つことを意味するらしい。
なるほど、確かにそれならクリンさんを『アカヒメ』にしようという活動が起こるだけの理由はある気もする。
だけど・・・、
「なるほど、『姫』の力が強大なことはわかったんだけど、クリンさんは『姫』になって何をしたいの?」
「えっと・・・。
テンキちゃんに聞いたんだけど、チシロちゃんは転生者・・・なんだよね。 私も転生者だよ。
だけど、『三王家』っていうのは代々非転生者の一族なの。
確かに、『三王家』はものすごくバランスのいい組織運営をやっているし、表面上は転生者に対しても平等に対応してくれている。 だからこそ私もテンキちゃんも、転生者でありながら『赤銅』で活動ができてるわ。
だけど同時に、彼らは転生者のことを見下していて、多分『都合のいい素材回収装置』としか思ってないんじゃないかな。 その証拠に、転生者には『緋色』への立ち入りが禁止されているし、『赤銅』の幹部に転生者が選ばれたことは一度もないの!」
「ああ、だから『革命』なんだ」
「そう、チシロちゃんのいう通り!
これは『私が『姫』になる計画』であると同時に『転生者による『赤銅』への革命計画』でもあるの。 だから『赤姫計画』の正式名称は『赤銅革命計画』っていうことになるんだよ。
だから、チシロちゃんの『アカヒメになって何をしたいか』っていう質問の答えは『赤銅を、転生者にも、非転生者にも平等なギルドに作り変えたい』っていうのが答えになるわ!」
クリンさんは『アカヒメ』になった後、今の『三王家』に、転生者の有力グループを一つ加えて『四天王』にするつもりであるらしい。
多数決では三対一で勝てないままだけど、『転生者側の意見』を無視することはできなくなる。
まずはそこを目指して、そこから先のことは状況に応じて・・・といった感じの計画なのだとか。
「でもね、チシロちゃん。 最近は非転生者たちの抵抗が激しいの。 『赤銅』の中には協力者がいっぱいいるんだけど、一人か二人『赤銅』以外の、『Sランク』ぐらいの協力者がいると、計画が楽に進むんだけどなぁ〜(チラッ、チラッ)」
「・・・え?」
「誰か、手伝ってくれる人、いないかなぁ〜(じーっ)」
あ、これ、逃げられない流れだ。
とはいえ自分も転生者である以上、他人事ではないし・・・、
(チシロさま、ある程度であれば協力しても良いのでは?)
マテラもこう言っているし、協力することにしようかな・・・。
「わかりました。 自分にできる範囲で手伝うことも考えます」
「やったー! ありがとう、チシロちゃん!!」




