赤銅革命計画(17)ウィスマシロ(1)
「本日は、私たち『赤の穂先C』の面接を受けてくれてありがとう。 私が今日の試験管です。
ということでまずは二人とも、特技とか職業とかについて簡単に紹介してもらってもいいですか?」
私とウィスさんは『ギルド』を通じて探した求人情報の中から『赤の穂先C』という『赤槍』傘下の戦闘系ギルドに参加申請を提出し、今は早速その採用担当者から面接を受けているところになります。
今現在『赤槍』系列のギルドは表立ってはギルドメンバーを募集していないのですが、実は裏ではむしろ積極的にメンバーを増やしているそうです。
『ギルド』の職員に理由を聞いても「よくわかりません」と言っていたのですが、もしかしたらこれも『革命』が関わっているのかもしれませんね・・・。
「はい、私は・・・」
「ちょっと待ってマシロちゃん。 えっと、彼女はマシロです。 冒険者ランクはAランク、試験は『杖術』で合格しましたが、杖が本職というわけではありません。
基本的に武器の種類に拘らない万能型です!」
「ああ、そういうことですか。 彼女はウィスです。 私と同じで冒険者ランクはA。 試験も私と同じ『杖術』でした。 確か本職は魔術師・・・でしたよね」
ウィスさんが私の自己紹介を遮ってまで私の紹介を始めたのは、ステータスカードの『互いに名乗りあっただけで連絡先が登録されてしまう』という厄介な性質を回避するためになります。
連絡先が交換されたところで特に困ることもないのですが、この世界では『先に名乗った方は、相手の連絡先を聞きたがっている』、つまり『先に名乗った方が立場は下になる』という暗黙の了解みたいなものがあるみたいです。
例えば私が「御社に入れてください」というような立場で面接に挑むのであれば真っ先に名乗って相手の返信待ちをするような態度を取るのが正解なのですが、今や私たちは『Aランク冒険者』です。
むしろ「こっちが選ぶ立場だ」と主張するぐらいでちょうどいいのです。
まあ、面接官からすれば特に気にすることもなかったようで普通に次の質問に移っていますが・・・。
「ありがとうございます。 では次に、あなたたちが『赤の穂先C』を選んだ理由を教えてください」
「はい。 『赤の穂先C』は、下位ギルドの中でクエストの達成数は今ひとつなのですが達成率は飛び抜けて高く、慎重にクエストをこなしている証拠だと思いました。
それに加えて、ギルドランクも少しずつですが確実に右肩上がりになっており、これから発展するギルドだと思ったので、ぜひ私の力を活かしたいと思ったからです!」
「私もマシロちゃんと同じような理由です。 それに加えて私は『赤』系列のギルドという点にも惹かれました。 『赤の穂先C』で実績を積んで、ゆくゆくは『赤銅』や『赤槍』とも肩を並べて仕事ができたら・・・と考えています」
ここら辺の回答は事前の打ち合わせ通りなので、特に困ることもありません。
実際は『ギルド』の職員さんに『赤銅』系列のギルドとして紹介されたから選んだだけなので、全部でっち上げなんですけどね。
あまりにスムーズに答えが出てきた私たちを見て、向こうも「用意していた答えだな」とは思うでしょうが、それは逆に言えば「しっかり答えを用意している」という高評価にもつながるはずなので、わざわざ考えている演技などを挟む必要はありません。
というか、『Aランク冒険者』の市場価値はかなり高いので、面接で失敗したぐらいで不採用となることはないと思うのですが・・・。
むしろ重要なのは給料や労働条件などの待遇で、こちらとしてはスパイとして潜り込みたいだけなので正直「なんでもいい」のですが、かと言って相手が有利な条件を呑んでしまうと相手をつけあがらせることになりかねませんし、下手したら私たちが怪しまれる結果にもなりかねません。
だからこちらは相手が提示した条件にいくつか上乗せした要求を返さなくてはいけないのですが、かと言ってあまりに高すぎる要求をして契約が不成立になってしまうとそれはそれで面倒ですし・・・。
むしろこれからが本番です。 気合いを入れていきましょう!