転生生活1日目(4)
テンキさんに説明された『ギルド』があるという高い塔は、街に入ってからもよく見えたので、道に迷うことはなかった。
建物の中に入ると、剣や槍を売っているアイテムショップのような店や怪しげな瓶に入った薬を売っている薬屋があり、クエストボードらしき物もあった。
まわりの人たちを見ると、金髪率が多いが、黒髪や赤毛、だけでなく、中には髪から火花が散っている人もいる。
爪や牙が鋭い女性、個性的なツノが生えたおっさん。
様々な人が集まる様子を見ると、「異世界に転生した」ということを実感させられる。
「あ、あの、チシロさん、で、あってますか・・・?」
あたりをぼーっと見渡していると、横合いから話しかけられので振り向いてみる。
するとそこには、想像の斜め上の『異世界的存在』がそこにいた。
顔は、まあ、かわいいと思う。 というか、かわいい。
というか、前世ではなかなか見ないようなレベルのかわいさだと思う。
背は小柄で声もきれいで、総合的に見てひとことで言うと「かわいい」。
ただ、その顔の上にうさ耳が生えていた。
横並びに左右6本ずつ。
計12本。
その様子は何というか、もはや「うさ耳少女」という枠組みからは大きく外れていて、 シルエット的にはむしろ「タンポポ少女」の方が近いように感じる。
っと、いけないいけない。 思わず(耳に)見とれて返事が遅れてしまった。
「あ、はい。 自分がチシロです。
えっとあなたは・・・、『転生担当』の方ですか?」
慌てて答えると、うさ耳少女は安心したような笑顔になり、
「はい! 私、このたびチシロさんの転生生活をサポートすることになった、『ラビ』と・・・申します」
合計12本の耳がわしゃわしゃうごいて喜びの感情を表現していた。
口調はどこか弱々しいし、今にも消え入りそうなか弱い声音なんだけど、耳の動きは顔の表情以上に感情を表しているのかもしれない。
「チシロさん・・・まずは転生の手続きなどを行う必要が・・・ありますので・・・。
・・・では、応接室に案内します。 ・・・ついてきてください」
ラビさんはそう言うと、耳をぴょこぴょこ動かしながら、さっさと歩いて扉の向こうの廊下を進んでいった。
慌ててついて行く途中にもラビさんはいろいろと話してくれたんだけど・・・。
やばい。 話の内容よりもぴょこぴょこ動くうさ耳(複数形)が気になって仕方が無い。